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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
185/529

185 新居お披露目の準備

金の日がやってきた。

我が家での新居お披露目をかねたささやかなパーティーが、夕方から行なわれることになった。

その日は朝からシルルが張り切っていて、とにかく隅々まで掃除をしまくっていた。

僕は朝から料理の仕込み。

今夜のメニューは、イタリアンを真似たものだが、男料理なので細かいことはあまりしないようにしている。

だから、たとえばおつまみのクラッカーと自家製バゲットには、本来、前もってクリームチーズを塗って、いろいろとトッピングをすべきなのだろうが、それはお客様自身でやってもらう。僕はトッピングの材料を並べておくだけ。


ベースに塗るのは、ちょっとくせがあるけど美味い魔水牛のクリームチーズと、僕とシンハの定番魔羊のクリームチーズ、ちょっと甘いクロテッドクリーム、それからあっさりめのガーリック入りオリーブオイル。トッピングには、サーモンのマリネやアンチョビみたいな小魚のオイル漬け、キャビア…ではなくマンティスの卵の塩漬け、ホルストックのレバーパテ、マルテイア(ニジマス)の甘露煮、珍しいヒシの実やナッツ類などの木の実、それから干した果物類など。たくさんのトッピング材料をそれぞれ小皿、大皿に入れて並べた。


それから作り置きしてあるソーセージ各種に、大根とタマネギのサラダ、レタスやツナ、魔鶏の卵で作った入り卵を特製マヨネーズであえ、イタリアンブロッコリを盛り付けたシーザーサラダも用意。


それからパスタ。パスタはすでに異世界にあったが、まだまだこの国では珍しく、メニューも開発されていない。乾麺で、パンの代わりの、異国の保存食と思われている。

今日は自家製生パスタで、ニンニクと唐がらしにバジルを散らしたペペロンチーノ、二枚貝を入れたクリームソースのボンゴレ、トマト味でホルストックのミンチで作ったミートソースパスタを用意して、亜空間収納に入れておく。


肉料理はステーキ三昧。オーク肉やホルストックのサイコロステーキに、一番のおすすめは、シンハがイチオシの高級ワイバーンのステーキ!そしてお馴染み魔兎肉で作った香草風味のスペアリブ。魔鶏のから揚げもご用意。この世界、揚げ物はまだ発展途上。油が高いからね。


魚料理はキチキチという白身魚のピカタ、タルタルソース添え。それに赤大魚のあら汁風。今回は肉メインなので、魚は少ない。刺身はこの世界では生で食べる食習慣がないのでこれもパス。


変わり種では正統派茶碗蒸し。銀杏とか鶏肉とか椎茸、タケノコ、自家製かまぼこなどを入れて。

あのコブダシとかブシダシを売ってくれたお店で、本当の醤油が入手できたので、作れたのだ。


こうなると、コメのごはんが欲しいが、ないのでシメは麦ぞうすい。少しキャベツとかモヤシもどきを入れて、鶏でダシをとった胃に優しいものである。


それとあっさり醤油ラーメンもご用意。ぞうすいもラーメンも食べてもらいたいので、どちらも味見できる程度の小ぶりにしてある。


ものたりない人にはダンジョンで仕留めた大蛸を入れたたこ焼きとネギ焼きをご用意。特製ソースと、お好みでマヨネーズ、紅ショウガと鰹節をかけて。


デザートはプリンアラモード。一人一皿。干しブドウとクルミ入り特製パウンドケーキを小さく切り分け、それに濃厚なバニラアイスを添えたものと、正統派カラメルソースをかけたプリンにイチゴと生クリームをトッピング。脇に新鮮な葡萄と桃とオレンジ、それに魔蜂のハチミツをかけたもの。

これは冷やしたガラスの皿にひとり分ずつ作り、さらにアイスには飴を綿のように細くわしゃわしゃにしたものを乗せた。


ちなみに砂糖は森の畑で作っていた甜菜からとった砂糖だ。

飴細工はそれを煮詰めて飴にしたもので作った。

たぶん、飴細工はまだこの世界にはないのでは、と思っている。

甘味は貴重で、ハチミツや果汁が主流の世界だ。

砂糖はとても貴重なのだ。


そうそう。ピクルスとキュウリの浅漬けもご用意。酒飲みに漬物は必需品だろう。

「よし。こんなもんでいいかな。」


飲み物はリンゴジュースに葡萄ジュース、梨のジュース。それと冷たい水は森の湧き水を用意。

ラガーは街で美味いと評判の店で樽2つ仕入れ、半分はきんと冷やし、半分はそのまま。常温派もいるかもしれないからね。

あと果実酒としてポムロルのシードルと赤ワインと白ワインが少し。これらは、料理酒および来年成人する僕用に作っておいたものなので、度数が軽く、甘め。量も少し。冷やして飲む。乾杯用程度。


それから大量のぶっかき氷も作っておく。

ほかのアルコールは大人たちが持ち寄ってくれるはずだ。


『こんなに作って…。どうなっても知らんぞ。』

とシンハは呆れるが、それでもまだまだ隠しネタは出していない。たとえばカレーとか。ギョウザとか。寒天とか。あんこだって披露してない。

あー、あとはポテチかフライドポテトを出そうかな。

まあ、あとは流れで適当に。


知り合いを今日のパーティーに誘ってまわると、誰もが笑顔で快諾してくれた。

しかし僕には午後3時から、別の用事が入っていた。

奇しくも領主との面会が、この日の3時に入ってしまったのである。


もう今は午後2時。

「シルルー。ちょっとおいで。」

居間にシルルを呼んだ。

「はい!なんでしゅか?ゴシュジンさま。」

ぱたぱたと走ってやってくる。

「うん。君にたくさん働いてくれたご褒美をあげようと思ってね。用意したんだ。」

白い麻袋で口のところが赤いリボンでしばってあるものを、亜空間収納から取り出す。

「はい。君に。プレゼント。」

「えっ!えっ!なんでしゅか??」

「あけてみて。」

シルルが袋をあけてみると、アラクネ布製チェック柄のかわいいフリルのついたエプロン。それにお揃いのカチューシャ!

