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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
197/529

197 デザートはプリン・ア・ラ・モード

ひととおり料理を出したので、それぞれの料理の感想を聞いたり、あいた皿を回収したりしていたが、そろそろデザートに進まねば。

「さあ、次はおまちかね、デザートの時間ですよー。今日はプリン・ア・ラ・モードでーす!一人一皿。おかわりはありませんから、よおく味わって食べてね。どうぞー!!」

つぎつぎと一人ずつにデザートを渡す。

「きゃー!!なにこれなにこれ!?」

「もう!サキ君凄すぎ!」

「しかも何!?このうつわ!ガラスに金箔まで入ってる!?超高級品じゃない!」

「器も自作だからタダでーす。」

「おお!」

とどよめきまで起きた。

「サキ、やっぱり食器屋もやれ。」

「うんうん。」

「このわしゃわしゃしたものも食べられるのか?…お、甘い!美味いぜ!」

「あ、それ砂糖でつくった飴です。食べられますよー。」

「砂糖じゃと!?」

「そんな高級品を!」

「カラメルシロップ…プリンのトップの茶色いソースね。それも砂糖。」

「うわー。凄すぎ!」

「これプリンというの?ふるふる、ツヤツヤ…濃厚!最高!」

「大魔鶏の卵、使ってますんで。濃厚でーす。」

「大魔鶏!?」

「はっ!もしやこれは…魔蜂のハチミツではっ!」

と言ったのはカークさんの奥様、ハイネさん。

「よく判りましたね。そうです。フルーツに添えたのは魔蜂のハチミツです。」

「おお!」

「マボロシの!」

またしてもどよめきが。

「すごいわ!よく手に入ったわね。ヴィルドにいてもなかなか口には入らないのに。」

「たまたま手に入ったもんで。」

「サキ君は盗賊討伐の時も、冒険者たちに魔蜂の蜂蜜を掛けたデザートを振る舞ってくれてましたね。」

とカークさんがさりげなくばらす。

「お前、魔蜂とも知り合いか?」

うぐ。テッドさん、酔ってる割りに、カンがいい。

「えー、そ、そんなことあるわけないじゃないですかー。」

と軽く否定しておく。なはは。


「な、なんだこれはっ。冷たい!だが美味い!」

アイスクリームは婦女子だけでなく、酒飲みにまでうけた。

「酒にもあうぞ。この冷たいの。」

「ワインにも合うぜ。」

「あ、アイスはちょっとお酒をかけても美味しいよ。」

「おうこっちの地酒にも合うじゃねえか。つまみのナッツと一緒だと、格別だ。」

「とけかけるとまた美味いな。」

「んー。んんー。」

言葉を失っている人もいる。

「もうこうなるとデザートテロですな。」

「甘味サイコー。」

「たまらないわ!サキの料理もデザートも、美味しすぎ!」

「もうよそのもの、食べられないかも!」

皆が味も器も絶賛。やってよかった。いろいろシコミが大変だったけど。

やれやれ。一応料理とデザートは一通り出した。

あとはちょっとしたつまみや串焼き、ピクルス、冷たい果物の追加でいいだろう。

ああ、たこ焼きも作っておいたっけ。あれもあとで出そう。


まだまだ宴会はあちこちで盛り上がっている。

キッチン近くのテーブルでは、珍しい魔獣の話で盛り上がっていた。なんと話の中心はケリスさん。

「…で、西の大陸にはアナコンダの魔獣が居てね。これが飛ぶんだよ。空を。信じられる?」

なんと女性や子供たちにおお受けなのだ。というのも、ケリスさんが、空中にその魔獣の姿を映し出してみせているからだ。

ほう。こういう魔法もこの人は使えるんだな。

シルルやユリア、ミーシャ君、それにアマーリエさんとかも、感心して見ている。

「幻影魔法」の一種らしいが。

「へー。こんなのが飛ぶの?」

「なんか、可愛い。」

白い羽の生えた爬虫類が、ぱたぱたと飛んでいく映像は、確かになんとなくのどかだった。


「可愛いといえば、妖精も実在するんだよ。」

ぎく。

というか、妖精、まだ存在を疑われているのか?

