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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第一章 はじまりの森編
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14 塩の旅の帰路 ワイバーン狩り

岩塩採取を終えたあと、僕はいずれラーメンを作って食べるという野望にあらがいがたく、隣の丘でその材料もせっせと採取した。

当然、帰りも一泊野宿である。

ナトロンとトロナ鉱石を相当量…おそらく1トンくらいは…採取を終えた後、まだ明るいうちに野菜や果物、木の実、キノコなどを適当に採取し、ついでに魔兎を2羽狩った。夕飯には約束どおり、贅沢に大魔鶏と蛇肉、シャケ入りシチューと、狩ったばかりの魔兎の腿肉を塩とニンニクとバジルを効かせて焼き、思いついたポムロルソースをかけて食べた。ポムロルソースは即興で作ったソースだったが、これはかなり美味かった。シンハも気に入ったようだ。


翌日12日目、午前中のことだった。

僕は前を走るシンハになんとか食らいついて、同じ速度で走っている。結構早く走れるようになった。

僕が10日余り暮らしてみた「はじまりの森」は、昔テレビやネットで見たヨーロッパの森のように、下草の丈が短くて視界が良好なことが多い。そのためかなりのスピードで駆け抜けられる。シンハも藪を漕ぐのは嫌いらしく、たとえ藪があっても、じょうずに獣道を見つけてするすると森の中を走って行く。僕もシンハのシッポを目印にシンハのあとを追って走っていた。一応索敵もしながら。ちょうど森の木々が途切れ、草原のようなところにさしかかった時だった。急に後の上の方に魔力のかたまりを感じた。と次の瞬間、頭上が暗くなった。

「うん?」

立ち止まって見あげると、ワイバーンが太陽を遮って僕たちの頭の真上を飛んでいくところだった。結構高度はそれなりにある。

ワイバーンは、一度は僕たちの上を通過したのに、何を思ったか、途中で方向転換して再び僕たちに向かって今度は低く飛んできた。今度ははっきりと僕たちを見ている。

ウウウウ!

シンハが低く唸る。

「!やばい、よね。」

と僕が言った途端だった。

バウバウバウ!!!!

シンハが殺気むきだしでワイバーンに向かって吠えた。

大抵のワイバーンはシンハに吠えられたらひるむ。それだけシンハはやはり王様なのだ。

なのに、そいつはひるむどころか、空中で止まりバッサバッサと翼の音を立てて殺気を放ってきた。そして、そいつの喉元に、魔力が急激に集まるのを感じた。

「もしかして!」

バウ!!

避けろ!とシンハに言われたような気がした。

途端にごぉぉぉぉ!!っと音がしたかと思うと、火柱のような炎が、僕らに向かって襲いかかってきた!

龍種特有の攻撃、ブレスだ!

僕は咄嗟にブレスから逃れつつ、氷の盾をバリアとして生成していた。

無意識だったが、実にうまくいった。

氷の盾に阻まれて、ブレスは一気に威力を無くし、盾はジュウウと水蒸気を発して炎を完全に防いでいた。

しかし周囲の緑はそれなりに被害が出ている。

「あっぶねー。森で、火で攻撃するなんて、非常識野郎だな。」

と僕がぼやく。

森が火事になったらどうするんだよ。

と、ワイバーンが低空飛行しながら僕の頭上を通り過ぎる。だが攻撃はブレスだけではなかった。

バウ!

またシンハに吠えられた。

通り過ぎながら、尻尾で攻撃してきたのだ。

「解ってる!」

僕は素早く飛び退き、木の陰に伏せ、やり過ごす。

どうやら本当にこの体も動体視力も「ぱねぇ」ようだ。

難なく尻尾攻撃も躱した。

だが逃げてばかりでは埓があかない。

このままではだめだ、と思うと同時に、すでにシンハは飛び上がり、奴の胸元にかみついて攻撃していた。

堅いだろうに。ああ、そういえば龍種の急所は逆鱗とかいう喉元の鱗のところだったか。さすがだね。っと感心している場合ではない。

このワイバーンはハグレだろう。群れのボス戦争いに敗れたか、ボスに追い出されたかだ。

ならばしつこく獲物である僕を狙ってくるだろう。ここで倒すしかない。倒せるのか?

