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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
147/529

147 事件です! 盗賊討伐に参加せよ

盗賊討伐エピソード開始です!

翌日、家を買う話をするつもりで冒険者ギルドに行くと、なんとなくギルド内が落ち着かない。あちこちで数人ずつ固まって、相談事をしている感じ。

変だな、と思っていると、カークさんが僕を見つけ、カウンターからわざわざ出て寄ってきた。


「おはようございます。」

「おはよう。ちょっと話があります。ギルド長室に来てください。」

と連行されてしまった。

なんだろう。オークションのことかな?と思いながらも、後ろをついていく。なんとなく、カークさんの背中の雰囲気がぴりっとしている。なにか深刻な話だろうか。


「ギルド長、サキ君が来ました。」

「おお、おはよう。入れ。」

「おはようございます。」

「まあ、座れや。」

「あ、はい。」

僕の前にはギルド長と、書類を手にしたカークさんが座った。

シンハはいつもどおり、僕の脇にぺたりと座る。

なんだろう。


「お前さん、今幾つだ?」

は?年齢ですか。

「えと。一応14だと思いますけど。」

「ああ、記憶があいまいではっきりしないといっていたな。」

「はい。」

「嫌なことを聞くが、人を殺したことはあるか?」

「!?いいえ。…えと…アンデッドを昇天させたことはありますが。ダンジョンのやつとか、例の…DPさん。」

「ああ、指輪の。」

ギルド初日に相談した遺品の指輪の持ち主のことだ。


「まあ、アンデッドと人型魔物は経験済みか。なら大丈夫か?」

「?なんです?」

「依頼だ。盗賊団の討伐依頼。」

「!ああ。なるほど。」

つまり人を殺せと。


この世界では盗賊への処罰は厳しい。

盗賊と名乗った時点で基本は死刑。命があっても過酷な鉱山送り。それもほぼ死ぬまでこき使われる。

窃盗だけで人を傷つける前なら、むち打ち後に釈放など酌量の余地ありのこともあるが、盗賊となれば話は別。そう名乗っただけでアウトらしい。


そういった異世界刑罰の基本を思い返していると、

「例のユイマンの正体がわかった。」

とギルド長が言い、詳しい話を、とカークさんに促した。

ユイマンとは、ヴィルドに到着した日、見かけた盗賊兼商人という怪しげな男のことである。


「君が言ったとおり、商人ではあるのだがな。盗品を売りさばく商人。

しかもそのブツの出所も、資金の行き先も、盗賊団というわけだ。

複数の盗賊団と関わっているようだが、特に今王都と此処を繋ぐヴィルディアン街道や、隣の王家直轄領の街道で荒稼ぎしている『龍のアギト』と名乗っている盗賊団の幹部だった。」

「盗賊団の規模は?」

「約50人。だがどうもそれ以上らしい。最近、小さめの盗賊団を吸収し、でかくなったという噂もある。」


「『龍のアギト』は以前から活動していてね。根城の一つがこの辺境伯領内で見つかって、潰したのが1年ほど前のことだ。

それ以降、我が領内ではおとなしかったんだが、どうやら隣の王領に拠点を移したらしい。騎士団が出張ってはいたが、上手くいかず、王家から冒険者ギルドにも要請が来た。

王領のギルド支部が受けたのだが、そっちも大敗してね。うちに助っ人を頼んできたんだ。」

カークさんが説明してくれた。

「…なんか、ややこしいですね。」

「まあな。騎士団はこれ以上恥をかくわけにもいかず、最低限の治安維持に方針転換。主要都市と主要街道しか守っていない。

ほかの街道は無法地帯となっているが、かろうじて王領の冒険者ギルドが維持している。

一週間ほど前に大激突してな。大敗しちまった。だが一時ユイマンと数名の盗賊を捕らえることに成功した。そいつらから、連中のアジトはかろうじて絞り込めた。

ユイマンたちからもっと情報を得たかったが、あいにく秘密漏洩を恐れた奴らに、殺されてしまったがな。」

とギルド長。

「…」


「とにかく、今回はそのアジトに総攻撃を加える。うちには王都のギルド本部からと、王領の支部長からの依頼だ。王領の支部長は俺の後輩でな。後輩が泣きついてきたのを無碍にはできねえからな。

