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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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17 魚をさばく、畑を広げる

「ふんふふっふふーん♪」

今日は朝から魚をさばいている。

川で罠を作り、大量に捕れたので、保存食づくりだ。

生前は特に料理をしていたわけでもない。死ぬ数年前から入院生活だったし。でも小学校の頃は、母親が料理をするのを横で見るのが好きだったし、よく手伝っていた。魚のさばき方もその時に教えてもらった。でも今は賢い鑑定さんがいる。最初の魔兎の時と違い、今ではどうさばくとよい、まで教えてくれる優秀な先生に育っていた。チート万歳!で、なんども練習するうちに、結構うまくなった。料理スキル1も覚醒しちゃってた。えへへ。

川ではサリ(シャケのこと)、マルトー(マス)、マルテイア(ニジマス)、ラッパー(アユ)、フェルラッパー(イワナ)、ネウル(ウナギ)などが捕れる。

特にマルテイアが多く捕れる。これはアジくらいの大きさで、そこそこボリュームがあって、1食1尾に丁度いい大きさ。クセがなく食べ応えがあって美味い。

これが合計100匹ほどストックできていたので、今日は一挙に加工するんだ。もちろん、わが『亜空間収納』は捕った魚を新鮮に保存してくれていました。


天気がいいので、外に切り株で作った調理用テーブルの上に、これまた豪快に木を分厚く輪切りにしたまな板をどんと設置した。切り株テーブルは、小さな椅子に座って使えるように結構な高さがある、というか、切り株ちょこっと根っこ付きのやつ。椅子も切り株だし。あ、椅子は座り心地いいように、少しくぼませてあるんだよ。

さて、魚だが、100匹のうち30匹は生のままとする。刺身とか煮魚など調理用だ。血抜きして軽くクリーンをかけて洗い、うろこを取って腸を出し、再度クリーンと鑑定をして、寄生虫などいないか確認。そして『亜空間収納』にぽいっと入れる。次の20匹は同じく腸処理をし、全体に塩をまぶしてまたぽいっと収納。これは塩焼き用。それから今度は塩を魔力水に溶かし、ちょっとだけニンニクとこねぎ、ニラなんかを入れた塩ダレを作る。魚は腸処理をして開き、塩ダレにさっとくぐしてぽいっと収納。これが25匹。残り25匹はていねいに開いて塩ダレにくぐしたあと、乾燥。一夜干しくらいにしてから収納した。


「ふう。やっとおわったー。」

『まったくお前は器用だな。』

と隣で言いながら、ヨダレたらしてるじゃないの。

わかったよ。

「一匹だけね。これ、保存食なんだから。」

と僕は干物にした塩ダレタイプを再びポケットから取り出すと、火魔法であぶってからシンハに与えた。まあ、これも出力調整の訓練にはなる。最近は僕も出力過多気味で、適度な火力を出すのに苦労しはじめているからな。よかった。黒焦げにならずに済んだ。


「熱いから、気をつけてね。」

『うむ。……なかなかうまい。』

「塩辛くない?」

『大丈夫だ。』

「ふふ。よかった。」

シンハは無塩からたっぷり塩味までなんでもOKで、人間用の濃い味付けで構わないという。でも、好みはやはり薄味だ。ちなみに塩気は大丈夫だが、辛いのは得意じゃない。舌は繊細のようだ。まあ、僕も激辛はたべられないから、同じ嗜好でよかったよ。

無心になって両手で魚を押さえて食べているシンハが可愛くて、僕はつい笑ってしまった。


「はらわたは食べる?少し焼こうか。」

『ああ。』

僕は塩をかるく振ってあるはらわたを亜空間収納にいれてある壺から適当に出してぶつ切りにし、なぜかもともと亜空間収納にはいっていた網で網焼きしてあげた。ちなみにこの焼き網、ミスリル製。

シンハは獲物の内臓も食らう。四つ足の獣や魔獣のだけでなく、こういう魚類のものもだ。僕はほとんど食べないが、魚醤のタネに使えるので、はらわたも捨てない。

かるくクリーンをかけて塩を振り、壺に入れて取っておくのだ。こういう知識も「鑑定」さんに教えてもらった。

美味しいお水もそばに置いて。

ぴちゃぴちゃと水をなめて飲むのもなんだか可愛い。おっきい犬という感じだ。


そういえば、さっきから使っている「クリーン」魔法だが、これは実に不可思議な高度な魔法だ。シンハの話だと、生活魔法としてこの世界の人間ならだれでも使えるそうだ。種火、飲み水確保、そしてクリーン。だが、それにもグレードがあって、同じ種火や水魔法、クリーンでも細かく言えばいろいろのグレードがあるらしい。

