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白金(しろがね)の魔術師 もふもふ神獣との異世界旅  作者: そぼろごはん
第二章 冒険者の街ヴィルド編
114/529

114 各門の周辺の様子と、サキのやりたいこと

ドブ浚いも一段落し、街中の依頼にも慣れてきた。

手紙とか荷物の配達なんかもやってみた。

シンハが手伝ってくれるけど、やはり重い荷物をフェンリル様にくくるのは、いくら鈍感な僕でも気が引けるから、主に亜空間収納で運んでいた。ラッキーにもダンジョンで出たマジックバック持ちということにして。

おかげで街中の路地とかもいろいろわかって、ヴィルドを知る上で有意義だった。


ヴィルドは大きな街だから、やはりスラムもある。スラムにもランクがあって、壁の外のスラムと、壁内のスラムがある。当然、壁内のほうが格が高い。スラムで格とか変なのだが、そういうものだ。


壁外のスラムは南門の外にできている。王都に向かう街道が、一番通行量が多いからだ。

スラムといっても、別にスリやかっぱらいばかりが住んでいるわけではなく、出入りの旅人相手に食べ物を売ったりして活発に経済活動をしている。まあ、売っているものはそれなりのものなので、美味いかどうかは別だが。時折、結構美味い店もある。だが、衛生的かといわれれば怪しげだ。


壁内のスラムは南門と東門の間の、壁際にある。

それでも、大都会にしてはスラムは小さいし、結構活気がある。

なぜなら、冒険者になれば、真面目にやっていればなんとか食べていけるからだ。

むしろ夢みて他地域からやってきたが病気や身体欠損で働けない、働かない、アル中だ、などという者たちが問題だ。だが、辺境伯はよくできた人で、街中の清掃活動など、小銭を稼げる仕事を貧困層に斡旋したり、日を決めて無料で医療を受けられるようにするなど、いろいろ考えた施策を行っていた。


ついでだから、物資配達で知った各門付近の様子を説明しておこう。

南門は先ほど述べたように、王都に向かう街道がある。そのため南門付近は商業地で、いろいろな物資が集まってくる場所。いつも商人達や買い物客で賑わっている。商店街は冒険者ギルドのある中央広場まで続いている。この中央広場と一部の路地には、週末になると市が立つ。そして広場では吟遊詩人や大道芸人のパフォーマンスも行なわれ、さらに賑わいをみせる。

南門があるのは南区。メインストリートは2本あり、ひとつは南門と中央広場を繋ぐ通りで、道幅も町中で一番広く、祭のパレードというと、この通りが使われる。大きな商店はこの通りに店を構えている。商業ギルドもメインストリートの中央あたりにある。

もう一本はこのメインストリートとほぼ平行に走る通りで、南門から教会へと繋がる道だ。道幅は南門からのメインストリートよりは少し狭い。そしてこの通りには中規模の店が並ぶ。僕がヴィオールを買った雑貨店もこの通りにあった。


次は東門。こちらは元王国のあったザイツ地方に面している。メインストリートだけでなく路地にまで小さな商店がそれなりにあり、特に問屋が多い。そのため、売り物や仕入れ先などの関係で、商人にとっては東門のほうが便利な場合もある。南門が凄く混むので、慣れた商人は東門とか、場合によっては北門までまわる。路地にはアパートメントが多く、大勢の市民が住んでいる。戸建ては少し奥まったところにある。


僕がはじめて入ってきたのは北門。「はじまりの森」側だから、出入りは圧倒的に冒険者が多い。列に商人が混じっていたのは南門と東門が混むからだった。

北門から冒険者ギルドのある中央広場までは、冒険者が通るのを見越して、武器屋、防具屋、鍛冶師の工房が多い。さらに大工や指物師の工房など、生産者系工房と付属商店。生産者ギルドも北門近くにある。

あとは、串焼きなど手軽な食べ物屋さん。歩きながらでも食べられるようなものとか、ちょっと買ってから冒険に行くのに便利なように、サンドイッチやお弁当みたいなものとかが売っている。ファストフード屋さんというところか。あとはなぜか果物屋さん。干した果物も売っている。これもやっぱり、冒険中に手軽に食べられるからだろう。


西門はほとんど閉鎖。

出入りはできるが、貴族街に近いので、民間人は使いにくい。混雑を避けて貴族や貴族家に出入りする商人、あとは西の渓谷方面に出かける冒険者とかくらいだ。人通りが少ないから治安は良くないのかというとそうではない。貴族街に近いので、むしろ頻繁に辺境伯の近衛とか守備隊とかが見回りしている。門も壁も一番くらいに立派で頑丈なほどだ。


