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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
196/529

196 珍しい料理と物騒な話

皆がおのおの各部屋を物色(?)しているうちに、次の料理の準備をする。

食堂のテーブルのユリアの花から、目によいというメメ草を取り、ステーキに添えることにした。これは生で花ごと食べられるのだ。

それからコーネリアが持ってきた花のうち、食用になるジョムカ草の花だけはすでにピックアップしてある。ジョムカ草は胃薬になる花なので、サラダに散らした。

そして大きなサラダボウルをいくつもテーブルに運ぶ。

作りおきしておいたパスタ類もシルルにも手伝ってもらって次々に運んだ。まずは空腹を満たしてもらわないとね。


「料理出したよー。熱いうちに食べてー。」

階段で叫ぶ。ツアーに満足し、やっと皆が居間と食堂に戻ってきた。

この世界ではパスタはすでにある。だがまだ珍しい麺料理だ。

皆、不思議そうに口に運ぶが、一口食べればもうその美味さに虜になっていた。

「これなんだ?うめえな。」

「こんな長い麺、はじめて。」

「フォークでくるくるやって食べるといいよ。あ、なるべく音は立てないのがマナーだよ。」

「む、難しいわね。」

「くるくるたのしー。」

「サラダもおいしい。この卵は…もしや魔鶏!?」

「うめえ。」

「なんだろう?このドレッシングは。」

「おいひい。」

「お、メメ草じゃねえか?こんなに美味いもんだったか?この草は。」

よしよし。いい反応だ。


白身魚のピカタもタルタルソースを脇にたっぷりつけて出す。

あっさりめだが添えられたタルタルソースが珍しい。これもとても喜ばれた。

「次は肉だよー。おなかあけといてよ。たくさん焼くからねー。」

「大丈夫だ。いくらでも入るぜ。」

厨房で、大量のステーキを焼く。

半分はすでにできたて状態なので、それをタイミングを見計らって出し、さらにジュージューと音を立てて焼き、さっと出す。


料理が出るたびに皆から

「おお!」

と歓声があがる。

肉はオークとホルストックのサイコロステーキ、魔兎の香草スペアリブ、そしてメインはやはりワイバーン。

ワイバーンは、まずは塩焼き。塩は森の奥産の岩塩。

これを出すと、もう皆驚きながらも、もくもくと食べていた。


「こんなうめえ肉があるとは!」

「まったくだ。なんて肉だ!」

「なに!?ワイバーン!?まじか…。」

「やわらかいー。」

「肉が、舌の上でとけるよ。」

「この塩、すっごく美味しい!何処の!?」

ナイショだよー。


「次!今日のメイン!ワイバーン肉の味噌焼きです!」

「味噌?」

「味噌とは?」

「むむっ!」

「おお!」

「うっま!」

「なにこれ美味すぎる!!」

「なんだこの味噌とやらは!美味すぎる!」

「ニンニクも効いてる。」

「きゃー!サキ君天才!」

「パン、ちょうだい、パン!」

「くー!美味しくて…涙出そう。」

「生きててよかった。」

「まったくだ。なんだこれは!酒が進んでいけねえや。」

「おい、こっちのカップも空だぞ。もっと酒はねえか。」

「麦焼酎も作ったよー。ロックか水割りでね。」

「おお!?なんだこりゃ!すげえ!肉にぴったりだぜ。」

「こらこら、まずはあたしにつぐのが礼儀だろ。」

「へへえ!あねさん!」

とエッレさんも絶好調だ。

「レビ爺様も。どうぞ!」

「こりゃ美味い酒じゃのう。寿命が延びるわい。ほっほっほ。」

飲んべえどもはもうできあがっている。


コーネリアが心配だったが、事情を知っているアマーリエさんが上手くやってくれているようだ。

すでにユリアとも自己紹介を終えて、仲良く並んで食べていた。

「なんじゃこれは!ワイバーン!?しかも…新手の調味料だとっ!」

「本当に。私も驚きました!いつのまにこんなものを開発していたのか。」

「サキ君すごーい。」

「天才!」

「ありがと。ありがとー。郷土特有の調味料なんですー。」

「すばらしいのう。味噌とはすごいものじゃ。うむ。パンも食べたくなる。このパンも自家製か!?ふわっとして白くて…。ほんにサキとは何者じゃ?料理までできる男とは…。うーむ。あなどれぬ。」