ただ、敵は手強い。場合によっては俺自身が出張るかもしれん。」

「それは最終手段です。貴方は暴れたいだけでしょ。」

「しかしだな。未成年まで行かせるのはちがうだろ。」

「ですから今回は私が同行すると言っているのです。」

「お前さんが此処を留守にしたら、いろいろ回らなくなる。」

「それこそギルド長ががんばるべきことでしょう。」

と二人で言い争いをはじめた。

「あのー!!」

はっとしたように、オトナふたりが口をつぐむ。


「要するに、僕が参加するのが前提ではあるんですね。」

「うーん。それがだな。」

オトナ二人が顔をしかめる。ギルド長は頭をかく。毛がまた抜けますよ。

「実は本部から、できればおまえさんにも参加できないか聞いてくれといわれてな。

急激にFからC、そしてBまであがっただろ?そんなに実力があるなら、って目を付けられてな。未成年だぞって言ったら、でもBとあなた方が認めたんでしょときやがった。あのサディストめ。」

ほう。本部のギルド総長か?敵認定だな。僕はつい目を細める。

「サキ君。殺気が漏れてますよ。本部のギルド総長は、本来はいいひとですから、あまり敵視しないでやってくださいね。」

とカークさんがやんわりと、誰が言ったかばらす。


「でもそんな危険なところに未成年を行かせようという人ですから。それなりですよね。」

と僕は反撃した。

「まあ、ギルドのトップですから。冷酷非情な面はありますね。」

「あいつも未成年のうちからばんばん頭角をあらわしていたクチだからな。サキも同じ人種と見たのかもしれん。」

そうかあ。ギルドトップはスプラッター好き人間かあ。


「僕はその総長さんとちがってあまり血を見るのは好きではないですが。わかりました。参加しましょう。そのかわり。」

僕は二人を見る。

「もし仮に僕がこの依頼でどんな功績をあげても、絶対にランクアップはしないでくださいね。」

と言った。

「何故だ?」

「これ以上エライ人に目をつけられたくないですし。それに、たとえば次に総長さんからの指名依頼とかあっても、断りやすいでしょ?Bなら。」

とにこっとして言うと、

「お前、意外に根に持つタイプだな。」

とギルド長が言った。

「はい!」

と元気よく、笑顔で答えておいた。


今回の討伐の総指揮はSランクのジョイナス・アルガイル。

普段は王都を中心に活動している『蒼天の宴』というパーティーのリーダーで、大剣使いだ。

サブリーダー兼参謀はカークさん。

ギルド長は留守番だ。いや、ヴィルドでヴィルディアス領内に目を光らせるらしい。

冒険者はDからSまで45名。

50名の敵に対しては少なめだが、相手がすべてD以上の実力を持っているとは思えないので、まあ充分な戦力だろう。問題は連携だが。


冒険者はパーティーで行動することも多い。今回パーティーは8組30名。2名パーティーから6名パーティーまでさまざまだ。

残り(カークさんを除いて)14名はソロでの参加。

他に2名程度、冒険者のお世話のために、一応戦力外扱いの職員がつくらしい。

そして未成年は当然だが僕だけだ。

当然僕はソロでの参加と思っていたが、ミケーネを連れたマッケレンさんから、組まないか?と言われた。なんか面白そう。


「シンハ、組んでみようと思うけど、どう?」

『ミケーネとなら組んでもいいが。いいのか?ある程度秘密がばれるぞ。』

「シンハが大きくなることはもうゴブリン退治でばれてるし。大丈夫じゃない?彼なら。」

ということで、お互い戦い方の秘密を知っても、他人にはばらさない、という条件でパーティーを組むことにした。

組むと言ってもそれぞれ従魔もいるし戦い方も違うので、べったり一緒という訳ではなく、ゆるい連携といったところらしい。それならなんとか出来そうだ。


この臨時パーティー結成は、ミケーネが思いのほか喜んだ。

キャイキャイ!と羽根をばたつかせてうれしそうに鳴く。

『ばう。(こら、静かにしろ。)』

とシンハがたしなめるほどだ。

「驚いたな。ミケーネがすっごくうれしそうだ。」

「ふふ。今までソロだったから、仲間ができて珍しいんでしょうね。」

「シンハ君はさすがに落ち着いたものだな。」

「ふふ。内心はどうでしょう。ほら。尻尾が揺れてますよ。」

「うれしいんだな。それならよかった。」

とマッケレンさん。

「俺のことはテオでいい。」

「僕は今まで通りサキで。」

「よろしく。サキ君。」

「よろしく。テオさん。」

拳をこつんと合わせる。良い感じで連携できそう。




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