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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
140/530

140 夜の見張り

その晩、僕は久しぶりに洞窟の外で夜空を見上げた。

満天の星が黒い森に囲まれた天上に見えている。

風は微風。

森の香りがする。


今夜は外でバーベキューをしたので、大きめのたき火用の竈を作っていた。

もちろん、変な魔獣が寄ってこないように、ちゃんと結界石を周囲に配置し、匂いや煙はかなり高い空まで飛ばして拡散させる工夫がしてある。

僕の隣にはシンハ。

たぶんこれほど安全な場所は、町中にもないだろう。


ぱちぱちと木がはぜる音。

ヒバの枝を燃やせば、その葉っぱのとおりに燃えて、実に美しい。

煙も一杯でるけれど、僕はこれが大好きだ。

まるで火の枝。

これを魔法で再現できないかな、などと考えている。


たき火の中で火の精のサラマンダが姿をみせた。

サラマンダもこのヒバの火の枝がお気に入りなのだ。

枝を行ったり来たりして遊んでいる。

シンハは疲れたのか、たき火の傍、僕の隣で目を閉じている。


「ねえ、シンハ。」

僕はシンハの頭を撫でる。

『ん?』

眠そうなシンハの声。

「此処に飛べるようになったから、これからは度々帰ってこよう。また此処が誰かに荒らされるのは悲しいし。」

『そうだな。見張りなら、魔蜂でも小鳥でも眷属にして、見張らせればいい。』

「なるほど。そういう手があるか。って、どうやるのさ。方法知らないよ。」

『アカシックレコードに聞けばいいだろう。今のお前なら、それくらい知ることができよう。』

「まあ、そうかもしれないけど。」

パチパチとはぜるたき火に、また一本、僕はヒバを入れた。

ぱああっと火の枝ができ、やがて崩れていく。

サラマンダが喜んで、枝をするすると渡って、またたき火の奥へと引っ込んだ。


「小鳥だと夜に見えないよね。ああ、夜はフクロウがいるか。コウモリとかも。」

『ああ。複数の種族の長とだけ契約すれば、あとはその長が差配するだろう。見張りなどはたやすいだろうて。』

「でも、代償はなに?僕があげられるのは…魔力くらいかな。」

『それが魔獣にとっては一番のごちそうだ。特にお前の魔力は。』

「そうなのか。…じゃあさしあたって…フクロウとコウモリ?あとは昼間の小鳥たちだな。」

『フクロウの長は博識だから、あいつに種族選びを丸投げしてもいいかもしれん。コウモリは数が多いから、契約できたらいろいろとメリットは大きいな。』

「なるほど。じゃあ、とりあえず…フクロウ博士を呼ぶか。」

『おう。』

むくっとシンハが起きて猫のような背伸びをする。爪がむにゅっと肉球からのびて、さすがに王者っぽい。

フクロウ博士とは、時折シンハの縄張りにやってきて魔鼠を食べていく白い魔フクロウ。

シンハや僕とも仲は悪くない。マンティコアとの戦いの時には、見張りみたいなこともしてくれたしね。

僕がピウィ、と指笛を吹くと、ほどなく近くの枝でホウ、ホウと返事があった。

「フクロウ博士。こんばんは。お久しぶり。」

ホウ。

「ちょっと頼みがあるんだ。」

僕は近くの枝に止まった白いフクロウに、かくかくしかじか、とまるで人に頼むように、話をした。


「で、見返りは僕の魔力。どう?悪くないと思うんだけど。」

しばらくして

ホウ、とフクロウは啼いた。

そしてばさばさと近寄ってくる。

僕は手甲の上に肉片を置いて誘った。

するとその肉めがけて博士が飛んできて止まった。

手甲をしているので、するどい爪も痛くない。

意外と重いぞ。博士。


「よーし。契約だぞ。汝、我が眷属となるか?」

ホウ。

「オーケー。君の名前はハック。でも普段はハカセと呼ぶよ。よろしくね。」

ハカセがぴかっと光った。

『ヨロシク。サキ。』

おう。念話もできるぞ。さすがだ。ハカセ。

契約のしるしに、少し魔力をあげると、目を細めて喜んでくれた。

『サキの魔力、美味い。』

「気に入ってくれてなによりだ。…シンハとも念話できるかな。」

『できている。眷属同士もできるのだ、ホー。』

とハカセ。以下もハカセとの会話だ。

「でもハカセが知能が高いからできるんだよね。」

『まあな。』

『単純な会話なら、我ほどでなくともできるぞ。コマドリとかでも大丈夫だ。』

とシンハが教えてくれた。

「そうなのか…。ね、あとコウモリの長と契約したいんだけど。」

『それなら知り合いだ。さっそく呼んでこよう。ホー。条件もわしから話してみよう。ホー。』

「助かる!たのんだよ。」

ホウ、と言って、ハカセは飛んでいった。

『ほらな。お前ならあっという間だと思っていた。』

「ふふ。こんなに上手くいくとは思わなかった。」

『あいつは昔から我々を知っているからな。親和性があったからできたのだ。』

「なるほど。コウモリくんは、どうかな。」

『まあ、大丈夫だろう。ハカセの推薦だからな。』


ほどなく。

フクロウのハカセは一羽のコウモリを連れてきた。

意外に大きめな奴だ。胸元がV字型に黄色い。

『同意はとれている。さっそく契約を。』

「判った。こちらへ。」

僕はまた腕に止まらせる。


「僕はサキ。汝、我が眷属となるか?」

キキィ!と啼いた。

「オーケー。では君は…ハピと名付けよう。幸福という意味からとった名前だよ。コウモリは僕の知っているある国では幸福の象徴なんだ。」

地球で、中国のことを思い出して言った。

コウモリのハピがぴかっと光った。

「よろしくね。ハピ。」

『ヨロシク。サキ。キキィ!』

おお、また念話が通った。

契約のしるしに魔力を与える。

『う、うまい!フクロウ殿の言ったこと、本当だった。』

『そうだろう?』

喜んでくれてなによりだ。

『あとは明日。明るくなってからだな。』

「そうだな。ではみなさん、僕は寝るよ。見張りは今は特にいらないよ。僕たちがいない時にお願いね。おやすみ。ハピ、ハカセ。」

キキ。ホウ。

「シンハはまだ此処にいる?」

『いや、お前が寝るなら、俺も寝る。』

「うん。じゃあ寝床、行こうか。ふわわ…眠すぎ。お風呂は明日かなー。」

僕は自分とシンハにクリーンして、寝床へ向かった。


シンハとサキの様子を物陰からこっそりうかがっていた妖しい小さな者たち…。

「オイ、見たか。」

「見た見た!」

「こりゃ大変だ。」

「みんなに知らせないと!」

「うんうん。行こう!」


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