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四、宗茂出陣
戦を終わらせる。
宗茂の予想は的中した。
反乱軍は、次々と幕府の軍を退け、士気高く勢いは増すばかりであった。
将軍家光は総大将を松平綱信とし戦地への派遣を決定する。
「どれ」
宗茂は軍議の席で、ようやく言葉を発した。
「どうした宗茂、厠か?」
年寄を気遣う将軍に、宗茂はふるふると首を振る。
「?」
「私も戦に行きとうござる」
「なっ!なにを言う。其方は御大・・・足も悪く・・・」
「ふふふ、我が岳父道雪は、足が悪くとも輿に乗り戦場を駆けておりました。此度は私めも父に倣いやってみる所存」
「しかし・・・」
「なあに、まだまだ、そのへんのひょっこには負けませんて、若様」
宗茂はじっと家光の瞳を見つめる。
「なんだ?」
「宗茂。この戦を最後にしとうございます。何卒ご出陣の下知を」
「だが・・・私は、ばあや・・・お主が」
将軍は苦い顔をする。
「ばあやは必ず帰って参りますゆえ」
宗茂は柔和に微笑むと深く深く頭を垂れる。
「・・・わかった。御大に出陣を命じる」
「あり難き幸せ」
こうして、宗茂は最期の戦場へと赴くのであった。
宗茂出陣。