チェック柄の布が張ってあり、薔薇の花形のまつぼっくりを加工し、小粒のダイヤやルビーを品よくあしらった飾り付きだ。しかもそこが髪止めにもなっていて、カチューシャから分解もできる仕組み。自分でいうのもなんだが、なかなか凝っているんだぜい。


「わぁ!綺麗でしゅう!」

目がまんまるになり、そしてきらきら光った。

シルルが喜び過ぎて、体が光っている。興奮している証拠だ。


「ふふ。良かった。気に入ってくれて。ちょっと着てみて。」

シルルが袖を通すのを、手伝ってあげ、後ろのリボンも結んであげる。

すっかり保育士さんみたいだと思いながらも。


カチューシャをつけ、

「どうでしゅか?」

と振り向く。

「うん!可愛いよ。」

そう僕が笑顔で言うと、シルルはもじもじしながら、えへへ、と笑った。

全身が映る鏡を出してやり、確認させると、ますますうれしそうにくるっとまわったり、カチューシャに手をやったり、後ろのリボンの具合を確認したりしている。

その姿は本当に可愛かった。


「このエプロンには着た人を守る防御魔法がかかってる。エプロンだけじゃなくて、着ている人全体を守る魔法がかけてあるからね。それからエプロンには欠かせない、汚れ防止もつけておいたから。汚れても数秒で元通りだよ。あ、エプロンのポケットは小さな亜空間収納になっているよ。

あとはカチューシャ。これには君の魔力を温存できる魔法がかけてある。それとこのお花にも防御魔法だ。特に呪いとか病気とかを寄せつけない呪文を仕込んであるから。一回だけ敵を攻撃する魔法も。それから君が危険になったら、僕に君の位置を知らせる魔法も仕込んであるから。」

過保護ぶりがあらわれてしまった。

「と、とにかく、しゅごいです!!」

覚えきれなくて、シルルはただ驚くばかり。

シンハも隣で呆れてため息。

『過保護もいいところだ。国宝級だぞそれ。』

まあいいじゃないか。


「僕の眷属には最低限これくらいの魔法を付与した道具は身につけてもらいたいからね。あ、あとで森にいる僕と契約した女性たち…アラクネ女王のツェル様とか、湖の精のメーリアとか魔蜂のビーネ様とかにも、この飾りは色違いを作ってあげようと思ってるんだ。今度、みんなにもシルルのことを紹介しないとね。次に森に行く時は、連れて行くからね。」

「はいです!なんだか偉い方たちばかりのような気が…。でもでもすっごく楽しみですう。」

すでにツェル様やメーリアたちのことは話してある。向こうにはまだなかなか会えなくて、シルルを眷属にしたことは直接は言えてない。

ただ、こっちに遊びに来たフクロウのハカセとコウモリのハピが、シルキーのシルルを眷属にしたことは伝えてくれているはずだ。


庭には最近、コマドリのロビンの弟夫婦と、カッコウの娘夫婦が住み着いた。

以前からあった小さめの樫とブナの木それぞれに、巣箱をかけてあげると、喜んで一家で引っ越してきたのだ。2家族はとても仲がいい。いろいろ情報交換もしているみたい。

実は魔蜂のビーネ様から、娘が大きくなってきたので、そろそろ分蜂するという情報をもらっている。いろいろ引っ越し先を探したが、奥地はすでになんらかの強い魔獣のテリトリーになっており、安心して棲むところが意外に少ないのだということだ。

なにしろ条件が、水が綺麗で花畑があるところ、ということで、なかなか広い土地がないらしい。

本当は此処に分蜂してもらいたかったが、町中なのでさすがにそれはちょっとまずかろう。


ふと思いついたのは、ゴブリンの巣窟となっていたエリアだ。あそこは、今は強い魔獣がおらず、空白地帯になっている。しかも、かつての集落地帯は、今はもうあとかたもなく、相当広い平らな土地となり、魔蜂たちが好む花の種を植えればかなり条件に合うのではないだろうか。

問題は魔素が奥地より少ないことだが、魔蜂は生息領域が広く、はじまりの森であれば、多少辺境であっても、まったく問題ないとのこと。むしろ大切なのは花が豊富なことだそうで、それはコントロール次第だろう。

あのあたりはどうか、と提案したところ、水場も近く、なかなかよいという。

こちらとしても、僕の知り合いの強い魔獣が住んでくれたら、二度とゴブリンの集落もできないだろう。


ただし、森の中としては浅いエリアになるので、冒険者がうっかり入り込むことは考えられるから、何か幻惑の結界でも作ってあげないといけないなと思っているところだ。

次に森に帰る時に、そのあたりもビーネ様と相談することにしている。




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