シルルが僕をちらと見た。僕もにこっと笑って答えた。

シルルも一応妖精だもんね。

人間に見えない妖精が多いけれど、シルルは上位の妖精らしく、普通に人間の女の子に見える。

僕の眷属となってはっきりと見えるようになったが、それまでは半透明なので幽霊だと思われていたのだ。

僕は半透明だろうと透明だろうと、妖精たちが見えるので違和感はないのだが、普通の人間には妖精はまったく見えないのだから、その存在を疑われても仕方がない。

「おにいちゃんは見えるの?」

とシルルがすっとぼけてケリスに尋ねた。

「ん?僕かい?まあ、術を使えば、短時間だけは見えるよ。」

「ふうん。」

とさも人間の女の子的な反応。

「妖精はとってもちっちゃいからね。目をこらさないと見えないんだ。」

うん。まあ、普通はね。でもシルルは人間の子供の大きさだし、湖の精のメーリアは、普通の大人の女性の姿だ。グリューネたちはてのひらサイズ。ケリスさんが言っているのは、きっと妖精の子供たち、つぶつぶの精霊たちのことだろう。

ついでに言うと、火の精でもサラマンダは上位なので、小さくとも他の火の精たちを従えているし、形もヤモリのような形だ。おしゃべりはしないが、意思疎通はできている。


「余興やれ!テッド。」

「はい!一番!テッド・ランカスター。歌を歌いまっす!」

「いいぞー。」

ぴいぴい。

すっかりただの宴会だな。

「サキー。こっちきて座りなさいよう。」

む?ユリア、ちょっと目を離した隙に。お酒をのんだのか?

「これ、サキ殿、わらわの傍に来てシャクをせい。」

あらら。コーネリアまで酔っぱらってない?

「うわー。なんですか?この二人。酔っぱらいですか?」

「うるさい。酔ってなんかヒック。いないんだからー。ヒック。ふえーん。」

「え、ユリア、泣き上戸?」

「サキ、お前は悪い男じゃ。こんな可愛い女の子を、泣かせて。」

「いやいや、僕は何もしてませんから。ユリアが勝手に。」

「うえーん!サキがいじめたー。」

「なに。」

とギルド長が飛んできて、僕をにらむ。

「違う、違いますって。ユリアが酔っぱらって…。」

「誰だ。俺んちの娘に、酒飲ませたのは。」

「はーい!私れす!ヒック。」

と潔く罪を認めたのはコーネリア。

「ちっ、ネリ嬢。困りますなあ。うちの箱入り娘に、悪い遊びを教えては。」

「おお。すまぬ。ついな。」

などとコーネリアまでノリノリだ。

この世界では、成人は15才だが、飲酒は14才から「たしなむ程度」なら許されている。そのあたりは地球よりずっとゆるい。

「うわーん。サキのばかー。」

ユリアはまだ泣いている。

「はいはい。サキは馬鹿ですよ。泣かない泣かない。よしよし。(困ったな。)アマーリエさん、助けてー。」

「ふふ。色男は少し困ったくらいがいいのよ。」

「そんなこと言ってないで。だんだん絡み酒になってますよ。ユリア。」

「ほら。ユリア。しゃんとして。お水飲んで。サキ君、お部屋貸してくれる?」

「じゃあ、2階の客室で。あ、運びますよ。ユリア、2階で少し寝ようね。」

「ふにゃあ。」

僕はアマーリエさんに介抱されながら半分寝ているユリアを連れて、2階の客間にあがった。お姫様抱っこで。だってユリア、全然自分で立てないんだもの。

まあ魔法でなんとかユリアを浮かせつつなので、かっこ悪いことにならずに済んだ。

「よっ!色男!」

ぴいぴい!

