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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
171/529

171 新しい家 非常識な浴室

一通り、鍛冶小屋での打ち合わせを終えて、次に2階に上がった。

狭くした客間側から入り、浴室との間に新たに作った壁を見せる。

「おお!」

「おー。できてる!」

「こんな感じです。此処は漆喰壁にしたいので、わざとくいつきがいいように、鉋がけは荒くしてあります。」

「お、おう。」

「こ、これもトレントだ。すげー。漆喰で見えなくなるのに。」

「すみません、それしか手持ちがなかったので。」

「…こほん。他の壁はどうする?」

「一塗りしてください。ここだけ白いと違和感あるので。」

「判った。」


「新しい壁のところの基礎はどうやった?」

「あとでお見せしますが、一応真下に補強のトレント材の梁を渡しています。」

「うむ。」

なんか、親方、口数が少ない。


「しかし…すげえなあ。サキよ。本当に素人かい?」

ブリックさんが桟の様子などを見上げながら言った。

「素人ですよ。耐荷重とか、構造的には大丈夫なように作っていますが。仕上げはよろしくお願いします。」

ちゃんと最終的には鑑定さんに耐荷重とか力学的なものとか、確認したからね。

「了解した。」

「じゃ、向こう側に行きましょう。浴室です。」

今度は浴室を見せることに。


寝室側から入っていくと。

「「な、なんじゃこれは!」」

「え?え?駄目ですか?がんばって作ったんですけど。しょせん素人ですからねえ。すみません。お目汚しで。」

「な、何を言ってる!この材は…大理石!白だけじゃなく黒まで!すごい!どうやったらこんな…ああ。浴槽は…黒曜石か!?堅いのにどうやって加工を!?ああ、蛇口までこんな…こんな立派なものが…。」

「いちおう、こっちの赤い印の蛇口からはお湯が出ます。」

「なぬ!?湯が!?」

「まじかっ!」

親方が湯の蛇口をひねったり締めたりしている。

「温度は38℃から42℃…えーと、ちょっとぬるめと、適温、ちょっと熱めの3種類。円盤のところで調節します。シャワーももちろんお湯がでます。」

「すっげえ!」

「……。」

「あ、親方、洗面台の蛇口からも湯が出ますぜ!」

「おお…。」

「俺、こんな豪華な浴室、見たことねえ…。」

どうやら、駄目なのではなく、立派にできているので驚いてくれたようだ。

特にブリックさんは子供のようにはしゃいでいる。


「駄目じゃないんですね。良かったぁ。」

「すげえ!俺、サキに弟子入りすっかな!おっと。つい、口がすべった。」

「いや、俺も弟子入りしたいくらいだ。いったいどうやって…。ああ…。すごい…。そうだ、ところで床の防水はどうやった。上下水道は?」

「床防水は、床板剝がしてセメント塗って。さらに防水パテを大理石タイルに塗って接着。メジもそうです。上下水道は、壁の間を区切って道を作って、パイプを通してあります。ひとつは上水、ふたつが下水。トイレとは別にしたので。上下水の管が1階と2階の間の天井裏を通って壁に入り、最終的にはキッチン近くの下水升とかトイレ用升とかにつないであります。」

「おお!」


「浴室床と各配管に水漏れはないか、テスト済みです。

床下、確認してください。水漏れ防止も工夫したんですよ。」

そう言って、メンテナンス用の穴から2階の床下に降りる。

「すげえ!」

「うーむ。補強の梁に防水対策、管の接合、結露対策もカンペキだな。」

「なんか、裏方の部分を褒められたほうが、オモテの浴室褒められるよりうれしいのは、僕も職人だってことですかね。」

「じつに見事だ。いつでも大工の看板がかけられるぞ。」

「うわー。お世辞でもうれしい。」


「ん?この管は…何を使った?銅…ではないようだが。」

「純銅だと錆びるので、錆びない合金にしてあります。材料は…ちょっと秘密です。えへへ。」

「秘密の材料か…まさかミスリルなんていうなよ。」

「あ、判っちゃいました?」

「なぬっミスリルかよっ!」

「合金ですけどね。」

「ミスリルの合金なんて、聞いたことねえぞ!」

「え、そうなんですか?ミスリル自体がもともと合金ですよね。」

「えっ!」

「えっ!」

「あれ?(常識じゃないのか?これは。)違ったかな?まあ。聞かなかったことにしてください。あはは。」

「…」

「…」


ミスリルはミスリル単体で鉱物として採れるが、実は銀に金とプラチナが一定量混じり合ったところに魔力と圧力が加わって、性質が変異、平準化したものだ。なので、見た目も扱いも、単一の鉱物とみられているのだ。

それからいろいろとミスリル以外のことも根掘り葉掘り聞かれた。

「完璧だな。」

「本当に驚いた。本気で大工にならないか?いつでも看板かけられるぞ。」

と親方は腕組みして頷きながら言った。

「あざっす!!」


次に地下も見てもらう。

まず、石の大黒柱に驚かれた。

そして放射状の張った優雅な梁を褒められた。

柱や張りめぐらした梁、腰壁などが、ここもエルダートレントと普通トレントだと聞いて、またびっくりされた。


「そんな貴重な材をここにも惜しげもなく…。」

「だが、確かにありだ。トレント材は普通の材木よりはるかに硬いししなやかだ。頑丈だから王宮などの巨大建築にはトレント材が欠かせないのだ。地下にトレントを使うのは理論的にはありだ。」

と親方が教えてくれた。

「にしても…エルダーを地下に使うとは…。こんな豪華な地下室は、王宮より豪華かもしれねえな。」

「丈夫ですからね。エルダー。」

「まったく。サキは…。ふう…。俺たちがやることはほとんどねえな。」

「ですね。」

「いやいや。扉も作ってもらいたいし、壁の仕上げもしてもらわないと。よろしくお願いしますよ。」


それから値段の交渉になった。

あらましは僕が作ってしまったので、本当にやってもらう作業は少しになった。

扉は、トレント材を僕が提供すれば、それで作ると言ってくれたので、そうすることに。ここまで僕のほうでやったのなら、あとはあちこちの壁塗りと扉の細工賃、鍛冶小屋の窓くらいだから、合計で5万ルビでいい、と言ってくれた。

それではあまりにお支払いが少ないので、屋敷中の細かい修繕と照明器具のメンテナンス(魔石はすべて僕が提供)、厨房機器や暖炉などを含む全室メンテナンスもお願いした。

それでどうにか10万ルビになった。


壁の全塗り替え(この世界、まだ壁紙というのが発達していない)も考えたが、僕がクリーンを強めにかけただけで、結構綺麗な壁になっちゃうので、全体的な塗り替えはせず、一部の壁だけさわってもらうことにした。

やっぱり自分で働くもんだね。


それからしきりに、弟子にならないか、いや、俺を弟子にしてほしいくらいだ、と親方から言われてしまった。

それはさすがに断った。

なんだか武器屋のゲンじいさんみたいなことを言う。

とにかくそれは勘弁してください。



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