たとえば水魔法でも、ほんの少し喉を潤す程度の人もいれば、じゃーじゃーと水道のように水を得られる人もいるらしい。

クリーンは一見すると差がわかりづらいが、やはりいろいろで、簡単なホコリ取りだけから、風呂上がりみたいになる人、浄化というべきくらいに清浄化する人。僕はいずれも最上級らしい。しかも、自分の意識でその加減を変えられる。たとえばクリーンでは、肌の表面の汗やあぶら、不要な雑菌を除去し風呂上がり仕様にするもの、体内の毒を消してしまうもの、自分ではなく部屋を掃除するものなど。念じる強さ、意思や思いの強さと方向性により、発現する魔法の出方が違うのだ。だがある程度パターン化してある。朝は歯を磨き、顔を洗うが、それと同じことをクリーンがしてくれる。夜は風呂あがりのすっきり感を得られるようなクリーンだ。掃除の意味のクリーンも、よく使う。どれも同じ呪文クリーンなのに変化する。実に奥深い魔法だ。

要するに大切なのはイメージらしい。



「さてと。次は畑だな!」

手や道具を清めて片付けると、僕はたちあがった。

今立っているところは洞窟前の広場。端っこ近くに外竈があって、魚はその近くで捌いていた。洞窟とその前にある広場は約5メートルつまり岩三つ分(石段10段分くらい)高いところにあり、森は数段下がったところに一面広がっている。洞窟を背にして右側が西になるが、すでに大木10本ほどの土地を試験的に畑にしていた。しかしそれをさらに拡大し、このあたり一面を畑にしたいという野望を持っている。


僕の『亜空間収納』は本当に破格なスキルで、生きているものは入らないはずなのに、植物は根っこが付いていても平気で入ってしまう。木だってそうだ。入れようと思えば一度地面から引っこ抜いたものなら、根っこごとずぼぼぼっとはいってしまう。

でも大抵根っこは不要なので、「真空切り」で切り倒す。そして葉っぱがついたままで収納。収納後に枝払いや乾燥、材木化などを亜空間内で行える。自分がこうしたい、としっかり思えば、乾燥させることも、板材や角材に加工することもできた。


それから野菜たちだが、魔力との親和性がよく、魔力が入った水と土からの魔力で成長がとても早い。わずか10日間で、植えた種から収穫できるまでに一挙に成長する。

僕は先行して植えたトマトに魔法をかけてみた。理科で習った成長点を意識しながら優しく「育てー育てー。でも無理するなよー。たっぷり美味しい水と魔力をお飲み。」

などと魔力を発揮しながらシャワーのように水やりすると、トマトの苗木は喜んでいるようにわさわさと葉っぱを揺らした。

「(あ、今、なんか飛んだ。きらっと。妖精だな。きっと。)」

そう思う時は、緑に対する魔力放出もうまく使えている時だ。


さて、今は1アールつまり一辺が10メートルくらいの家庭菜園だ。だがテストも終えたので、今日はたくさん木を切り倒す。1ヘクタールつまり100メートル四方に拡張だ。

邪魔な木は切り倒し、収納。また切り倒す。そんなことをやっていたら、あっという間に1ヘクタールの畑地ができてしまった。

うーん。でもまだ広いようで狭く感じる。だって僕はスイカも作りたいし、桃やリンゴ、さらにオリーブを何本か植えて油も採りたい。

ということで、がんがん広げる。

うーん。まだ足りない。小麦も作るとなると。

などと考えながら木を切っていった。

「ふう。まあこんなもんかな。」

『…。まったく。お前の頭には『自重』という言葉はないのか?』

シンハが呆れている。

「ん?」

何かおかしいだろうか。拡張することはとっくに了解してもらっているのになあ。

と思っていたら、さすがにひろびろーとなった「草原」?を見ると、シンハの言った意味がようやく腑に落ちた。100ヘクタールくらいある…。

「はは。まあ、ちょっと予定より広くなったかな。」

と言うと、

『俺は野菜は食わんぞ。』

とぼそり。

畑、広すぎ、と言いたいんだね。ナルホド。

「(ふん。絶対食わせてやる。それも、「なくてはならない」というくらいに。)」

と決意を新たにする僕だった。



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