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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
173/534

173 久しぶりの冒険者ギルド

翌週。

そろそろまた冒険者としての仕事をしようかなと思い、ついでに改造が終わったこともギルド長に伝えようと、久しぶりに冒険者ギルドにやってきた。

ユリアが受付に入っていたが、今は接客中。

僕は一応依頼の貼ってある掲示板を見る。

でも食指が動く依頼が無い。

「…うん?」


目に入ったのは、次のような求人。

『ランク問わず 急募!

大工仕事の手伝い 場所:北区孤児院

建築資材を運搬する簡単な作業。朝8時から夕方5時まで 

予定日数2~5日 報酬:1日300~500ルビ(予定)

※仕事量につき報酬は応相談。 

詳しくはタッカー工房(熊親方工房)まで。』


なんだ、熊親方のところの仕事じゃないですか。水くさいなあ。僕に声を掛けてくれれば、お手伝いするのに。と思ったが、ああ、報酬が少し安い。安い割に重労働みたいだな。そうか。孤児院だからかも、と思う。もしかして、僕の家の改造で、この仕事後回しになったのでは?と思うと、ちょっと心が痛む。

貼り出し日からすでに数日経っている。安くてだれも受けないのか、それとも人が不足していて剝がされないのか。

それじゃあと、その依頼を剝がしてユリアのところに持っていく。


「おはようございます。」

「サキ!おはよう。シンハも元気?」

「ばう!」

尻尾をフリフリ。

「サキったら最近ちっとも来ないから、どうしてるかなって思ってたの。」

「家の改造とかで忙しかったんだよ。あ、この依頼、受けたいんだけど。」

「はい。…え、ちょっと安いけど、いいの?」

「いいよ。たぶん僕の家の改造で遅れてるのかもと思ったんだ。だから、ご奉仕価格。」

「そう。わかったわ。じゃあ、仮受注ということにするわ。あとでタッカー工房に顔を出して、詳細は聞いてね。もしやっぱり断る、ということなら今日中ならキャンセルできるようにしておくわ。」