と、ここで魔法を一つ思いついた。

「シンハ!魔法を使ってみる!適当なところで離れて!」

と、まだワイバーンにかみついたままで飛んでいるシンハに向かって叫んだ。

シンハをくっつけたまま飛んでいたワイバーンは、シンハを大地に激突させようと低空飛行した。シンハはすんでの所ですたっと飛び退く。きっとこういう戦い方に慣れているのだろう。見事だ。ワイバーンの胸からは結構な量の出血がみられ、血をぼたぼたと落としながら低空飛行している。いずれ出血多量になるだろう。さすがシンハだ。でも手負いの獣ほど凶暴なものはないともいう。たしかに殺気立っている。

「いでませ!いかづち!!」

と自分としてはありったけの魔力を天に向けた指先に集め、振り下ろした。

ピカッ!!ズガァァンン!!

とんでもない轟音と目を開いていられない光が天から降りてきて、奴を打った!

GUGYAA!!

怪獣のような悲鳴を上げて奴は雷に打たれ、もんどり打って地に落ちた。

すかさずシンハが駆け寄って喉元にかみつく。

僕も奴に駆け寄り、その胸元、心臓に狙いを定めて魔力で強化した竹槍を渾身の力を込めて突き立てた。

すると数秒後、ふわわ…と光の粒が立ち上った。

やった!


僕はワイバーンを倒した。

雷撃を使ったあとは、ごっそり魔力が減った感じはしたけれど、今は逆に、経験値だろう、全身に外側から何かが入ってくる感じがある。くらりとめまいがする。それほど急激に大量の経験値が入ってきているのだろう。

冷静になると、ワイバーンくらいなら、あの半分の威力で倒せたな、と今では思う。

それでも魔法は万能じゃない。

美味いシチューは自分で作らないと、結局できない。

ためしにワイバーンを一度亜空間収納してみたが、まったく問題なく収納できた。

ただし亜空間の中で皮と肉と内臓と骨に分解した時は、さすがに魔力が減るのが判った。(できたけどさ!)

ちなみにワイバーンの皮は、表面はちょっと焦げたけど、軽鎧とか盾とかを作るには問題なし、という鑑定結果が出た。むしろ堅牢にするためにわざと表面をあぶるという加工をすることもあると、鑑定さんが教えてくれた。

明日からは獲物の皮のなめしを、亜空間収納で実験する。

大量でなければ、どうやらできそうな気配。

まずは魔兎から、かな。

ワイバーンは…まだずっとあとになるだろうな。


塩の旅から帰ったのはその日の昼過ぎ。

僕は急激に上がった経験値のせいで、今は元気の塊だった。魔力もすでにマンタン。しかもかなり総量もあがっている。

何かしないと夜に寝られないくらい元気だ。

そこで、明日にでもしようと思っていたことを今日してしまうことにした。

畑作りだ。

洞窟の前の一段低くなっている日当たりのよさげなところに、畑を作ることにしていたのだ。

畑なら水はあまり与えないで済みそうだし、いざとなれば井戸を掘ってもいい。水脈が何処を走っているかは把握している。

木は風魔法で切り倒す。亜空間収納の口を開くと、ずぼぼっと亜空間に入ってくれた。残った根っこは火魔法で焼く。地中の浅い根はすべて焼いたので、焼き畑農業みたい?

もちろん、火の始末はきちんと水と氷魔法で処理。

森の木はかなり太いので、10本も倒せば、かなりの広さの土地が確保できた。

そこを土魔法で耕す。不要な石も亜空間収納に入れつつ、もっこもっこと掘り返す。採取した石はあとで結界石や建材にするつもり。土は黒くてかなり肥えている感じだ。

そこに、キープしておいた種芋とか、根っこごと採取しておいた各種野菜の株を植える。ジャガイモは採取しておいた健康な芋を植えた。

種を採取したものは種を植える。

いずれもまだテストなので、ほんの少しずつ植えてみている。

無事に実ってくれよ。


夕飯はさっそくワイバーンのステーキ。魔素が多いからか、とにかく美味だった!焼いている間、シンハがものすごくそわそわしてシッポを振っていたから、大好物だと知れた。あとは大切に保管だな。これはお祝いメシにしよう。


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