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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第三章 ヴィルドと森の生活編
199/529

199 ワイバーン階到着!

新居のご披露も終わったので、ここから第三章ということにしました。


引っ越し祝いの楽しい宴も終わり、僕とシンハには日常が戻ってきた。

まあ、アラクネ糸と布の商売のこととかあるので、少しまだ辺境伯側と打ち合わせとかも必要だけれど。

宴のあった翌々日には、僕はシンハと一緒にまたダンジョンに来ていた。

「なんだか間にいろいろあったんで、結局まだダンジョンの方はワイバーン階まで行けてないからな。」

『そうだぞ。やっと気づいたか。俺は待ちくたびれたぞ。』

「でもワイバーンなら森産のほうがいい味でしょ。」

『いや、あっさりめのワイバーンもオツなものだ。まあ、お前の調理が上手くできればだが。ああ、自信がないか。』

「おっと。アルジを挑発する眷属犬とは。聞き捨てならないな。」

『俺は犬ではない。ふん。聞き捨てならぬなら、がんばってダンジョン産のワイバーンをまず仕留め、それからお前の料理の腕前を見せてくれればいいだろう。』

「えっらそうに。判ったよ。すっげー美味いって言わせてみせるぞ!」

『おう。期待しておこう。』

「ふんだ。」

などと、いつものように仲良く喧嘩しながら、我々はダンジョンへとやってきた。

人目があるので、今日はテレポートではなく、一応普通に乗合馬車で来ている。


以前はハーピーのいる11階層まで踏破していた。

今回は12階層から。

ワイバーンは25階層。

『面倒だ。サキ。乗れ。』

「ん?どうするのさ。」

『ボスだけ倒せばよいのであろう?突っ切るぞ。』

「ったく。せっかちだな。判った。早く食べたいんだね。ワイバーン。」

『そういうことだ!』

それからのシンハは僕を乗せると、本気を出した。

雑魚敵は威嚇し、なるべく寄りつかせない。それでもたまたま居合わせてしまった敵で歯向かう者は容赦なく蹴散らすか魔法をぶっ放す。

僕もまあ同様で。

特に僕は、索敵魔法で各階ボスまでの最短コースをセレクト。

普通なら、歩くか走るかなのに、飛べる所は飛んでさらに時短する。

そして基本的にボスだけと戦う。

というトンデモ戦法で、その日の夕方には、ワイバーン階まで来てしまった。

なんだかご馳走を丸呑みした感じ。後日ゆっくり各階層を踏破したい。役に立ちそうな薬草も見かけたのに、今回はシンハの希望通り、マッハで突っ切ったからね。

「ふう。我ながら急いだと思うよ。うん。今日はこのあたりにテントかな。」

『なにをねぼけたことを。此処からが本番ではないか。』

「はぁー。判った判った。とにかく小休止。ほら。ワイバーンの干し肉だよ。」

『おお。気が利くではないか。』

「それと、ハチミツ漬けのリンゴが乗ったタルトね。あーうまうま。」

『むぐ。美味いな。サキは取り柄は少ないが、料理だけは褒めてやる。』

朝には料理の腕前を疑ったくせに。

「酷いなあ。器用貧乏と言われるならわかるけど、取り柄がないなんて。」

『ないとは言っておらぬ。少ないと言ったんだ。…水をもう少しくれ。』

「はいはい。」


入り口で小休止したあと、僕たちはばんばんワイバーンを狩った。

はっきり言って、森のワイバーンよりずっと弱かった。

大抵、僕が雷でショックを与えて落ちてきたところをシンハが喉をかみ切る。

連携プレーで仕留めていった。

でも20頭狩ったところで終わりにしておいた。

まだたくさんいたけれど、そんなにお肉、いらないし。

あんまりギルドに売ると値くずれ起こすし。

「これでこの階層まではいつでもこれるから、好きな時にワイバーン狩りができるよ。良かったね。」

『ふむ。当分はワイバーン尽くしができるか。ならいいな。』

「ほんっとうにワイバーン肉、好きだねえ。」

『ああ。普通は地上に降りてくるのを狙わないといけないからな。そこが難点だったのだ。だがお前と一緒なら雷で落として簡単に狩れる。これでワイバーン肉には困らないだろう。』

