五、初陣宗茂大立ち回り
宗茂見参。
宗茂が初陣を飾る第二次石坂大宰府の戦いは、高橋、立花軍と秋月、筑紫軍のこの地の覇権を争う戦いであった。
宗茂率いる部隊は、立花道雪率いる正面軍に合流した。
「おお、見事な武者ぶりじゃ、婿殿」
本陣にて、道雪は目を細めて、宗茂を惚れ惚れと見つめる。
「道雪様、今はまだ私は高橋家嫡男宗茂です」
「そうであった。そうじゃな、うんうん・・・して」
道雪は床机から身を乗り出す。
「本題じゃ。戦局は膠着状態にある。先鋒は敵将堀江備前・・・あやつが、なかなかやりおる。このワシ軍を前にして一歩も退かぬ・・・宗茂どうする」
宗茂はニヤリと笑った。
「道雪様。一騎打ちならば私が打ち取ってみせます!」
揺らぎのない瞳で、道雪を見た。
「ほう。よし!」
翌日。
軍の最前列に、出張った道雪は御輿の上から、大音声で敵軍に向かって叫んだ。
「敵将堀江備前、そなたの戦いぶり、天晴じゃ!どうじゃ、互いに相譲らぬ戦況を動かす妙計がある。戦の雌雄を決する一騎打ちはどうじゃ?こちらは高橋の倅、宗茂が相手を致す。かの者、初陣ながら、お主の首を頂戴すると豪語しておる。どうじゃ、乗るか?武士ならば受けてたつ他あるまい!はははははっ!」
道雪の笑い声に応じ、立花、高橋軍は一斉に笑だす。
しばらくして、馬に乗る単騎、堀江備前が出て来た。
「雷神道雪と言われる老公の言葉無下には出来まい。よかろう、お相手致す。例え相手が女子だろうが容赦はせぬぞ!」
堀江は大喝した。
「宗茂」
「はっ!」
「バレてるぞ」
「元より勝つことしか、考えていませぬ!」
「よし、頼んだ!」
「はっ!」
宗茂は馬腹を蹴って、一気に堀江目掛けて馬を走らせる。
堀江備前は、それを見て振り返ると相槌をおくり、馬を駆けだした。
それに呼応して、十数騎の騎馬兵が後に続く。
「なっ!図りおったな!」
道雪が叫ぶ。
「由布っ!」
「はっ!」
「婿殿を救うのじゃ!」
「承知!」
腹心由布惟信は配下の者数騎とともに、宗茂の後を追う。
「卑怯者!」
宗茂は迫りくる堀江達騎兵に向かって叫んだ。
「笑止!万が一、鬼姫に斬られたとあっては末代までの恥!ましてや、一騎打ちなど、どんな手段を使っても勝つ!これぞ戦国の世のならわしぞっ!」
堀江は高らかに言った。
「そうか、あい分かった」
宗茂は背中から大弓を取り出すと、矢をつがえた。
「なっ!」
驚く堀江に、
「覚悟っ!」
と、矢を放つ。
強弓から放たれた矢はうなりをあげ、堀江の肩を貫いた。
彼はもんどりをうって落馬する。
「者ども、堀江の首級をとるのじゃ」
宗茂は後続の由布たちに、そう言うと自らは、槍に持ち替え堀江配下の騎馬兵たちを
ことごとく倒して回った。
「成った!実に、頼もしき婿殿じゃ」
道雪はその戦いっぷりに目を細めた。
戦の突破口が開かれ、立花・高橋軍は敵軍へなだれこみ大勝利となった。
3月に続きます。
さて、書けるかな~(笑)、楽しみつつ、頑張ります。