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五、ここは・・・

 乱の終結。

 

 宗茂は夢を見た。

 敬虔に祈りを捧げるキリシタン大名大友宗麟の横顔、懐かしい主君大殿へ話しかけようとした瞬間、場面は変わる。輿に乗る岳父道雪とともに戦場を駆ける宗茂だった。それから肥後熊本を巡る佐々成政と共闘した一揆勢の戦い。いずれの場面にも常に隣に誾千代がいた。

「はっ!」

 目が覚めると宗茂は自然に涙が流れていた。

「いかんな、涙もろくて」

 目頭を擦り暗闇のしじまに一人呟く。


 翌年早々、新たに着陣した総大将松平信綱と率いる幕府軍とそれに従う九州の諸侯は12万の大軍を持って一揆勢が立て籠もる原城を取り囲んだ。


 久しぶりの戦場に心躍る宗茂であった。

(これで戦を終わらせる)

 同時に強い覚悟を秘めていた。

 かつての道雪と同じように、輿の上から戦況を見渡し下知する。

 若き頃目に焼きつけた父の姿。

 戦の算段を張り巡らせる。

 いくつになっても宗茂は戦人(いくさびと)だった。

 総大将綱信から時に意見を求められれば、正確な読みで指示や作戦を伝え輔佐した。

 板倉重昌の戦死などもあり劣勢だった戦況も、次第に幕府討伐軍が盛り返して来た。


 しかし、死に物狂いで戦う信者や浪人たちに、太平の世に慣れてしまい戦慣れない兵士達は恐怖する。

 だが、それもまた仕方のない事、異様な戦場に、

「ここは戦場ではなかった」

 輿の上より宗茂は呟く。

「?」

 隣で付き従う老臣十時連貞は訝し気に主君を見あげる。

 宗茂は目を伏せ、

「しかし良いも悪いも無い。これで戦を終わらせるぞ」

 宗茂は真っすぐに前を見据えた。

「はっ!」

 連貞は力強く頷いた。

 宗茂にもう迷いは無い。


 幕府軍は原城に篭る一揆勢に対し、兵糧攻めを行う。

 城の食料も尽き、再三投降や降伏勧告を行なうも、頑として拒否される。

 この年の2月、ついに討伐軍は総攻撃を仕掛け乱は鎮圧されたのだった。

 その様子は凄惨そのものだったという。

 宗茂はじっとその様を目に焼きつけた。



 宗茂、最後の戦場。

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