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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
133/529

133 ダンジョン入り口~地下3階層 転移陣

さてと。

僕たちも行くか。

初回の者は500ルビを払って受付をすると、入山カードみたいなものを発行されたり、ギルド職員から注意事項を聞かされたりと、いろいろと時間がかかるものだった。

職員からの話によると、各階層のボスを倒すと、階段が現れ、次の階層に進める。


最初の帰りの魔法陣「転移陣(帰路限定)」は、2階層から3階層への階段を降りたところつまり3階層のスタート地点に出る。ただしこれは3階層の特別仕様で、ダンジョンの入り口広間に帰るだけの転移陣だ。

あとは5階層、10階層…と5階ごとにしか「転移陣」が出ない。そして5階層ごとの「転移陣」の場合は、一度踏破している場合は、念じればどの階層にも行ける。

つまり、たとえば15階層までクリアしていれば、6階層とか11階層にも飛べるというわけ。

しかし、あくまでも行けるだけで、「転移陣」は5階層ごとしかないから、すぐに帰りたいなら「転移陣」のある3階、5階、10階、15階まで戻り、「転移陣」に乗ってダンジョン入り口へ、と念じないといけない。

あとは普通に、ひたすら戻り続けるしかない。


まだ「転移陣」があるだけ優しい仕様だそうだ。

全くないダンジョンでは、深く潜れば潜るほど、帰りも難しくなる。

「転移陣」魔法を込めた「転移石」も売っているが、一度きりの使い捨て。なのに高価。しかも入り口に戻ることしかできない仕様とのこと。


「ではお気をつけて。無理は絶対にしないで、危険と思ったらすぐに『転移陣』で入り口広間に戻ってきてくださいね。最初のものは3階層にありますから。」

と言ってくれた。

ふと振り返ると、僕たち以外には初回者はいなかったようで、誰もいなかった。

しんがりか。

それもまたいいかもしれない。

などとポジティブ思考をしつつ、僕たちはダンジョンの中に入る。


まず何もない広間があった。

いかにも迷宮ですと言わんばかりの古城の広間のようだった。その中央に地下へ続く階段。

僕たちはその階段を降りていった。


初階層。つまり地下1階だ。

ここはちょっと荒れた感じの草原。遠くに赤茶けた荒野と、その奥に少しの林が見える。

ここの魔物はスライムが中心だ。

ボスもスライムキングだという。

「いろいろな色のスライムがいるんだって。」

僕は受付で渡されたパンフレットを見ながら言った。

『毒スライムだけは気をつけろ。顔を溶かされたくなかったらな。』

顔だって手足だって、溶かされるのは嫌だよ。

ダンジョンには妖精はあまりいないと聞いているが、それでも幼体がふよふよ飛んでいたりする。

環境によっては居るんだな。


初階層と2階層は、FとEランクにおすすめの階層。

特に初階層はスライムだけなので、よほど運悪くボスに会わなければ、走って戻ってこれるらしい。林のところで少し薬草も採れるようだ。

僕は長くなった髪を束ね、きちんと戦闘態勢だ。

最初は緑の普通スライム。

クナイで核を一発破壊。

核の中にある薄緑色の小さな魔石と体液をゲット。

続いて数匹の青スライム。

これは薄青の魔石と薬効成分のある体液だ。

さらに赤いスライム。火を吐くが、ただそれだけ。

赤っぽい魔石と火属性の体液ゲット。

スライムの体液は、全部薬や化粧水の成分になるのでゲットだ。実験に使う予定。


紫色のスライムが出た。

「毒だね。あれ。」

『ああ。』

ビュッと毒を飛ばしてきた。

なるほど。少し今までのとは違う。攻撃力が高い。

もちろんクナイで核を一発。

でも、クナイを一本駄目にした。

『魔法で仕留めるべきだったな。』

「そうだね。失敗失敗。」

薄紫の魔石と毒もゲット。

とにかく、キングスライムを求めて先へ進む。


『らちがあかない。サキ。乗れ。』

「ふふ。やっとその気になってくれたか。良かった。僕もそろそろ言おうかと思ったところだよ。」

僕は少し大きくなったシンハにまたがった。

するとシンハはびゅんびゅん飛ばす。

此処は荒野にちょっと林があったりするだけだから、あまり邪魔になる木がないので、走り放題だ。

「いた!あそこだ。」

『ああ。』

僕は適当な場所でシンハから降りると、まずキングスライムを観察した。

これはたびたび倒されているが、その都度さまざまな属性のキングが湧いているようだ。今回は毒。

これはキングの中でも一番やっかいだと言われている。

『ち。はずれだったか。』

「そうかなあ。僕は『当たり』だと思ったけど。」

毒は薬の裏返し。いろいろと研究材料として有効なのだ。


『ではサキのお手並み拝見といこうか。』

「判った。まかせといて!…豪雷!」

ドッカーン!ガラガラガラ!

