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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
150/529

150 計画変更

僕はさっそくコマドリのロビンを僕の魔力の中に召喚する。

『ゴシュジン、どうした?さっそく呼び出してくれて、うれしい、ウレシイ!』

「(ふふ。…実は君にお願いがある。敵の間者が紛れ込んでいて、急に作戦を変えなきゃいけなくなってさ、野営地を変更するんだ。

予定では東の森の『花咲き丘』だったんだけど。その近くで同じくらいの広さのところ、ないかな。)」

と僕は地図のイメージを送る。

『ああ、あそこね、知ってる知ってる。じゃあ、もうちょっと朝日に近い窪地はどうかな?』

「(水辺はある?川とか。)」

『あるよー。ただ、時々大きなアリが通る。』

「(魔物のアリだね。結界するし、退治してもいいから。じゃあ、そこにしよう。先に見てきてくれる。)」

『リョーカイ。』


そして僕はロビンを胸元でこっそり顕現させると空へと放った。

「うん?」

少し離れた所を歩いていたテオさんがやってくる。

「今の鳥は?」

「ああ、僕の友達。」

「…そうか。」

眷属と理解したみたいだった。

「複数契約を?」

「まあね。」

それ以上は聞いてこない。さすがテオさんだ。

「夕食、楽しみにしていてね。美味しいデザート、出すから。」

「そうか。楽しみだ。」

僕もテオさんも無邪気に笑った。


ロビンに見てきてもらった場所は、野営地として申し分なかった。むしろ敵アジトに近いくらいだ。きっと野営地も敵は急襲するつもりだっただろうから、新しい野営地は結界を強くし、明かりや煙で位置がばれない細工が必要だろう。

光や音はどうにかできるけど、煙かあ。うーん。

今までは焼き肉の匂いとかでワイバーンが寄ってこないように、結界をうんと高くして、匂いや煙をかなりの上空に逃がしていた。

でも、そろそろ別の方法も考えたい。なにかないかな。…あ、できるかも。

上空に亜空間を広げれば、煙がなくなる。よしそうしよう。できるかな。


僕は手元で亜空間収納を二つ出す練習をしてみた。

一つはいつもの、ストック場所。もう一つがまったく新しい亜空間。

うん。できた。新しいやつ。出来てる。

これを結界の天井にくっつけて、煙を吸わせれば良い。

『お前、何をしている?』

「(うん?亜空間をね。複数出せないかと。…おお。3つ目もできた。よしよし。)」

『はあー。相変わらずぶっとんだ奴だな。お前は。』

「(えー、そうかな?僕なんかができるんだから、他の人もできるでしょ。たぶん。)」

『無理だ!普通は亜空間を1つ出すのでもとんでもない。まったく。お前は!』

とシンハ様が呆れかつ怒っている。

「(まあまあ。必要は発明の母って、エライ人も言ってたよ。)」

『そうか。もう驚かんぞ。俺は。』

と疲れている。どうしてさ。あ、そろそろお昼休憩かな。


昼はこの世界では間食扱いだが、冒険者はしっかり食べる者が多いので、朝に2食分の弁当を配ってある。弁当といっても、大きなバゲットに肉とか野菜を挟んだサンドイッチ1つとポムロル1個が一食分。僕やテオのように従魔がいる場合は、従魔の分ももらえている。朝食分は、集合時にシンハにも食べさせている。

朝用と昼用で、サンドイッチの具が変えてあったのはありがたかった。


水は各自だが欲しい人はもらえる。なので樽1つ出しておく。

「なんか、この水うめえ。」

ああ、それ。僕の亜空間収納に水とか食べ物をいれておくと、ちょっと美味しくなるんだよね。魔力を帯びてさ。

「野外だからじゃない?」

と柄杓で差し出されたコップに入れてあげながら、ごまかしておく。


たき火をつくって、パンをあぶりたい人はそこで。

「ゴミはここで燃やしてねー。ポイ捨て禁止ねー。」

と言うと、

「サキ、おめえいつから職員になった?」

とにやにやトビーさんに言われた。

「自分、まだいろいろ初心者なんで。手伝うの、当然っす。」

と大工式の返事をしておく。体育会系にはこれがウケがいいんだ。

「ほう、わかってんじゃねえか。えらいえらい。」

「てへ!」

と、ぼけておく。

「まったく。まじお前が変種のゴブリンキングを仕留めたとは思えんなあ。」

「ああ、それ、マグレなんで。」

「だよなあ。」

「ういっす。」

ということにしておく。


「私はマグレをBになどしませんよ。」

と今度はカークさんにいじられた。

トビーさんはカークさんが苦手なのか、首をすくめて行ってしまった。


火をちょいちょいといじっていると、火の側にいるのはカークさんと僕だけになった。

「いい場所、ありましたよ。」

「…」

「予定地より東にいったところに、窪地があるようです。広さは充分。アジトにも少し近いです。ですがジャイロアントが出ることがあるようです。まあ、このメンツなら問題ないでしょうけど。」

