195 ツアー開始! 衝撃のトイレとお風呂、そして寝室
「ちょっとサキ君!なにあのトイレ!」
と女性陣が目の色変えてすっ飛んできた。
「とにかく凄い!うちにもつけたい!」
あー、クリーン魔法付きトイレだもんね。温便座だし。
もちろん、クリーン魔法は「お尻をきれいにする」ことと、「用を足したあとの、ある程度の始末(汚物は基本的に水で流すので。)&便座をきれいにする」ことの両方の機能を付けた。
さらに今回は、地球仕様の「温水でお尻を洗う」仕組みも付けた。
クリーン魔法だけだと、かなり強力な魔法を組み込まないといけないが、洗ってからなら軽い魔法で済む。魔石も小さいもので済むというワケ。
まあ、僕が前世のクセで、洗いたかったというのが本音なんだけど。
もちろん、自動でノズルクリーン出来てますよ。
男性陣もどれどれ、と使えば
「おわっ!すげえ!」
「親方!あれ、うちにもぜひ!」
「俺は作ってねえぞ。サキに相談しろや。」
「あー、設計図は差し上げますから、熊親方とご相談くださいねー。」
と丸投げだ。
「まず特許とれや。それからだ。」
「いつでもおいで。速攻で手続きしてやるよ。」
とエッレさん。
「はあい。」
と料理しながらトイレの話。
「酔っ払う前に、そろそろツアー、してくれや。」
「風呂!見たいよな!みんな!」
「「おー!!」」
はいはい。
ということで、食事が本格的になる前に、屋敷の中をご案内。
まずは1階。各部屋を覗きながら、メインはまず大浴場。
シンハも入ると聞いて、皆驚いている。
「シンハはきれい好きなんです。」
と言っておく。
「一緒に入るの?まさかね。」
「一緒だよー。僕、変人だから。」
と言っておけば、それですむ。
さすがに使役獣と入るのは驚かれた。
「まあ、シンハ様だからね。」
「シンハ様だもんな。」
となぜかドワーフさんたち(エッレさんとゲンさん)は納得している感じ。
「毛をつやつやにして差し上げてくださいよ。」
はいはい。
で、なんでギルド長とカークさんまでうんうん、て同意してんのさ。
また、1階の薬草関係の仕事場は、ケリスさんとカークさんに羨ましがられた。
「いいね、いいねー。またポーション納品してねー。」
「そうそう、生産者ギルドだけじゃなく、うちにもね。」
とクギをさされた。
庭の別棟、鍛冶の作業場。
此処でもゲンさんやエッレさんを中心に、いろいろな人から厳しくチェックが入る。
「ほうほう。これで火力を増すのか。」
コークスを見て、手に取って、
「なかなかいいコークスじゃないか。」
だって森のゴーレムのコークスだもの。言えないけど。
「火の回りもいいように炉も工夫してんな。」
「おい、この薪、トレントじゃねえか!」
「!この柱!まさか!エルダーかい!?」
「うおお!すげえ!豪邸じゃんかよ!」
とテッドさん。鍛冶場の柱で驚かれるってどうなの。
「サキよう、次はどんな魔剣を作る気だあ?」
などと、ゲンさんに、にやにやしながらこそっと言われ絡まれる。
「地下室もすげえぞ。」
と熊親方がばらす。
ということで地下へ。
「どひゃあ!広いぜ!」
「柱はここもエルダーか!」
「すっげえなあ!」
「しかも、自分で魔法で広げてよ。材も調達、柱や梁まで組みやがって。俺たちはちょいちょいっと内装とドア作っておしめえよ。」
すみませーん。
「だって、全部頼んだら、すごい金額になっちゃうんだもん。そりゃ自力でできるところはがんばりましたよ。」
とやっていると、どうやら女子は2階でシルルの部屋が可愛いと、盛り上がっている様子。
「可愛いわあ。」
「おとぎ話のお部屋みたい。」
「フリルのカーテン、素敵!」
よかった。シルルのために、赤いチェックのベッドカバーとか、フリルつきカーテンとかにしてあるんだ。へへ。
ところが。
「きゃー!なにこれ!凄い!」
と階上から女性陣の悲鳴が。
「どしたどした?」
と上がってみると
そのフリルカーテンを手にして、嬌声をあげていた。
「サキ!カーテンはもしや、あの!」
とコーネリア様。
「うん?なにがどうしたって?」
「アラクネよ!あの!絹より貴重なっ!」
「おお!?」
「もしかして…家中のカーテン全部かっ!」
「あ、あはは。(アラクネさんたちから)引っ越し祝いで。頂き物です。」
「サキよ。自重という言葉を知っているか?うん?」
「だめだコイツに常識を求めては。ダメだ。」
「あー、そろそろ食事に…。」
「隣の部屋がまだよ。」
「あ、そこは…。」
「きゃー!すごいベッド!!!」
「王族!?サキ。王族だったの!?」
ああ。見られてしまった。薄い七色帳つきの豪奢なキングサイズのベッド。
「あーこれもいただきものなんです。シンハの寝相がね。悪いので。」
『俺のせいにするんじゃない。』
「ああ、シンハ様用かい。なるほどね。」
「そうか。シンハ様だもんな。」
とドワーフさんたちはまたしても納得。
どうせ僕はシンハの添え物ですよ。いじいじ。
「は!?これは、伝説の!『枯れない花』ではないかっ!?」
気づいたのはまたもコーネリア。さすが目が肥えてらっしゃる。
メーリアからお餞別にもらったあれ。ガラスケースに入れて、飾っておいたんだけど。見つかっちゃった。
「こっちもかわいい!」
それは妖精達からもらった花束。保存魔法をかけて、ガラスケースと額縁に入れて、これも壁に飾っているんだ。
「うん?この花は…幻のレルフィリーアでは!?」
気づいたのは薬草に詳しいカークさん。
そうですねー。それは妖精たちが大切にしている、レルフィリーア。寿命が延び、妖精の病気も治すという、貴重すぎる花ですねー。
「いったいこれらはどこで…。」
僕はニコッと笑って
「もらい物なので、よくわからないです。」
と、さりげなくスルー。
と、ちょうどよく、隣の部屋からは
「うおおおお!!」
という雄々しい雄叫びが。
「今度は何!?今度は何!?」
「ここにも風呂だぜ!2階なのに!」
「すげえ!大理石!」
「湯船は黒曜石だぜ!」
「あー。これもサキが作ったんだ。俺たちはほぼ何もしてねえ。」
「そうそう。水回りまでカンペキでよう。」
とメンテナンス用の入り口まで開けて親方が説明。
ちょっともう、誰の家かわからなくなってきた。
「見ろや。管もミスリルの合金、それにアラクネ布で結露防止だぜ。蛇口も、ひねれば湯が出る。家中そうだ。王宮より豪華な最新式だぜ。」
もう、いいや。
「はあー。堪能したら、降りてきてくださいねー。料理出しときますから。」
と匙投げるしかない。
「お庭もきれい。」
「此処は薬草畑ですね。」
「向こうはシンハの運動場かしら。」
「あら、小鳥さんたちが巣を。」
などど、2階のバルコニーから庭も隅々まで見られた。
「サキ!住みたい!一部屋貸せ!」
とテッドさんが肩を組んでくる。
いや、これから料理するから危ないって。
「格安で、な?俺、推薦者だし。」
冒険者登録の時のことだ。
「あれはケネス隊長名義でしょうに。」
「お前には「豪華な」兵士宿舎があるだろう。絡んでないで戻れ。」
「いてててて!」
ケネス隊長が耳を引っ張ってテッドさんを剝がしてくれた。