なんか、僕の噂しているみたいだから、あまり寄りつかないようにしよう。

シンハはとみると、ミケーネちゃんと仲良くワイバーンの味噌焼き肉を食べている。

ほんと、仲いいよね。やけるよ。


テオはそんなミケーネを目を細めながら見つつ、ケリスさんと使役獣談義のようだ。

「グリフィンって、手なずけるの難しいでしょ。」

「うん。俺はちょうど雛から世話できたからよかったけどね。」

などと話している。


「おい、サキ。」

とギルド長がワイバーン肉を乗せた皿を手に、厨房に顔を出して声をかけてきた。

「はーい。なんですか?」

ジュウジュウ。僕は肉をひたすら焼いている。

「お前、まだワイバーン階まで行ってなかったよな。」

ぎく。よく気づいたね。

「ええ。まだですよ。」

「で、なんでこんなにワイバーン肉、持ってんだ?」

「道すがら狩ったんです。シンハが。」

「ふむ。シンハがな。」

「ええ。シンハが。シンハの大好物なんで。ですからそれ、森産です。美味いでしょ。」

ゲンさんがさっき持ってきてくれたやつはシンハ用なので、保管していて皆には出していない。今焼いているワイバーン肉はすべて森産だ。

「まあ、確かに。むちゃくちゃ美味いが。…ふむ。森産か。なるほどな。」

ギルド長、まだ酒飲み足らないんじゃないの?ぜんぜん酔ってないじゃん。


「シルル。君も食べたら?」

「だいじょぶれす。お客様が優先れす。」

「そう言わないで。ほら。ワイバーン肉だよ。ふうふう、あーん。」

「あーん。むぐもぐ。うまうまですー!溶けましたよ。口の中で溶けちゃいました!」

「ふふ。気に入った?」

「もちろんです!こんな美味いもの、私、ずっと食べてなくて…。ゴシュジンさまと会ってからです。こんな幸せを知ったのは。」

「そう?今までさびしかっただろうけど、これからはさびしくないからね。森にも一緒に行こうね。みんなにも会わせたいから。」

「でも、私は家まもりですのに、此処から動いてもいいのでしょうか。」

「僕のお願いなら、問題ないんだろ?一緒にいこう。」

「はい!一緒に行くでしゅ!楽しみでしゅ!」

やっぱり子供の笑顔はいいね。うん。


宴もたけなわ。

あっちこっちで酒盛りをし、いろいろな話題で盛り上がっている。

カークさんやギルド長は、なにやら深刻そうな話もしていた。

でも片手に味噌キュウリだからなあ。


ゴウルという国が3年ほど前に滅んだそうだ。

王都で地震が頻繁に起き、やがて大火山の噴火。結局それが引き金となってあちこちで暴動が起き、滅んだと。

「あそこは世界樹を信奉していなかったからな。世界樹からの警告を無視したそうだ。」

「世界樹のお使いで予言を携えて行ったハイエルフを、処刑しようとしたそうだ。まったく。世界樹を守る方々を。非常識もはなはだしい。」

「民衆が可哀相だぜ。上に立つ奴が阿呆だと、そういうことになる。」

「アルガス教だっけ?アルガス神以外、全否定だもんなあ。」

「ああ。100歩譲ってどんな神を信じてもいいが、世界樹の存在は否定してはいけない。それがこの世界の理だというのに。」

珍しく、理系のカークさんが世界樹信仰を披露している。

ふうん。そういうことがあったのか。

それにしても、世界樹信仰、すごいんだな。

この世界に浸透している感じだ。

僕は料理を出しながらあちこちの話題に聞き耳をたて、そして食し、食べてはまた作ってを繰り返している。

正統派茶碗蒸しも絶賛だった。

苦労して材料そろえた甲斐がある。

シメの麦ぞうすいとあっさり醤油ラーメンでもさらに驚嘆を与え…。

ダシ信奉者と味噌醤油信奉者を作ってしまった。


「サキ、お前冒険者辞めて食堂作れ。」

「ええ?」

「ああ!絶対成功間違いなし!」

「そうなったら俺、毎日通う!このらあめん?うめえ!」

「あはは。まあ冒険者引退したら考えることにしましょう。」

「いやいや、サキ君は治癒術師としてだな、うちの養子にでもなって、治癒院を引き継いでもらって…」

とサリエル先生が言い出した。酔ってるな。

「だめですよ。ギルド職員になってもらう約束です。」

と今度はカークさん。

「約束…は、してないと思う。」

とちゃんと否定しておく。

「魔剣職人だよな!サキ!」

うぐ、魔剣の話は一応秘密にしてほしいなあ。

「へえ、魔剣かあ。いいな。オレ欲しい。」

とテッドさん。

「槍も作ってもらうかな。短槍で。」

とカークさん。

「私も一振りお願いしたい。大剣で。」

とテオさんまで言い出した。

「いいですよー。ただし、高いよー。それに、ご自分で材料を採ってきた方になら打ちましょう!」

と僕も悪乗り。

「材料はなんだ?」

「んーいろいろだけど。」

「例えばアダマンタイト、ミスリル、ワイバーンいや、龍の牙とか鱗とか。まあ、いろいろだあな。」

とゲンさん。

「あーオレ、パス。」

とテッドさん。

「ワイバーンはともかく、龍では…。私にもまだ無理のようです。」

とテオさん。

「…。一部の材料を購入では駄目ですか。」

と意外に食い下がったのはカークさん。

「まあ、ひとつふたつの材料なら。財力がある方ならそれもパワーということで特別良しとしましょう。」

「一生ムリ!!」

とテッドさん。まあ、しがない公務員だもんなあ。

「テッドの腕前なら、冒険者になればアリだろ。」

「ムリ。オレ、門番でぐうたらしていたいから。」

「なにか言ったか?テッド。ぐうたら、とか聞こえたが。」

「なんでもないっす!」

と隊長の問いかけを速攻否定。ぶふ。マッハだったよ。周囲からも笑いがもれた。



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