「そうですね。これだけ冒険者がいれば、大抵の魔獣は気配で逃げますね。」

「なるほど。では大丈夫ですね。

特殊な結界が張れますので、もし出てもアリも避けられますし、煙も光も見られずにすみます。音も消せます。」

「まったく。今回はサキ君の常識はずれに助けられてばかりですね。」

「それ、褒めてます?」

「褒めて呆れてます。ただ、こうなってくると総長のカンの良さは並ではないなと思います。サキ君が参加してくれていて、よかった。これは大手柄です。」

「でも約束は、お忘れ無く。」

「ふう。わかりました。なにか別の形で考えておきますね。欲しいものは?」

「ないですね。かっこよくいえば、自由、でしょうか。ああ、夕食のデザート、材料費くらいは欲しいです。」

「それは当然でしょう。まったく。貴方という人は。…夕方6時に既定の場所に集合したら、新しい野営地に移動しましょう。」

「おそらく彼はなんとかして仲間に野営地場所変更を知らせに動くでしょうね。」

「ええ。使い魔を放つか魔道具を使うか。いずれにせよその時点でイサクをとらえましょう。あとは…野営地だったところを襲ってくるでしょうから、それも対応しないと。」


「アジト攻めの決行時間については?」

「アジト襲撃は早めるしかないでしょうね。戦力分散が頭の痛いところですが。」

「シンハによると、あとはあそこまで「魂の汚れたひと」はいないようですので、間者は他にはいないと思います。隊長さんと情報共有をお願いします。」

僕の敵察知機能でも、イサク以外にはシロだった。魂の汚れはまあ、冒険者によっては多少あるのだろう。だがあそこまでヒドイのはいないと、シンハは言う。イサクはあの盗賊兼商人のユイマンよりひどいらしい。


「それはいい情報ですね。ではジョイ隊長にはアジトをお任せして、私は野営地組を指揮しますかね。ああ、もちろん、君も野営地組ですよ。」

「え、でもやばくないですか?アジト組。」

「やばいならますます君は野営地組ですよ。」

「んー。ではさっさと野営地をきれいにして、おっとり刀でアジト組に合流でしょうかね。」

「絶対アジトに行くわけですね。」

「もち!ああ、アジト組の助っ人に、コウモリを出せますよ。結構な数出せます。戦力になると思いますよ。」

「まったく。貴方はまだいろいろ隠しネタがありそうですね。」

「まあ、Bランク冒険者ですから。」

「もうなにを言われても驚きません。ええ、驚きませんとも!」

と会話していると、イサクがゴミを焼きにきた。長くカークさんと話しすぎたかな。


「デザート、期待してますね。」

とカークさん。

「魔蜂の蜂蜜がけですよー。期待してください。」

と言うと

「魔蜂!?はー。貴方ってひとは。…いや、もう驚きませんとも。」

と頭を振りながら行ってしまった。


「デザート、魔蜂の蜂蜜を使っているんですか?」

とイサクに訊ねられた。

あーまた嫌な目つき。

僕は正面からは彼を見ない。火を中心に、向こう側にまわり、興火を突っついている。


「ええ。スライムも使うんですけどね。」

「え!?スライム…食べられるんですか!?」

「ええ。ちゃんと処理すると美味しいんですよこれが。ひんやりしていてさいこーです!」

「はあ…。」

ちらと見ると、微妙な顔をしている。そうか。スライムを食するのは常識ではないんだな。じゃあ、材料のことは伏せておこうかな。

「火のしまつ、お願いしますねー。」

と言って、僕はその場を離れ、水が入っていた樽を片付けに移動。やっぱりあいつの傍には居たくない。


あとは考えないようにして、シンハやミケーネをモフモフして気分を変えた。

ほどなく出発時間となり、イサクは火の始末をいい加減にやって、またジルのほうへと移動していった。ぼくは念のため水魔法のテレポートで最後の火を消した。

まったく。いい加減なやつ。森で火をいい加減に扱う職員なんて、いるのかね。やはりアイツは黒だな、と確信した。



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