「ほう。僕の取り柄を褒めてくれるんだね。ありがとう。」

『ふん。少しぐらい褒めておかないと、お前はすぐにいじけるからな。』

「まったく。相変わらず口が悪いんだから。」

一応ボスであるワイバーンキングも狩ったが、森のワイバーンのボスよりはるかに弱かった。図体がでかいだけ。大味ではないようなので、よかったと思う。

キングにはドロップ品があって、「使用魔力軽減の指輪」。

「わーい。使えそうだよ、コレ。あ、シンハ、使ってみる?」

『俺はいい。指に嵌めると動きづらいしな。』

「わかった。じゃあ、遠慮無く使わせてもらおう。」

左の中指に嵌めて、ちょっと魔法でウォーターボールを飛ばしてみた。

使用魔力は約半分くらいのようだ。

「へえ。結構いいじゃん!見た目もカッコイイし。」

僕としては、ワイバーン肉も魅力的だが、こういう不思議な魔導具はもっと魅力的だ。


さて、僕もシンハも、十分満足したので、今日は帰ろうと、ダンジョンの入り口に戻った。

ダンジョンを出てみると、すでに日がとっぷりと暮れていた。

でも3時間半で20頭なら効率はむちゃくちゃいい。森ならさすがにこうはいかない。

そういえばいつぞやシンハが望んだとおり20頭になったな。

ダンジョンまわりには数件の簡易な家があり、ペンションとか道具屋とかがあるが、村というほどでもなく、テント村みたいな規模だ。

森の中なので、結界が張ってある。

僕たちは夜道を徒歩で街へ帰るフリをして、藪に入るとテレポートし、街の門が見える場所まで飛んだ。

そこから走って、なんとか午後9時の閉門には間に合った。

「おう。サキか。遅いお帰りだな。」

「ただいまです。隊長。テッドさんも。」

「ぎりぎりじゃねーか。シルルちゃんが心配するぞ。」

「そうそう。ユリアちゃんもな。」

「まったく。サキよう。お前なんで幼女にばっかもてんの?」

とテッドさん。

「あ、ユリアは僕と同い年ですよ。見た目『若い』けど。」

「あ、そうだっけ。すまん。内緒だぜ。」

「はいはい。」

テッドさんの軽口を受け流して、僕たちは二人に別れを告げ、家へと急いだ。

もうこの時間なので、ユリアはいないだろうから、ダンジョンから戻ったという報告は明朝でいいだろう。


「ただいまー。」

「おかえりなしゃいませ!」

シルルがぱたぱたと奥から走り出てきた。

「遅くなってごめんよー。」

「いえいえ。お仕事ご苦労しゃまです!ゴシュジンさま。お風呂にしますか?お食事にしますか?」

「ふふ。すっかりシルルはメイド長みたいだね。」

「えへへ。そうですかあ?」

「うん。まずはシャワーを浴びてくるよ。ダンジョンでは『いろいろあった』からね。」

そうなのだ。ダンジョンでは返り血を浴びたり、返り体液を浴びたり、いろいろあったからね。もっとも、浴びたと言っても、基本的に結界があるのではじいているし、戦闘後はこまめにクリーンをかけているから、僕もシンハも綺麗だけど。せいぜい帰り道の足元が夜露で濡れたくらいか。

とにかく雰囲気というか、気分というか。まずは身ぎれいにしたいのだ。


「今夜のごはんはなんだい?」

「はい!ゴシュジンさまに教えていただいたトン汁と焼き魚です!」

「おお。美味そう。すぐにお風呂入ってくるよ。」

「あ、1階の大浴場、沸かしてあります!」

「ありがとう。さすがー。シンハ、いこ。」

「うむ。」

僕たちは1階の大浴場へと急ぎ足で向かった。

こんな時も、亜空間収納はまじ便利だ。すぐにお風呂セットが取り出せる。

あひるちゃんは持っていないが、石鹸にタオル、替えの下着など、どこで温泉に出くわしてもいい体制をとっている。えへん。


僕とシンハは大浴場へ直行し、そこで僕は頭のてっぺんから足の先まで、シンハも全身シャンプーして洗い上げた。

『ワイバーン肉は今夜は食わないのか?』

「君には一切れは出すよ。森産のやつを。でもシンハ。せっかくシルルがおいしいごはんを作ってくれたんだから、肉が良かったなんて絶対言うんじゃないぞ。」

『ぐ。判った。明日はたっぷり食わせてくれよ。』

「ああ。判ってる。明日は朝からステーキにしよう。」

『おう!』

その夜は、シルルの作ったごはん(シンハはワイバーン付き)をみんなで食べたあと、ハチミツ漬けナッツ乗せバニラアイスを食べた。

これは氷魔法で冷やして作ったもの。


翌朝、約束どおり、朝っぱらからダンジョンのワイバーン肉のステーキを焼いてあげた。

『ふむ。やはり森産のやつより淡白だな。まあ、その分味付けを濃くすると、味わいが増すが。』

「ふふ。グルメだねえ。シンハは。でも。もぐ。そうだね。確かに。こってりソースをかけるのもいいかな。」

とかいいながら、僕たちは獲った獲物をおいしく食べた。


それからのんびり歩いてギルドに行き、ワイバーンの皮とか他の階層で獲ったボスの収穫物を適当に出して、ギルドに売った。でもワイバーンの皮は5頭分だけにした。

これ以上出すと、値崩れが起きそうだと言われたので。

どれもあまり傷をつけずに倒したので、相場より高く買い取ってもらえた。

普通は、パーティーでワイバーンを仕留めて、分解して複数のマジックボックスに入れて持ち帰るというのが定番らしい。それもCランクの上位パーティーでどうにか可能とのこと。

「まったく。サキたちはとんでもないわねえ。サキの『邸宅』にもいろいろ驚かされたけど、今度はもうワイバーン階まで行ったなんて、まわりの人にはとても言えないわ。もう何年もダンジョンに通って、そこまで到達できていない冒険者がたくさんいるのよ。」

とユリアは小声で言った。

もちろん、獲物は別室で査定してもらったから、周囲は知らないはずだ。

確かに、ユリアの言う通りだ。

「そうだね。逆恨みされても嫌だから、どうかなるべく内密に。」

「判ったわ。」



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