「ありがとう。たぶん受けるとは思うけど。」

「…はい。仮受注完了よ。受けるならそのまま明日朝からということで、よろしく。」

「わかった。」

「ところで…どう?あの家の住み心地は。」

「もうばっちり!おかげさまで快適でぐっすり眠ってる。寝すぎてシンハに怒られてる。」

「ふふ。居心地よくて良かったわね。近い内にぜひ中も見せてほしいわ。幽霊騒ぎさえなければ、とっても素敵そうなお屋敷だもの。」

「ああ。うん。そうだね。今度、引っ越し祝いでもしようかな。知り合いを呼んで。」

「それがいいわ!私もお手伝いに行くわ!」

「ありがとう。僕、自分が主催のパーティーなんてやったことないから、手伝ってくれるとうれしいな。」

「判った。誰を呼ぶのかリストを作るところからね。なんだかわくわくしてきたわ。」

「あは。ちょっと知り合いを呼んで、軽く食べ物をつまむ程度だよ。」

「それでもよ。いつにする?」

「そうだなあ。」

「こほん。」

「あ、カークさん。」

「おはようございます。」

「おはようサキ君。朝からギルド職員をナンパですか?」

「え、いやそうじゃなくて。」

「副長。せっかくサキが副長も呼ぼうって言ってるのに、そんな水さすようなこと言わないの。」

え?僕何も言ってないけど。まあ、カークさんは呼ぼうと思ってたけどさ。

「なんのことです?」

「引っ越し祝いよ。」

「知り合いを呼んで、軽く食べ物をつまむ会をしようかと。」

「なるほど。そういうことなら。ありがたく参加させてもらいますよ。で、いつです?」

意外に乗り気なカークさん。

「まだ日にちは決まっていないですが近いうちに。」

「今決めましょ。私は基本的にいつでもいいわ。副長は?」

「えーと。」

「あ、ギルド長とかケネス隊長とかも呼びたいから、偉い人たちの日程に合わせてもらっていいですよ?」

「じゃあ、まずお父様に聞いてみましょ。今、お部屋にいるから、聞いてくるわ。ちょっと待ってて。」

僕がイエスともノーとも言わぬうちに、さっさと受付をクローズして、ユリアはぱたぱたと奥へと走っていってしまった。

「…やれやれ。女性というものは。サキ君。将来、尻に敷かれそうですね。」

「え?いや。はあ。あはは。」

苦笑するしかない。…ってどういうことだよ。ユリアと僕の将来??

シンハがふわわとおおあくびをしていた。

おい。他人事だと思ってるな。ちぇ。

ほどなくユリアが戻ってきて、

「お父様は今週の金の日はどうかって。駄目なら土の日。どう?」

今日は週はじめの月の日なので、明日から熊親方の手伝いをしても、まあ大丈夫だろう。ていうか、僕が資材運搬を手伝うと5日どころか2日もかからない予感もするし。もし長引いても、夕方仕事が終わってからなら問題ないし。


ちなみに曜日は七曜制で、月曜は月の日、火曜は火の日、水曜は水の日、木曜は緑の日、金曜は金の日、土曜は土の日、日曜は光の日である。魔法属性が基本的にとられているが、地球とよく似ているのは偶然ではないだろう。闇の日というのはよろしくないと思われたようで、月が採用されているとのこと。でもこれ、絶対転生者の影響だよね。


「判った。じゃあ、金の日、夕方6時からということで。」

土の日は勤め人は半ドンの人が多く、光の日は休息日にあてている人が多いのも、地球と似ていた。

「カークさん、それで大丈夫ですか?」

「ああ。私は別に。用事はないと思いますよ。」

「よろしければ、奥様もご一緒にどうぞ。」

「おや、ありがとう。話してみましょう。」

「ぜひ。」

「楽しみだわ。で、他には誰を呼ぶの?」

「こほん。ユリア嬢。それ以上は勤務とは関係ない話のようなので、仕事が終わってからにしてください。」

「あ、そうですね。すみません。」

カークさんにたしなめられて、ユリアは首をすくめた。

「判った。じゃあ、今日、仕事が終わる頃にまた来るよ。続きを打ち合わせしよう。」

「判ったわ。」

ユリアはうれしそうに笑った。

「あ、そうそう、忘れるところだった。お父様…ギルド長が、貴方が来てるなら、部屋に顔を出してくれって。何か話があるみたい。」

「判った。またね。」

「ええ。またあとで。」

僕はカークさんと一緒に3階へと向かう。


「貴方もたいした人ですね。」

「?なにがです?」

「いや、人気者の受付嬢とさりげなくデートの約束をとりつけるんですから。」

「え?デート!?そ、そんなつもりはなかったんですけど…。ああ、今日の夕方の約束は、確かにデート、に相当するのかな?よく判らないけど。」

なにしろ、僕は地球では女の子とデートなんてしたことないし。

ほとんど病室暮らしだったからね。


「まあ、ユリアが楽しそうで良かったですよ。なるべく彼女には笑っていて欲しいと思うから。」

と僕が言うと、

「おお。また歯が浮きそうな言葉をさらりと。イケメンの上に自覚なしだから恐い。」

「え。いやだって、ほら。ユリアは…恐い思いもした訳だから。」

と言うと、さすがにカークさんは気まずそうに

「…そうでしたね。すみません。真面目な貴方をちょっとからかいすぎました。どんどん彼女を明るくしてやってください。貴方には心を許しているようなので。」

さすがにカークさんは真顔でそう言った。

真顔だけど、目は優しかった。

「わかりました。」

僕も真面目に答えた。



いいね!や評価、ありがとうございます!誤字報告も助かっております。

読者のみなさま、ありがとねー(^_^)/

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