表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/55

宗茂、誾千代縁編  一、婚儀

 結婚。


 第二次石坂大宰府の戦いが行われた同年翌月、宗茂と誾は婚姻した。

 うだるような夏の暑い日のこと、油蝉が庭の木々にとまり五月蠅く鳴いている。

 大広間には、白の肩衣袴姿の宗茂、白綾の小袖と打掛姿の誾千代が二人並んで上座にいる。

 道雪は目を細め、入り婿の晴れ姿と、愛娘、誾の花嫁姿を見て、思わず涙をこぼした。

「ワシはこれで安心して、いつでもあの世にいけるわい」

「父上っ!」

 そんな感傷にひたる父に、誾は目をつりあげ怒鳴った。

「なんじゃ」

「何を弱気な!」

「しかしな、こんな目出度い・・・」

「目出度くなどない!誾はこの家の当主だったはず!何故、結婚したからと言って宗茂殿に家督を譲らねばならぬのですか!しかも、おなごに!」

「誾よお主もおなごじゃ。それに何遍を言うておろうが、宗茂には大将の器量がある」

「誾にはないと申すかっ!」

「ええい!せっかくの晴れの日を!」

 2人は睨み合い親娘喧嘩となる。

「まあまあ」

 と宗茂は二人をなだめる。

「よいか、二人ともワシの願いは一つじゃ。宗茂、お前はこれより立花家の当主として、大殿ひいては、この国の民を守っていくのじゃ」

「はっ!」

「誾よ。そなたはこれより女子として生きるのじゃ。宗茂の分までな・・・名を誾千代と改め、宗茂の捨てたおなごの思いを受け継ぎ、婿殿を支えよ」

「嫌じゃ」

 誾千代は即答する。

「なんと、ワシの申すこと承服出来ぬと申すか」

「宗茂殿・・・むかし千代様の思い受け止めることは、やぶさかではございません・・・しかし、誾も立花家の家督を継いだ者でございます・・・誾・・・誾千代も共に戦いとうございます」

「その言、天晴じゃ・・・じゃが・・・」

 道雪はちらりと宗茂を見た。

 婿はこくり頷いた。

「父上、誾千代と共に!」

 宗茂は道雪に平伏すると、誾千代もそれに倣った。

 老父は苦笑いを浮かべると、右の手の平を何度か振った。

「もうよい。分かった、これからはお前たちの時代だ。思うようやってみよ」

「はっ!」

「はい」


 のち、花嫁花婿が三々九度の盃を交わす。

 これで2人は晴れて夫婦となったのであった。 

宗茂と誾千代は清水で身を清める。

白無垢姿となった誾千代は、侍女に案内され新居の寝所へと入り、夫宗茂が訪れるのを待った。

「宗茂め!」

 その顔たるや怒りに満ちていた。



 さあ、どうなる?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