表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
175/529

175 プレゼントは手作りが基本

僕が階下に降りてきた時、たぶん妙な顔をしていたのだろう。

ユリアが心配して走ってきた。

「どうしたの?何かあった?」

「ん?いや。どうして?」

「だって、なんだか…いつもと違う。サキ、笑ってない。」

「え?そう?僕、いつも笑ってる?馬鹿みたいに?それはそれで考えちゃうなあ。」

「あら。そういうつもりじゃなくて。」

「はは。ごめん、混ぜっ返して。心配してくれてありがとう。…領主様とお会いする話だったんだよ。あのお屋敷を売っていただいたから、一度はご挨拶しろって。確かにそうだなと思ってはいたけど、僕、貴族のひとと会ったことないから、緊張しちゃうのは目に見えてるからさ。ちょっとブルーになってたわけ。」

「なあんだ。そうなの。」

ユリアはほっとしたようだった。


「丁度いいわ。私、貴族の作法、教えてあげましょうか。」

「え、ユリア、詳しいの?」

「あら心外だわ。私、何度も王宮へ行ってたのよ。隣の国のだけど。」

「あ、そうか。」

「ふふ。作法は此処の国と変わらないと聞いたことがあるから、大丈夫だと思うわ。教えてあげる。」

「ありがとう。そういうことなら、お願いするよ。」

「任せておいて!」

ユリアが自信満々で笑ったので、僕はほっとした。


ユリアと、また夕方に、と約束してギルドを出た。

ユリアと会話して、僕はまた明るい気持ちになれた。

やっぱり彼女の笑顔はいいな、と素直に思った。


そうだ。夕方に「デート」だから、何処で食べようかな。

高いレストランはお互い肩が凝るし、気さくなところがいいだろう。

いっそのこと屋台に誘ってみようか。

きっとまだ屋台ではあまり食べてないんじゃないかな。

あ、そういえば、ツェル様にベッドのお礼はどうしようかな。


熊親方のところへと向かいながら、いろいろ考え、途中、小間物屋を覗いてみる。

針や裁縫道具をアラクネさんたちの分まで大量に購入し、それからツェル様へのおみやげを探す。

お、まつぼっくりを薔薇の花のように加工したブローチがあった。

豪華なものより、こういうもののほうが喜びそうだ。宝石をあしらえば、それなりに高価なものになるし。あ、でもメーリアとビーネ様も、きっと欲しがるよなあ。じゃあ、ベッドのお礼は別に考えよう。あ、宝石入りの素敵な裁縫箱なんかどうだろう!うん。いいかも!


ほかのアラクネさんたちには、パイの差し入れかな。雄のアラクネさんたちにはミートパイ、雌のアラクネさんたちには甘いパイ…。

あ、そう言えば、キングトレントの若枝を残しておいたっけ。あれにまつぼっくりがあったな。


結局、僕は小間物屋でヒントを得て、自分で作ることにした。

ああ、それと、いつも屋敷でがんばってくれているシルルにもまつぼっくりブローチはあげたいな。

あとはシルルにはエプロンを。

隣の雑貨屋で可愛いエプロンが売っていたので、それを購入するか迷ったが、結局アラクネ布で自作することにした。

お揃いリボンのカチューシャも作ろう。

もちろん、これらには魔法で防御魔法を付与しよう。


僕はやっぱり何か作っていたほうが性に合っているみたいだ。

商店をいくつか見て、また香辛料なども買い足し。

それから熊親方の工房へ向かった。だが、道の途中でばったり、熊親方に遭遇。

「あ、親方!」

「おう。サキじゃねえか。」

「今、親方の工房に向かうところでした。」

「うん?」

「これ、僕が受けたんで。」

と言って依頼書を見せる。


「ああ、これかあ。お前さんが受けてくれりゃあ好都合だが…いいのか?割に合わねえ仕事だぞ。」

「構いません。少しは孤児院にもご奉仕したいし。資材運びは得意だし。」

「まあ、お前さんならな。こっちもありがてえ。いや、本音を言うと、お前さんに頼もうか、と話してたんだ。サキなら2日くらいで終わらせちまうだろうしよ。だがなあ。この依頼料じゃあなあ。言い出せなくてよ。」

「遠慮しなくていいのに。というか、僕の家の改造工事で、この仕事後回しになってたんじゃないかなって思って。」

「まあ、実はそうなんだ。なかなか人手も集まらねえし。」

「やっぱりでしたか。じゃあなおさら、僕が受けて正解でしたね。資材運びって、石とかですか?」

「ああ。北の壁沿いに孤児院があるんだが、敷地だけは広くてな。というのも、以前は教会付属の修道院と孤児院があったんだが、修道院は隣の王家直轄領に移転しちまって、今は領主様が援助されてる孤児院だけがある。それで使っていない修道院部分だけ壊して、そこを畑にしようということさ。」

「なるほど。じゃあ、一部解体ですね。」

「ああ。そうなるな。崩した石材は街の壁の補修とか街路の整備などのために、領主様が教会から格安で譲ってもらう話になっているそうだが、これまで建物を崩すのが大変で、手をつけずにいたというわけさ。明日からできるかい?」

「ええ。明日と明後日なら特に大丈夫です。」

「そっちも家の改造で忙しいのに。悪いな。」

「いえいえ。親方たちにがんばってもらっちゃったから、予定より早く終わりましたし。じゃあ。明日8時に現地集合で良いですか?」

「おう!よろしくな!」

「こちらこそです。あ、それと。」


僕は家の改造が終わったので、金の日に引っ越し祝いをする話をした。工房の職人さんたちもぜひ、と誘っておいた。熊親方は笑って快諾してくれた。


帰宅して、今夜は外で食べることをシルルに告げて、あとは鍛冶小屋に籠もって、夕方までひたすら細工物。

森のみんなへのプレゼントをいろいろ作った。

なにげに危険だと思ったので、自分でステイタスボードの時計で目覚ましをかけておいたから良かったものの、あぶなく夢中になりすぎて、ユリアとの夕方の約束をすっぽかしてしまいそうだった。やばいやばい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