各門はそれぞれ、南区、東区、北区、西区にある。そして中央広場界隈は中央区と言う。

町の中には広場があちこちにあって、それらを起点に道路が繋がっている。


さて、そんなヴィルドでようやく宿暮らしにも慣れてきた今日この頃。

宿はもちろん、マーサさんの海猫亭。もう2階の角部屋は、僕とシンハの貸し切り部屋である。

集中力だけは自慢できる僕なので、ヴィオールは魔力を練るのと同じく、防音結界をして朝と晩に練習している。

すぐに上手くなるとは思っていない。もし音楽で食べていくなら、一日中弾いていても足りないだろう。

でも、僕はそんなつもりはない。ただ、知っている曲がそれなりに弾けるようになりたい、とは思っている。それなりに、が実は結構ハードル高いけれど。


防音結界は、こちらの音を外部に全く漏らさず、外側の音は内部に普通に聞こえる、という異世界仕様。

シンハにとってヴィオールの音はうるさいだろうからと結界の外にと思ったら、それでは用心棒にならぬと嫌がった。

「でもさあ、僕の音、まだまだヒドイし。うるさいでしょ。シンハ、耳が敏感だから。」

『結界をなんとかできないか。たとえば俺には少しだけ聞こえるとかに調整してだな。』

「うーん…。あ、じゃあ、二重にしてみるね!」

つまり、部屋全体には僕の音が外に全く漏れないような結界を張る。そして僕の周りにもう1枚張って、シンハにはヘタなヴィオールや僕の話し声が半分以下の音量で聞こえるように調節。

「これくらいなら、どう?」

『うむ。それならよかろう。』

とシンハ様のお許しが出た。

それでも練習では同じフレーズを何度も繰り返すから、結構神経に来ると思うんだけど。

そういえば洞窟でシターレを練習するときも、シンハは傍を離れなかった。

ヴィオールはもっと高音だから、かなりシンハの耳にはうるさいはずだが。それでも僕の傍がいいなんて。眷属だからだろうかね。


それから鍛冶のこと。

今は宿屋暮らしだから、鍛冶の練習もままならないけれど、いずれはどこかの工房の隅でもお借りして、また何か作りたいと思っている。できれば「普通の」剣とか短剣とかを作って、少量を売るのもいいな、なんて。


初日の飲み会で隊長やテッドさん、カークさん、飛び入りのテオドールさんと話した時、鍛冶を本気でするなら生産者ギルドにも入っていたほうが何かと都合がいいだろう、という話しになった。大々的に刀剣類で商売をするなら商人ギルドになるが、鍛冶職人なら生産者ギルドだという。鍛冶の材料も手に入れやすいとのこと。

鍛冶だけではない。たまに趣味でつくる魔道具とか、魔法陣を組み込んだアクセサリーの販売も、少量なら小売り・卸含めて生産者ギルドに入っていればやりやすいという。材料も得やすいのは鍛冶と同じだ。


僕は薬も作りたい。

ポーションとか、いろいろな薬。といっても、薬草から作る、簡単な(?)薬だけれど。

それもセンパイたちに相談したら、一般的な制作物は生産者ギルドに入っていれば多少の小売りはできるが、薬系だけは少し違っているという。


正式に薬師になるには国家試験があるが、それは貴族に薬を作って売るための免許であって、民間人用の薬については、そう厳しくない。

では勝手に薬を売れるかといえばそうではない。やはり命にかかわることだからだ。


冒険者ギルドや生産者ギルドには、ギルド御用達の医者というのが複数居て、薬系を売る場合は、まず冒険者ギルドか生産者ギルドに作った薬を提出し、おかかえ医者に鑑定してもらう。ものによっては臨床試験もしてもらうらしい。

そして正しいとか安全だとなれば、その鑑定書を持って、プロの薬局か医者に売るか、または冒険者ギルドや生産者ギルドでそのまま買い取ってもらう、ということだ。市場とかで少量小売りする場合は、鑑定書を提示する義務がある。勝手に小売りはできないということだ。


ただし、自分が飲む分なら勝手にどうぞ、とのこと。友人にお裾分けくらいなら問題ないが、おおっぴらに売るならちゃんとギルドに鑑定してもらってから、となる。

なお、ギルドは複数登録できる。

それならさっさと生産者ギルドに登録してしまおう!




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「できれば「普通の」剣とか短剣とかを作って、少量を売るのもいいな、なんて。」 お金は、十二分に持っているのに、鍛錬にもならない、わざわざ程度の低い剣を作る意味がよく分からない。
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