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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
137/529

137 11階層 ハーピー階

11階層。

階段を降りると

「きゃあ!」

という悲鳴。

「む。」

僕たちは無意識に声のほうに走った。


藪をかき分けて草原に出ると、なんと「チーム暴風」のウィリーさんたちではないか。

メグさんが腕を抑えているから、怪我をしたのはメグさんだろう。

敵は、ハーピーだった。

おお。ハーピーもはじめて見た。

森にはいなかったな。

いや、これも黒龍のせいで引っ越したのかも。


僕は今にもメグさんに襲いかかろうとしていた一匹に、電撃をくらわした。

「!」

「大丈夫ですか!?」

僕が走り寄る。

シンハはそのままハーピーを蹴散らす。

「君はっ!」

「サキ君!どうして此処へ!?」

「え?普通に初階層から来ましたよ。真面目に。」

ハーピーはあきらめて逃げ去ったようだ。

シンハの威嚇はぱねえからな。


「だって、早すぎ。普通は此処までくるのに、何カ月、いいえ、何年もかかるのよ。このダンジョン、ハードだから。」

え、ハードなの?これで?

と思ったが。

「あはは。シンハが強いんで。助かってます。」

とごまかした。


「ああ、君、変異体のキングゴブリンを倒したんだったね。」

と納得してくれた。

「ええまあ。…それより…。メグさん、治癒魔法、できますか?」

「うん。でも今もう魔力なくて…ちょっとつらいわ。」

「じゃあ僕が。」

と僕が手をかざして腕の怪我を治す。ついでに肩が脱臼していたので、ちょっとカームして、ハイヒールしながらぐぎっと治してあげた。脱臼ならハイヒールでいけるから。

「!…あら、痛くない。肩治すの、結構痛いはずなのに。」

「動かしてみて?…大丈夫?」

「ええ。治ったわ。ありがとう。」

「良かった。」

にこっと笑うと、メグさんもほっとしたように笑った。


「すごいのね。強いだけじゃなくて、そんな器用なこともできるなんて。ねえ、うちに入らない?」

「え。」

「そうだな。君がいてくれると、心強い。」

「あー。すみません。シンハがいろいろわがままなので。ソロがいいんです。」

「あらそうなの?残念だわ。」

おい、背中を鼻でぐいぐい押すなよ。嘘も方便だろ。いや、わがままは本当か。


「…ところで、どうする?この先。一旦戻るか?」

「そうしてほしいわ。私、もう魔力ないから。」

としかめっ面で並ポーションを飲んでいる。不味そう。

「了解。今日はこのくらいにしよう。」

「じゃあ、僕たちは先に進みますんで。また。」

「おう。気をつけろよ。此処のハーピーは男を攫うぞ。」

「え。」

「あー。確かに。サキ君美形やから、危ないでー。」

「…。帰ろうかな。」

「シンハ君、ちゃんとサキ君を守ってあげてね!」

「ばう。」

「ふっふっ。まあ、進むかどうかの決断は君自身でしろよ。俺たちは先に失礼する。」

「またねー。」

「さようなら。」

彼らは手を振って笑顔で戻っていった。


「…。なあ、シンハ、ハーピーは男を攫うのか?それって、ゴブリンみたいな意味?」

『男を孕ませることはできないが、男に孕ませてもらうという意味では、ゴブリンと同じ意味だな。』

「うっく。森にハーピーいなくて良かった。」

『ある意味、男には極楽らしいぞ。ハーピーは媚薬魔法を使うから、心地よく犯してくれるだろうし、子種さえもらえば解放してくれるから、ゴブリンとは違うぞ。』

「やーめーろ。僕は普通に人族の女の子としたい。」

『それは種族偏見ではないか?』

「いや、だから、ハーピーに恋したらそれはそれでいいかもしれんけど。無理強いはやだ。」

『くくく。お前をからかうのは楽しい。どうした。美少年。真っ赤になって。』

ちぇ。さっきの仕返しか。


「うるさい。今夜メシ抜きにするぞ。」

『おっと。それは虐待というのだぞ。』

などと、言いつつ進んでいると、

ギャーギャー、とハーピーたちが僕の頭上で騒ぎ始めた。


「むう。」

僕はシンハを真似て、威圧をかけてみた。お前らのせいだからな、と八つ当たりだ。

魔王になった気分で。

すると、ハーピーたちが真面目に恐がって、それからは寄ってこなかった。

楽でいいな。

『ほう。お前の威圧も、まんざらではないな。いつもそれくらい真面目に仕事をするとよいのだが。』

うるさいな。

そんなことをしていると、ほどなくボス部屋まで来た。

えー。雑魚敵ってハーピーだけなの?


ボスは…でっかいハーピーでした。クイーンハーピー。

下から見上げると…胸でかっ。なにカップ?

「シンハ。出番だよ。」

『まったく。手抜きだぞ。』

といいながらも、ボスが風魔法でこけたところを喉笛に噛みつき、あっという間に戦闘は終わった。

ボスハーピーは黄色の魔石と、美しい金色の羽根を落として消えた。

ほう。これはなんだ?


鑑定さんに聞くと

「ボスハーピーのドロップ報酬「金色の羽根」。ひたすら美しいだけの羽根。羽根ペンの贈答用として王侯貴族に人気。(ただし、隠し機能として、高レベルの魔術師がこの羽根に魔力を流しながら魔法陣を書くと、間違っても自動修正され、正しい魔法陣が書ける。)」

となっている。

どうやら、僕の鑑定はレベルが高いので、隠し機能まで見れたらしい。


「さすがジオのダンジョン。面白いものがたくさん出るなあ。」

と僕がつぶやくと、

『いや、明らかにこれはお前が異常だぞ。国宝クラスが出過ぎだ。』

とシンハにぶつぶつ言われた。

「そなの?やっぱり、世界樹のご加護かなあ。」

『ちなみにお前のステイタスに、運に関する記述はあるか?』

「あるよ。ギルドの石では表示されなかったみたいだけど、隠しスキルの一つに『強運』というのがあるね。」

『それだな。加護はどうかわからんが、直接作用しているのは、その『強運』が関係しているのだろう。』

「へえそっかぁ。ステイタスって、奥深いねえ。」

『まあ、いいスキルがあって、よかったな。』

「うん!」


『ところで。ワイバーンまであとどれくらいだ?』

「それなんだけどさ。今日は戻らないか?」

『何故だ!泊まるといったではないか!まだ時間も早いだろう。もう少し進めておくべきだ。そうでないと明日もワイバーンまでたどりつけぬぞ!』

「それなんだけどさ。僕、思いついちゃったんだけど。」

『ん?』


数分後、僕たちはダンジョンの一階層に戻っていた。

受付で手続きをしてダンジョンを出る。

乗合馬車は行ったばかりらしく、いなかった。

僕たちは徒歩で町まで戻る「ふり」をする。

そして受付から見えなくなると、脇の藪に入った。


「で、実験開始。」

『おう。』

僕は魔法陣の布を取り出し、地面に引いた。シンハと一緒に乗る。

そして

「エヌ・レッセ・ヤーフェ…○△◇…オムニス。」

次の瞬間、僕たちの姿はそこから消えていた。



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