「おうおう、うちの娘になにすんじゃワレ!」

「あなた。」

「はい!すみません。」


ユリアを客室のベッドに寝かせる。

アマーリエさんがユリアにフトンをかける。

それから近くのソファに座って少しお話をする。

「ごめんなさいね。この子、こんなに酒くせが悪いとは思わなかったわ。」

「もう、絶対飲ませちゃいけないタイプですよね。コレ。」

「そうね。ふふ。ああ、なんならこの子、置いていきましょうか?そうしたら、明日には婚約ね。」

「おっとー。母親にハメられるとは思わなかったなあ。」

「ふふ。冗談よ。でも…ユリアの気持ち、判ってあげてね。」

「え。」

「え、じゃない。気づいているでしょ。いくらなんでも。」

「!…」

目をぱちくりさせて固まっていると、

「あらら。じゃあ、この子、すっかり片思いなの?まー。可哀相に。」

えー、そなの?ユリア、僕のこと、好きなの?まじですか?

僕が目をぱちぱちさせて言葉を失っていると、

「はー。サキ君。貴方、あまりにも自分を知らなすぎるわ。貴方ね、すっごくモテてるのよ。判ってる?ダンナの話しだと、受付嬢がこぞって貴方を狙ってるって話よ。それでユリアもヤキモキしているのに。ちっとも気づかないなんて。鈍感すぎよ。」

「う。すみません。」

「ふふ。まあ、それくらいでないと、やってけないかな。ただ、ハニートラップには気をつけなさいよ。既成事実を作られて、ろくでもない女と結婚しないといけないハメになりそうだから。」

「はあ。気をつけます。」

「だから。さっさとユリアと婚約しちゃいなさいな。…あ、もしかして、コーネリア様のほうが好み?そうなの?」

「え?いや、僕は今日はじめてあの方にお会いしたばかりですよ。いいも悪いも、何もまだ判りませんから。」

「あらそうなの?でも…あの感じだと、コーネリア様も、貴方にほの字みたいだけど。」

「さすがにそれは。気のせいじゃないですか?」

「気のせい?くく、気づいていないのは貴方だけよ。エルガー執事長だって、貴方なら、なんて思っているかもしれなくてよ。」

まさかね。

「ふふ。まあ、あの方はちょっとその…特殊だから。いろいろ難しいかもしれないけど。とにかく、サキ君は、自分が誰を好きなのか、自分の気持ちをはっきりさせたほうがいいわね。」

「アドバイスありがとうございます。でも。」

「ん?」

「僕は、まだ、この街に来て日も浅いです。まだまだやりたいこと、やるべきことがいっぱいで。僕自身、まだ子供ですし。今は冒険者としても歩きはじめたばかりです。毎日を過ごしていくうちに、気持ちがいっぱいになってきたら、僕も自分の想いを外に出せるとは思いますが…。少し、時間がかかると思います。…僕も、ちょっと出自は特殊なので…。ごめんなさい。」


ユリアはぐっすり眠ってしまっている。

ベッドですやすやと眠る姿は、ゴブリン事件の時の寝顔と違い、本当にやわらかで幸福そうだった。

「君は本当に真面目なのね。」

「不器用なんです。」

「それも貴方の魅力よ。でも、忘れないで。ユリアは、貴方を見てる。傍で見ていたいのよ。それだけは、判ってあげてね。」

「…はい。」

僕は、アマーリエさんを残して先に部屋を出た。

軽く防犯結界を施しておく。

今夜の客に、妙な気を起こす人はいないだろうけれど、酔っ払いもいるし、いちおう念のためだ。


廊下を歩きながら、つらつらと思う。

前世の僕は、好意をいだいた女の子がいないわけではなかったが、気持ちを伝えることなど出来なかった。言えるわけがない。僕のほうが、絶対先に死ぬとわかっていたのだから。

もちろん、今はそういう状態ではないけれど、異世界から来た自分の存在が、この世界では異分子だという思いがある。前世で培われてしまった性格も、そう変えられるものではない。

だからだろうか。特に恋愛感情については、その想いが湧き上がる前に、ついフタをしてしまう…。

相手と、どこまで深く関わっていいのか、ためらいがある…。


「(はぁー、こういうのを、巷ではヘタレって言うんだろうなあ。)」

組み細工にした綺麗な天井を仰ぎながら、僕はひとつ小さくため息をついた。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 色々気になるとこはあるけど、外野からの気持ちの押し付け的なのは私的に無理だなぁ…勝手に外堀埋められるのも嫌…サキには色んな人に出会ってその中から本当に好きになれる人を選んでほしいなぁ
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