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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
176/530

176 ユリアとのデート? 商店街にて

夕方、再びギルドに行くと、喫茶部でユリアがジュースを飲んでいるのが見えた。

そこに、僕よりずっと年上の冒険者のおにいさんが、ユリアに声をかけていた。

「ねえ、ユリアちゃん、これからデートしない?」

「しないわ。先約あるの。」

「うわ。速攻ふられた。」

などと言っている。此処に僕が行ってもいいものか。いやいや、行かねば。

「ごめん、待った?」

「ううん。さっき上がったところ。丁度良かったわ。」

「お、色男登場か…って、なんだ、サキかよ。」

「サキで悪かったな。」


知り合いという訳でもないが、顔は知っている冒険者のおにいさん。確か名前はコントルと言った。

コントル兄さんはそう悪い奴じゃない。

ただしょっちゅうあっちこっちにナンパをしかけて、女性たちに軽くあしらわれている。場合によってはビンタされてたりする。

腕前はそこそこのDでもうすぐCだとか。

「まあ、サキならしゃーない。譲ってやるよ。」

「あら、譲るってなによ。私、もともとあなたの所有物じゃないわ。失礼ね。」

「あ、ごめん。そういうつもりじゃなくてさー。」

「行きましょ。サキ。」

ツンとしてユリアが席を立つ。

僕はコントル兄さんにちょっと会釈してユリアのあとを追った。


「コントル。お前、ユリアちゃんにまでモーションかよ。まだ子供じゃねーか。」

「お前、そんなこと、ユリアちゃんに言うんじゃねえぞ。あれでももう14才だ。」

「え、そうなのか?」

「ああ。エルフだからいろいろ成長が人族と違うんだってよ。知り合いのツレから聞いたから間違いねえ。」

「なんか、情報ソースが怪しげだけど…確かにエルフだもんな。じゃあ、サキと同い年か。」

「そうなるな。」

「まあ、しゃあない。ユリアちゃんはサキに譲ろう。ユリアちゃんは可愛いが、父親がほれ、アレだから。」

「ああ。やめておいた方がいいな。」

「うん。確かに。恐えおっちゃんが後ろについてるからよ。」

「ま、お前がギルド長のお眼鏡にかなうとは思えねえがな。」

「るせーよ。」


ギルドでのそんな悪意のない会話があったとは知らない二人は、夕暮れの領都を歩いていた。


「何か食べたいもの、ある?」

「んー。特にはないわ。でも、おかあさんが夕食作ってるから、軽くしか食べられないの。」

「あ、なるほど。」

約束したのが急だったからな。確かに、養女の立場で急に夕飯をキャンセルはよろしくないだろう。

「ね、いっそのこと、家に来ない?」

「え、いや、でも。」

「とにかく、一度家に寄ってくれる?おかあさんも、貴方に会いたがってたし。」

「そう?じゃあ、そうしようか。僕も、ギルド長のパートナーさんにお会いしたかったんだ。昔、冒険者やってたって聞いたから。」

「うんうん!そうしよ!」

すっごくうれしそうにユリアは言った。

ちなみに今日はギルド長はユリアと帰れないと判ると、少し拗ねたようだが、残業をしていくことにしたとのこと。


ユリアと談笑しながら夕暮れの街を歩いていると、前からちょっとガラの悪そうな二人組が歩いてくる。多分冒険者だが、見かけたことがない奴らだ。まだヴィルドに来て間もないのだろう。

あーこれ、またテンプレ?

僕がユリアをかばうようにちょっと前に出ると

「おうおうおう、見せつけてくれんじゃねえの。ガキのくせに、おデートかよ。ませてるなあ。」

えーこんな冒険者、本当にいるんだ。ぼくはそれにちょっと驚いた。まじでいわゆるテンプレってやつだ。っていうか、知らないんだ。ユリアがギルド長の養女だってこと。でなけりゃ絡んだらやばいとわかるハズ。やはり領都に来て日が浅いのだろう。