大音響と共に、落雷がキングを襲った。

水溶性の体液を持つキングは、その一発で核が破壊され、動かなくなった。

「ちょーっと強すぎたかな。」

『ふむ。つまらん。』

「まあ、そう言わないで。お。これは珍しい毒だよ。たぶん、トリカブト系だな。」


僕は嬉々として鼻歌交じりに毒液を大量に採取。あとは普通は放置だが、この猛毒を誰かが得るとろくなことにはならないので、すべて『分解』して無害にして処分した。

「うん。これでよし。お、薬瓶がドロップしてる。上級の毒消しだな。まあまあかな。」

ボスを倒すと、魔石や体液以外にも、なにかドロップすることがあるらしい。

宝箱が出ることもあるという。

『しかし…。毒スライムを嬉々として討伐、解体か。狂気の沙汰だな。』

「ん?なんか言った?」

『いや、なんでもない…。サキ。あいつの向こう側に、階段が出たぞ。』

「おお。予想どおりとはいえ、ワクワクするねえ。」

僕たちは初階層をクリアし、地下2階へと進んだ。


2階層。

荒野と洞窟エリア。

雑魚敵はスライムと吸血コウモリだった。

もちろん楽勝。

吸血コウモリは赤黒い魔石と羽根が報酬。羽根は薬や錬金術の材料になる。

ダンジョン内では魔物の死体を放置しても、いずれ地面や壁に吸収されてしまう。そのため、もし倒した魔物の肉や骨が欲しいなら、すぐに解体するか、亜空間収納に入れないと消滅する。

解体に時間が掛かるなら、とにかく地面に接しないよう、布の上に魔獣の死体を置くのがポイントだそうだ。

此処のボスはでかいコウモリのキングコウモリ。また雷で仕留めるのはつまらないので、長剣でその羽根をぶったぎり、心臓に剣を通して終わり。

報酬は魔石に鋭い爪と牙、そして大きめの羽根。それからドロップした報酬は「幸運のお守り」。たしか中国ではコウモリは福をもたらすとか。こっちの世界でも福を呼ぶのかなあ。

2階層もなんなくクリア。


3階層。

階段を降りきったところの脇に、受付の人が言っていた「転移陣」がはじめてあった。

「ちょっと待って。これが「転移陣」だよね。僕、はじめて見た。」

みると、三重の輪の中に文字が書かれている。古代語のようだ。

そして何故か読める。

僕がアカシックレコードにアクセス権を持っているからなのかもしれない。

三重の輪の中に呪文が書かれていた。

一番内側は発動の呪文。二重目が転移先を示すもの。一番外側の三重目は転移先で実体化する呪文で、自身の周囲は空気であること、足裏は地表から約1センチ上であること、ダンジョン内でのみ作動することなどを指定する呪文だった。

書かれた呪文は結構複雑。

まずは単純に

「転写!」

と言って、亜空間収納内に転写イメージを収納。これは「控え」だ。

僕の目的は、どこへでも転移できること。

この魔法陣のまる写しでは実現できない。そこでこの魔法陣を応用することに。

んー。

僕は、アラクネさんたちが織ってくれた布を思い出した。


布を広げ、はじめに、

「三重円のみ転写!濃度50パーセント!」

と唱えると、布に円形の線が薄墨状態で記された。

次に

「内円一重目、文字転写!濃度50パーセント!」

ほわんと、一番内側の文字が同じく転写された。

それから

「外側の三重目、文字転写!ただし一部文字割愛!濃度50パーセント!」

ダンジョン内でのみ作動というところは省く。

転移先を示す二重目は空白とする。

これで基礎は完成。今度は、僕の指先をちょっと針で突いて、血を垂らしたインクを用意。このインクはエルダートレント炭と、僕の魔力水で作った墨汁だ。これに血を垂らして魔力濃度を上げる。これを

「魔力インク、トレース発動!」

と言って、50パーセント濃度の薄墨コピー上にインクを乗せた。

さらに、「作動はダンジョン外も可能」と書き加える。これが文字数、円の隙間など、原形と同じにできる文言だったからだ。

「できた!」

するとこの布に描いた転移陣が光った。

「お。」

やった。予想どおり。魔法陣の布ができた!


「シンハ。ちょっと待っててね。」

『何をする気だ?』

「これに乗って発動してみる。使えそうなんだ。」

『我も行くぞ!』

「え、でもあぶないよ。ちゃんと発動するか判らないし。」

『お前が行くのに我を置いていくのか。それは絶対嫌だからな!』

「…判った。乗って。」

僕は決心してシンハも乗せた。

「とりあえず、出口をめざすよ。」

『ああ。』

僕はその布にシンハと二人で乗り、念のためシンハの首輪に触れる。

そして二重目は言葉で唱えることにした。


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