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三、乱勃発す

 島原の乱。


 長らく表立っては太平の世が続いていた。

 そんな中、将軍家光には寝耳に水な知らせが届いた。

 長崎で島原の乱が勃発したのだった。

 かの地はキリシタン大名有馬氏や小西氏などが治めていた領地であった。しかし転封や改易、改易の憂き目をみた浪人たちは行き場の無い怒りを溜めこんでいた。

 さらに禁教よりキリスト教の信者は行き場を失った。

 この地にやってきた大名松倉勝家は、農民たちに対し過酷な年貢負担や、苛烈極まりないキリスト教信者の弾圧を行う。

 耐えがたい日々に、密かに浪人を中心として一揆が計画される。浪人、信者、農民など藩や幕府に対する怒りは最高潮となる。

 当時キリシタンの間で次々と奇跡を起こしカリスマ的人気があった16歳の若き天草四郎を総大将として担ぎ、この地の民は決起の時を待つった。

 そしてついに寛永14年(1637)10月、信者たちが代官所へ赴き、譲れない要求を突きつけた。のち承服しない代官を殺害し島原の乱が勃発した。 


 一報を聞き家光は、乱を鎮圧するため征討を命じた。

 宗茂は、目の前に広げられた陣立ての図を見て黙りこんでいる。

「宗茂?」

 家光は齢70を越えた御大に話しかける。

 宗茂は柔和な微笑みの後、

「これは苦戦するでしょうな。板倉殿が総大将・・・ちと重荷かと、九州はクセのある大名が多い、従いますでしょうか」

「どういうことだ」

「大将の格というモノでしょうか」

「そんなもので幕府の威光を無視するというのか」

「ふむ。のらりくらりと」

 宗茂は静かに目を閉じた。

「しかし、圧倒的な兵の差だぞ」

「兵力は勝るとも、平和ボケした我々ではどうでしょう?士気は一揆勢にありますぞ」

 飄々と言う宗茂に、家光は食ってかかる。

「なんの!武士が信者や農民などに負けるか!」

「若っ!」

 ぴしゃりと言い放つ。

「その言い方、いい加減やめい」

 家光は苦い顔をして小声で言う。

「よいですか。かの地は有馬殿や小西殿、名高いキリシタン大名が治めていた地でござる。彼等は今どうなってござるか」

「・・・鞍替えや改易じゃ」

「さもあらん。かの地の残った者や改易の憂き目をみた浪人たちが、幕府憎しと恨みを抱き、事を起こしたとしたら・・・それに農民などと侮ることなかれ、死に物狂いの者たちの力は尋常ではありませぬ」

「馬鹿なキリシタンの反乱はずだぞ」

「報告では・・・ですな。人というものは事を大きくしたくないもの。ましてや都合の悪いことは特に、苛烈な年貢取り立て、キリシタンの弾圧は勿論、浪人たちの処遇など・・・真相を深くみないと、この戦決して侮れませんぞ」

 宗茂は鋭い眼光で陣立ての図面を眺めた。



 勃発。

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