「お嬢ちゃん、そんな優男やめて俺たちと遊ぼうぜ。」

「ばーか、そんなちっちゃい子誘ってどうするんだよ。」

うわ、それはヒドイ。僕がユリアだったら、絶対傷つく。14才に見えないのがコンプレックスだと僕は知っている。

横目で見なくとも、ユリアがさっと顔を青ざめさせたのがわかる。恐いからというより、「ちっちゃい子」というのにショックを受けている。僕の袖をぎゅっと握っている。


僕が何か言う前に、シンハが

「ウー」

とうなりだして僕の前に出たので、僕はシンハに併せて「威嚇」を発動した。

「ガウ!!」

一声吠えて飛びかかろうとするので、さすがに手綱をひっぱって止める。

ガチンと男たちの前でシンハが牙を鳴らす。

「ひっ!」

馬鹿な冒険者たちがさすがにひるむ。


「ああ!そういえば、うちの『犬』、ワイバーンもかみ殺すんだよねー。忘れてた!」

と大声で言ってやった。

このあたりは僕とシンハがよく通る道。シンハはおとなしい、お行儀がいい、と人気者だ。そのシンハが怒っている。どちらに非があるか、周囲の店の人たちもわかっているので、冒険者の男達を冷たい目で見ている。


「ひ、ひぇ!」

「ば、ばかなっそんなことあるわけが」

「ガウ!!」

「おっと。」

また手綱を引く僕。

また目の前でがちん!と牙を鳴らすシンハ。

「ひ、ひぇぇ!」

威嚇された男はすっかり腰を抜かした。じたじたと後ろに下がろうとするがうまくいかない。


「兄さん達、ちょっかいだすのやめときな。ヴィルドじゃその白い犬は有名だよ。」

とむっとした串焼き屋のおじさんが声をかける。

「そうそう、みんなでかわいがってんだ。あんたら、さっさとどっか行っとくれ。商売の邪魔だよ。」

「シンハちゃんを怒らせるなんて、とんでもないねえ。」

「もぐりの冒険者か?」

「いっそのこと嚙まれちゃえばいいのに。」

と周囲の店から援護射撃さえ来た。


もう、からんできた冒険者たちが周囲の反応に驚いている。

「く、くそう。お、覚えてやがれ!」

もう一人が腰を抜かしたダチをずるずる引っ張りながら逃げていく。

「おととい来やがれ。」

僕があっかんべえをした。


クスクス。

僕の横でユリアが笑う。

「くうん。」

シンハがとたんにおとなしくなって、お座りしてユリアに褒めて、と尻尾をぱたぱたする。

「ふふ。シンハ。ありがとう。」

「わふ。」


「おう!サキ、シンハさまに串焼き持ってけや。」

「ポムロルもあげるよ。」

「ユリアちゃん、だいじょうぶかい?恐かっただろ?これ、持って行きな。」

とご近所さんがいろいろ声をかけてくれ、果物やら串焼きやらをくれる。

「あ、ありがとうございます。」

とユリアもちょっと驚き気味。

いい街だ。


「すみませーん。お騒がせしちゃって。」

というと

「いいってことよ。」

「あんた、この間も盗賊退治で大活躍だったそうじゃないか。」

「ありゃあ『おのぼりさん』だねえ。ヴィルドでサキとシンハを知らないなんて。」

「命知らずだよな。サキに喧嘩ふっかけるたあ。」

「しっかりギルド長にお仕置きしてもらわねえとなあ。」

と盛り上がっている。


なんだかいつのまにか、両手にいっぱいお土産を持たされてしまった。

どうもどうもと、ぺこぺこにこにこしながら、ようやく大通りを突っ切る。

「大丈夫?ユリア。」

「え?うん。なんか、驚いちゃった。シンハと貴方にもだけど、お店の人たちの反応に。貴方とシンハのことだけじゃなく、私のことも知っているなんて。」

「いや、ユリアはご近所だから。でも僕なんか、ほとんどお話したこと、ないんだけどなあ。シンハって有名だったんだあ。」

「ふふ。何をいってるの。貴方もでしょ。サキ。」

「いやあ。僕はほら、シンハのつけたし、おまけ、エサ係ですから。」

というと、

『まったくその通りだ。』

とシンハがつんと偉そうに言う。

ぶう、と拗ねてシンハを睨む。

ユリアは涙を流して笑っている。


商店街のひとたちからもらった両手いっぱいのお土産を半分こ。ユリアに渡す。シンハにどうぞとユリアが言ってくれたけど、でもお店のひとたちの心意気だからと受け取ってもらった。

「本当にあなたたちって仲良しなのね。さっきもいい連携だったわ。」

「腐れ縁ですから。」

『まあそういうことだ。』

とシンハも同意。

僕たちの言葉に、ユリアはまだ涙を拭きながら笑っていた。

「でも…、いい街だね。此処。」

「そうね。ほんとうに。そうだわ。」

夕日の中で、なんだかほっこりした気持ちになった。



いいね!や評価をいつもありがとうございます。

書き物をしていると孤独なので、とても励みになっております。


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