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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
183/529

183 聖域?が完成

水路と畑の準備が出来たので、いよいよ植物を植えたい。

ただし、院長さんたちは、野菜畑については子供たちにも種まきからやらせたいそうなので、僕は薬草畑のほうだけなんとかしましょう。

あとはもちろん周辺の庭園も整備するよ。

最初だからね。これはグリューネに来てもらおう。


「グリューネ、召喚!」

「サキじゃん!おっひさー!何ナニ?俺に何か頼み事か?」

かくかくしかじか、薬草畑にしたいというと、

「りょーかい!そのへんにいるやつ、集合!」


すると、その辺に居た緑の精霊がわちゃわちゃと集まってくる。魔力をあげて、さっそく薬草を植える。

さしあたり傷薬のロンギ草、おなかの薬のジョムカ草、痛み止めと解熱薬になるペイネ草。この基本薬草が1区画。そしてもう1区画はメルティアの苗を植えた。もちろん、苗は僕が常時収納しているものだ。

不思議ちゃんの僕の亜空間収納は植物なら根っこ付きでも収納できるので、いざというときのためにいろいろ持って歩いているんだよね。


ただ、メルティアは森の奥のやつなので、ちょっと心配だったが、メーリアが言うには、

「大丈夫よ。それ、意外に丈夫な草なのよ。聖魔法が少しでもあれば、枯れないと思うわ。」

ああ、だから森の比較的浅いところでも育つのか。

「俺が教えてやろうと思ったのに…」

とグリューネが拗ねる。

あはは。


「メルティアがこんなに…。」

「すごい!」

「よいのでしょうか。ここまでしていただいて。」

「いいんです。ちょうど手持ちが多くなりすぎて困っていたところなんですから。」

メルティアが街中でとれれば、きっと安定してポーションが供給できるだろうし。

「ただ、あまり急激にここで作ったポーションを広めるのはいかがかと。売るポーションは少しずつで様子を見てくださいね。特にメルティアを使ったものは。」

「ええ。そうですね。貴重な薬草ですから。」


冒険者たちも採取する薬草。でももちろん街中の薬草がここですべてまかなえるものではないから、今後も冒険者への依頼に影響が出ることはないだろう。

危険を冒して此処の子供達が壁外に採りに行く必要がなくなったということ。

薬は高価なので、庶民は薬草を自分で煎じて作る。孤児院もそうだろうと思ったら案の定だ。


「これで子供達が壁の外まで採りに行く危険はなくなるわ。」

「本当に。ありがたいです。」


聖属性のスライムを飼うと良いということや、できれば水を魔素水にすると薬効が高まるので、聖魔法をかけるか、スライムまたは聖魔法の魔石を手に入れるか、などをアドバイスした。

聖属性のスライムは貴重種なので手に入れにくいが、水スライムなら結構いる。それを穏やかな日向と木陰が適当にある水場で飼うと、おそらく自然に聖魔法のスライムになるということも教えた。


「ここは聖魔法の気配が強いので、おそらくそうなると、水の精霊も言っています。」

と教えておいた。

「精霊ともお話ができるのですね。凄いです!」

「あー僕はちょっとアレなので。これもご内密に。」

「もちろんですわ!」


「水スライムについては、孤児院に下宿している『シャイニングバード』に、捕獲の依頼を出しましょう。彼らもきっと喜んで協力してくれると思いますわ。」

水スライムなら、森の水辺だけでなく、ダンジョンの地下1階にもいるから、きっとすぐに見つかるだろう。


畑作りと、周囲の庭園作りが一通りおわったので、眷属のみなさんにはたっぷりの魔力をあげて、ついでにお土産のお菓子もあげて、大満足でお帰りいただいた。

メーリアからは、

「たまには湖に来てね。」

と耳元で囁かれ、頬にチュッとされたけどさ。てへ。

『こほん。サキ。顔が赤いぞ。』

う、うるさいよ。お犬さま。


その後、院長先生やシスターたちと畑の片隅に作った庭園でお茶をしながらおしゃべり。

もちろん、東屋と椅子、テーブルは土魔法で作って提供したよ。美味しい茶葉とクッキーもね。


子供達ができたばかりの畑を見学にやってきた。

セリーさんたちに連れられて、出来たばかりの畑と水路を見て驚いている。

「えっ、ここ何処!?」

「建物、無くなってる!」

「すごおい!」

「畑だあ!」

「きれいー!」

「良い香りがするー。」

「噴水だあ!」

もう大興奮!

ふふ。子供達の素直に驚く様子を見られただけで僕は満足だな。


と、見学していた子の一人が、シンハに気づいた。

「あ、白いわんわん!」

あは。シンハまた見つかった。

諦めたみたいで、僕の傍で寝たふり。

「わんちゃん、お疲れみたいなの。寝かせてあげてね。」

とセリーさん。

「つまんない。」

でもその子はすぐに、お友達に引っ張られて噴水へと走って行った。

シンハ、他に興味が移って良かったね。


「じゃあ、そろそろ僕もおいとまを。ああ、あとこれ。子供達とどうぞ。」

と僕が焼いたパウンドケーキ5本と、お土産の定番、魔兎肉5羽分をプレゼント。

「本当に。なにから何まで。ありがとうございました。」

とシスターたちが感激に涙ぐんで、深々とお辞儀する。

「慈悲深きサキ様に、世界樹のご加護がありますように。」

と言われてしまったので、

「皆様にもご加護がありますように。」

と言って真面目に祈ると、僕は魔法を使っていないのに、急に周囲の木々がざざっと風で葉ずれの音をさせ、風に若葉が舞い上がり…そして高貴なる香りがした。

あ、世界樹の香りだ、と思った。


院長先生やシスターたちもはっとして顔をあげる。

突然の爽やかな風に、子供達がきゃあきゃあと喜びの声をあげる。

「あ、今の、僕じゃないですよ。」

というと院長が

「では世界樹様が喜ばれたのですわ。」

と言った。

そうかもしれない、と僕も思った。



ヴィルドの北壁沿いに孤児院がある。

そこは教会直営ではなく、今は辺境伯の管轄だ。

なぜか良質な薬やポーションを作ることができるという。

それから数年後。

そこは聖域に指定された。

聖属性のスライムが住み、珍しいメルティアが、ここでは普通に採れるという。

その噂が教皇の耳にまで届いたためだった。



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