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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
182/529

182 眷属たちとの共同作業

まだ2時過ぎなので、僕だけ残って、もう少し孤児院をお手伝いすることにした。更地を畑に改良しちゃおうというワケ。


「空いた土地ですが、結構広いですね。全部畑にするんですか?」

「実は広すぎて、この半分がせいぜいかと。そんなにお野菜ばかり作っても、素人が作ったお野菜など売り物にはなりませんし。」

「たしかに。」

子供達の遊び場は表の広場で十分なので、この広い裏庭は、畑にするか庭園にするしかないらしい。端の方を庭園にするとして、あとは畑だろう。

土はそれなりに魔素も多く、力はありそうだが、それでも今まで畑でなかったところだ。たかが知れている。


なにか孤児院でお金が儲かるような仕組みが必要だな。

うーん。

たしか、生前読んだ本に、トランプを作って売るとか、あめ玉を作って売るとかあったような。

でも、トランプは賭博の道具になりうるから教会や領主が援助している孤児院の事業にはふさわしくない気がする。あめ玉は、まだまだ砂糖が高い世界だから、材料がなかなか手に入らないし儲けは少ないだろう。

広い敷地を生かして下宿屋とか?

いやいや、建物建設に費用がかかるのと、オトナ3人では手が回らないだろう。

あ、あれはどうかな。


「院長先生。半分は予定通り孤児院の皆さんが食べるための畑にして、あと半分で薬草を作るのはどうでしょうか。」

と提案してみた。

並のヒールポーションなら、シスターたちなら作れるのではという発想。というのも、この孤児院、なんだか聖域っぽいんだよね。光の精霊も結構ふわふわ飛んでるし。

「並ポーションなら作れそうではありますね。」

とエマさん。

「傷薬やおなかの薬なら欲しいですわね。」

とセリーさん。

「いいですね。初級の薬なら、私も知識がありますし、われわれも多少魔法が使えます。なにより、薬草そのものが身近にあるのは良いことです。そのまま煎じても使えますし。子供達にも手伝ってもらえれば、薬草畑、お世話できないこともないですね。」

と院長先生。ということで、シスターたちは皆さん賛成してくれた。


「じゃあ、まずは全面を畑用に耕しちゃいますね。」

「よろしいのですか?依頼もしていませんのに。」

「ご縁ができたので、ご奉仕です。もしかしたら、僕も此処にお世話になっていたかもしれないので。」


この世界で孤児であるのは確かだ。もしヴィルドに最初から来ていたら、ひとりぼっちだし未成年だし、きっと間違いなく此処にお世話になっていただろう。

「ありがとうございます。耕すのが一番大変なので。」

ですよねえ。いくら知り合いの冒険者さんたちが手伝ってくれるとしても、シスターたちメインでこの堅い土を掘り起こして畑にするのは大変だわ。


「じゃあ、はじめますね。」

みなさんには端っこにいてもらい、さっそく僕は地面に杖をとんと着いた。

土の一番君グラントを召喚。

(どうやら眷属を僕の魔力に召喚するなら、町の結界には影響がなく、誰にも悟られないみたいだとわかったからね。)

「ばぶ!」

「久しぶり。グラントに手伝って欲しいんだ。」

そう言って、かくかくしかじか、畑にしたいことを伝える。すると

「ばぶ、ばぶ。(サキなら魔法でできるよー。手伝ってあげるね。)」

とのこと。ではいっぱつ。


「イ・ハロヌ・セクエトー…土の精霊たち。力を貸して。畑作成!」

「ばぶう!!」

すると僕が作った大きな魔法陣に土の精霊たち(つぶつぶたち)が現れて、もっこもっこと土を掘り返してくれる。

もちろん、院長にもシスターたちにも妖精や精霊達は見えない。ただ土が勝手に耕されていくように見えているだろう。


「メーリア、助っ人お願い。」

と水の女王を呼ぶと、

「はあい。呼んだ?」

と軽い感じでやってきて、

「畑を耕しているんだ。水を適度に頂戴。」

「いいわよー。」

と言って、畑にだけ霧雨のようなやわらかな雨を降らせてくれた。

もちろん、僕とメーリアの会話は念話。メーリアの姿もシスターたちには見えていない。メーリアは大精霊だから、顕現しようとすればできるけどね。


「ここで何を作るの?」

「野菜とか、薬草とかだよ。」

「じゃあ、それに適した土になるよう、水も加減しておくわね。」

「ありがとう。」

僕一人でもまあ水の調整はできるけど、女王さまにお出ましいただいたほうがいいだろう。それに、たまにお仕事させないと、メーリア拗ねるし。


「サキ、薬草作るなら、聖魔法もかけておくといいわよ。良質の薬草になると思うわ。」

「なるほど。ありがとう。じゃあ、今後はシスターたちが作るから、時々聖魔法をかけるよう言っておくよ。」

「それがいいわ。丁度真ん中くらいに水脈があるの。井戸も掘っておいたら?水やりが楽よ。」

「いいね。聞いてみる。」


院長先生に聞くと、二つ返事で了解されたので、井戸を掘って収納中の石で井戸をしっかり作っておく。子供達が落ちないよう、石の蓋もしっかりと。この世界には小さな魔石で汲み上げる魔導井戸ポンプが普及しているので、街で見かけたやつを思い出し、僕の亜空間収納で作成。それを設置した。さほど高価なものではないそうで、街中に水道が普及している。


「向こうにも井戸があったの。そこにも聖魔法をかけるようにするといいわ。」

「ありがとう!」


聖魔法の魔素水なら、上質のポーションが作れるかもしれない。そうでなくとも聖魔法の気配がある水というだけで、健康にもよさそうだ。水にあたることもないだろう。

ということで、それも院長と話し合う。

最初は僕がかけておくが、あとは定期的に聖魔法をかけるか、聖属性のスライムの魔核を投げ込めばいいはず。

あ、いっそのこと聖属性のスライムを飼ったらどうだろう。聖スライムを暗い井戸の中で長く飼うことはいいことではない。街の下水設備にも聖スライムがいるのだが、一部分は外光を取り入れたり、外を流れるように設計されており、あとは適宜スライム自体を交換しているはずだ。


此処でも、光のよくあたる流水のあるところがいいから、庭園にする部分に噴水を作ってスライムはそこで飼えば良い。聖属性の魔物なので、人に悪さもしないのだそうだ。もちろん、噴水は浅くして、子供達が落ちても溺れないように。

ええいめんどうだ、これも僕が作っちゃえ。


井戸から四方に水路を作って、そのつき当たりに浅い噴水を付ける。

水は井戸から魔石で汲み上げられ、四方を巡って途中の噴水でもまた水流が確保され、最終的に少しずつ下水へ。水路の石も、もちろん解体したばかりの石材。畑の水やりは中央の井戸だけでなく、周囲の水路のどこからでも汲めるので、畑の水やりは楽だろう。

井戸からはこんこんと良い感じで水が湧いて出ているので、枯渇することはない。このあたりはメーリアに確認済み。

こうして水路で区切られた4つの区画のうち2つで野菜を。のこり2区画で薬草を作ることとした。


久しぶりに妖精たちの出番。

本当はもっと活躍させたいのですがね。

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