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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
165/529

165 眷属たちの念話事情

さて次はカーテンかなと思っていると、アラクネ女王のツェル様から念話が入った。

『サキ様、サキ様』

「ん?ツェル様?どうかしたの?」

森でなにかあったのだろうか。

『ヴィルドに家をお買いになると聞きました。』

「ああうん。そうだよ。すごいな。どうしてわかったの?」

本当にどうしてわかったのさ。


『あら、シンハ様とは常々情報交換しておりますのよ。あるじのサキ様のことは、すぐに知りたいのが眷属というものでございますわ。』

「え、そなの?あはは。」

知らんかった。眷属同士が主に内緒で念話してるなんて。

じゃあ僕の日々のあれこれは、森の仲間に筒抜けですか。

じっとシンハを見ると、なにかばつが悪そうに目を背けた。

なんか事情がありそうだ。


『おめでとうございます。これで一国一城のあるじでございますね!』

「あは。そんな大それたものではないけど。でもありがとう。」

『はい!それでお祝いにあるじさま用のベッドをお作りしようと思うのですが。いかがでしょうか。』

「おお!ありがとう。」


ベッドは今屋敷に残されているものを使おうと思っていたので、買う予定はなかった。でも新品は素直にうれしい。シンハが絶対一緒に寝るから、ちょっと狭いかもと思っていたところだ。


『寸法をいただければ、木の土台部分は雄たちが作れます。布部分は私たち雌が作ります。木材はトレントでよろしいでしょうか?』

「木材は僕が提供するよ。適度な乾燥も必要だから。」

『ありがとうございます。サキ様とシンハ様にふさわしい、豪奢なベッドをご用意いたしますわ!』

「あー、なるべく簡素なものにしてね。」

『何をおっしゃいますか!我らのあるじどのにふさわしいものを、ご用意いたしますわ!!』

なんか、すっごくはりきっているので、それ以上は言えなかった。


大量のカーテンも、アラクネさんたちが作ってくれるそうなので、あとで窓の数や大きさを伝えることになった。

彼女たちはお金はいらないということなので、美味しいお菓子と料理をたくさん差し入れることにした。ありがとね。


ツェル様と通信が切れてから。シンハをじとりと見る。

「シンハ。なんか僕に隠してない?」

『べ、べつに。』

「じゃあ、なんで家を買ったことがツェル様にダダ漏れしてるのさ。しかも契約したその日のうちに。」

『あ、あいつらはあいつらなりにお前を心配しているのだ!…特にアラクネは完全に人型にはなれないから、お前が街に居るときは絶対傍にはいられない。だからせめて日々のお前の様子を教えて欲しいとツェルに泣きつかれたのだ。今日は今朝、たまたまあいつから念話が入って、家のことを話しただけだ。いつも報告しているわけではない。』

なるほど。そういう事情か。


「そう…。わかった。今後はなるべくみんなとコンタクトとるようにするよ。」

『わかればいい。…サキよ。』

「うん?」

『皆お前のことが好きなのだ。だから時々は森に行って顔を見せてやれ。できないなら声だけでも聞かせてやれ。いいな。』

「うん。ごめん。わかった。ありがとう。」


そうだよな。せっかく眷属だよーって言ったのに、なかなか会えないもんな。シンハが家を買う話をした時に、ちょっと含みがあったのは、そういうことか。


「あ、じゃあさ、家が準備できたら、みんなを呼ぼうか!」

というと、

『いや、それはしないほうがいい。』

と言われた。

「どうして?」

『街の中にテレポートで連れてくれば、結界に揺らぎがでて怪しまれる。

お前の魔力に溶け込ませて連れてきても、魔力の多い者が急に増えれば、長けた術者にはわかってしまう。

それに、森の強力なモンスターを秘密裏に複数連れ込むのはいいことではなかろう。あいつらもそれはわきまえている。人族のテリトリーに入ろうと思っているわけではない。共存はできないとわかっているのだ。

しかも…お前は自覚がないが、アラクネ、魔蜂、水の女王だぞ。泣く子も黙る「はじまりの森」の三大女王ともいわれる強者たちだ。それにサラマンダや土の一番やらも、相当な強者だぞ。

もう言わなくともわかるだろう。なにかあれば、こんな街など一瞬で吹っ飛ぶ。』

「あー確かに。」


一番強いのは火の妖精王のサラマンダかと思っていたが、なんとあの3人が…。しかも三大女王と呼ばれる存在だったのね…。

『言われてやっと自覚したか。まったく。

…いいか。あいつらにとっては、お前だけがトクベツなのだ。何か予期せぬトラブルが起きて、他の人間に危害を加えてしまうこともあるかもしれぬ。

その時お前は、人間たちよりもツェルたちをきちんとかばえるのか?』

「う。」

『たまに顔をみせればそれであいつらの気が済むのだ。連れてこようとなど思うな。大事件になる。』

「わ、わかった。なるべくこまめに森に行くようにするよ。」

『ああ。そうしてやれ。』

「うん。」


今更ながらに、眷属のお姉様方の偉大さというか恐ろしさを思い知ったのでした。絶対敵に回しちゃ行けない三大タブーだったのね…。サラマンダでさえ3人の女王の前では存在がかすむのか…。

などと思っていると、

「クエー。」

と肩先にサラマンダが現れて一鳴きした。

どうやらシンハに同意、つまり、そのとおり三大女王には自分はかなわない、ということらしい。

「…キミも結構苦労してるんだねぇ。」

と撫でて魔力団子をあげると、

「キュウ。」

と珍しく情けない声を上げてぱっと消えた。

どうやら世の中は人族社会だけでなく、精霊社会も女性は強いようだ…。


まあそんなこんなで、家に必要なものをいろいろと買っていると、もう夕方だった。

「今夜は何食べたい?」

いつものようにシンハに聞いてみる。

『なんでもいいぞ。』

とまたいつものような返事。

商店街を歩いていると、大きな魚が売っていた。

「魚でもいい?」

『ああ。久しく食べていないな。』

「じゃあ、今日は屋敷の庭でバーベキューしよう。魚も肉も焼いて。」

『いいぞ。』

おいしそうな鯖のような魚が売っていたので、それを数匹買い、あとは野菜を買って、シルルの待つ屋敷に帰った。



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