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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
142/530

142 魔力に溶かす

契約の時、もっと魔力を使うのかと思ったら、そうでもない。シンハによれば、

「契約時の魔力は、相手が大物であればそれなりに必要なのが原則だが、親和性によってかなり変わるらしい。つまりお互いに好意を持っていて、契約したいと願っていれば、極端な話、スライムも妖精の王も、ほぼ同じというわけだ。」

だそうだ。これは以前のシンハの契約者であるエルフの賢者レスリーさんから教えてもらったとのこと。なるほど。それを知っていたから、複数と契約してもいいと言ったのか。

契約したら、皆、念話ができるようになった。言葉が話せない者も、気持ちははっきりわかる。長と契約したら、他の個体とも通じ合うことができるようになった。


せっかくなので、ハカセとハピにも来てもらい、皆と顔合わせをした。

だが種族によって、話すスピードが違うようで、鳥たちや魔蜂たちが早口でなかなか難しいが、いいたいことはよく判るので大丈夫そうだ。

魔羊や魔鶏は、食肉でもあり、複雑な心境だが。それでもいいと彼らは言った。

どうやら達観しているようで、他の魔獣に食われるよりは、僕やシンハの血肉になるほうがいいと、思っているようだ。

だが今後はちょっとこっちから狩ることは難しそうだ。こちらの精神的に。

シンハの話だと、契約したヤクーやヘム率いる群れ以外も森にはたくさんいるという。

まあ、間引きのためにも今後は悪いがヤクーやヘムたち以外の群れを狩らせてもらうことにしよう。


「とにかく、みんな、今後ともよろしくね!」

「「よろしく。サキ。」」

「「シンハ様も、ヨロシク。」」

メェー、ピイピイ、コケッコと皆賑やかで楽しげだ。


「ふう。やれやれ。朝食にしようか。」

『そうだな。腹がすいたぞ。』

「ごめんごめん。こんなことになるとは思ってなかったよ。はは。」

僕も複雑な心境で、朝食にすることにした。


せっかくなので、みんなに味噌焼きを披露。

肉を食べられるメーリアやツェリ様、ビーネ様、ハカセ、ハピ、そして妖精たちには味噌焼きを。

ほかの子たちには味噌パンや味噌入りドレッシングのサラダを。

ヘムから無精卵を提供されたので、今度はそれで甘い卵焼きを作った。

あとは開発したてのフルーツ入りミルク寒天。

皆美味しいと平らげた。特に甘味大好きな妖精たち!

いろいろ大量に作っておいてよかった。


眷属達といろいろ話し、眷属になると僕の魔力に溶けることができるとか、好きなときに遠くにいても召喚できるなどがわかり、試しに、と皆を一回ずつ魔力溶かしと召喚をしてみた。

ちなみにシンハも魔力に溶けたり召喚したりができるとあらためて認識した。

「なんか、自分の魔力に誰かが溶けてるって変な感じ。」

と言うと、

「あら、私は気持ちよかったわ。まるで『サンクチュアリ』にいるみたいで。」

とメーリア。

「サンクチュアリ?」

それは、空間魔法の一種で、亜空間収納とは違い、生き物が入れる亜空間、というか、もうそこは異世界なのだそうだ。

そういえば、そんな世界を開発する元勇者のことをラノベで読んだ記憶がある。

「生物を入れられるって、魅力的だね。」

「きっとサキもそのうちできるわ。だってサキだもの。」

「そうよね。」

「「ねー。」」

どうしてみんなそこで肯定する?


「サンクチュアリ、楽しみね。そうしたら、サキの中に世界樹を植えたりも出来そうじゃない?」

「あら、いいわねえ。いっそのことこの森まるごと入れちゃうとか?」

「でも魔獣はほどほどがいいわあ。」

「そうね。」

などと勝手に盛り上がっている。

森を入れるって、それはないからね、ないから。


ハピとハカセ、そしてコマドリのロビンとカッコウのクルックからは、知り合いがヴィルドを縄張りにしているから、使ってくれていいと言われた。

ハピはハピの子分たち、というか眷属?相当の数いるらしい。

ハカセは甥と姪がいるらしい。

ロビンはいとこたち。

カッコウのクルックは娘たちとのこと。

「適当に使ってくれていいホー。魔力をちょっとあげればイチコロホー。」

おいおい。

『ハカセ。サキの魔力のことは、あまり広めるな。変なやつに狙われても困る。皆もだぞ。』

『もち。わかっているホー。口は堅いやつばかりホー。』

『キキ!おいらの仲間、すっごく多いから、使いではあるよ。キキ!おいらたちは果物がいい。キキ!』

そう言ったのはコウモリのハピ。

「わかった。覚えておくよ。」

『おいらのいとこたちは情報屋。街の噂ならおてのもん。おいらたちも、お礼は果物がいい!』

コマドリのロビン。よくシンハがお使いさせてたな。

「わかった。いざという時は頼らせてもらうよ。」

『娘達もおしゃべり好き。コマドリたちとも仲が良い。王都の情報も持っているゾイ。お礼はナッツがいいゾイ。』

これはカッコウのクルック。なぜか語尾にゾイがつく。

「ありがとう。そのうちお世話になると思う。よろしくね。」

といろいろと有意義な情報をくれた。

妖精たちは、いままでどおり、基本的には此処で暮らす。

僕が呼べば、シュッとヴィルドに転移できるそうだ。

妖精は、それぞれの属性のあるところ…たとえば火妖精は火の中、緑妖精は植物の傍、土妖精の足元の土、というように、それぞれのところに呼び出すことができるそうだ。


特に名前持ちは、指名で呼べる。直接契約していないトゥーリも、僕が呼べば来れるようだ。もちろん、それはサラマンダに事前に承諾をもらったけれどね。

グリューネのためにも、時折呼んであげたい。


「えーと。そろそろ僕たち、街に戻りますー。また来るねー。」

「え。もう?」

「あん。もっとサキとおしゃべりしたいのに。」

「また来るよ。今度はヴィルドで見つけた美味しいもの、持ってくる。またねー!」


そんなこんながあって、町の近くの藪まで転移すると、とっくに昼を過ぎていた。

せっかく森に行ったので、ベリーの実なども収穫してきた。魔鶏ヘムたちからは帰りに卵をまたもらったし。ビーネ様たちからはハチミツ。

そしてアラクネ女王のツェル様からは、そろそろ本気で人間たちと商売をはじめたいと、布のサンプルを持たされた。

ふう。


『上手く戻ってこれたようでなによりだ。』

「うん。転移は上手くいったね。」

『なかなか刺激的な里帰りになったな。もてる男は辛いな。』

とりわけアラクネ女王のツェル様と湖の精のメーリアのことだ。

「うっく。からかわないでよう。モテてるのは、魔力のせいでしょ。」

『それだけでもなさそうだがな。』

とぐるぐるとシンハが笑う。


転移魔法陣については、もう、魔法陣を描いた布さえ不要だなと感じた。

魔法陣の呪文はすでに頭に入っている。

意味もしっかり理解しているからだ。

それに、この世界樹の杖が、僕の魔法の能力をかなり向上させてくれる。

「たぶんもう、この布なしでもできると思うよ。」

『ほう。たいした自信だな。』

「うん。そういうことは、なんとなく判るものだよ。魔術師だからね。」

『ふふ。ようやく魔術師らしくなってきたな。』

「まあね。」


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