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二、将軍秀忠を支える

 遅参は・・・。


 のち大阪冬の陣と呼ばれる戦がまもなく開戦を迎えようとしていたある日。

 やや肥満気味で神経質な顔立ちの将軍秀忠は焦り苛立っていた。

「遅参は許されぬ」

 秀忠は、顔面が蒼白になりながら宗茂に訴えた。

「左様でございますな。関ケ原に続く遅参となれば、大御所様の逆鱗に触れるのは必定」

 今や将軍の参謀役となった宗茂はさらりと答えた。

「どうすればよい」

「私は、早目早目に出兵すべきといいましたが」

 ギロリと将軍を見た。

「・・・まさか、こんなに手間をとるとは思わなんだ」

 秀忠は重臣の鋭い視線を逸らした。

「戦は瞬間の判断が命取りとなりまする」

「相分かった。ワシは・・・父上に・・・」

「秀忠様は天下大将軍、どっしり構えおくがよろしい」

「・・・父上から、先達催促の手紙が来ておるのじゃ」

「ふむ。大御所様から」

「そうじゃ、どうする宗茂?」

「秀忠様はどうなされたいのですかな?」

「ワシはもう遅参など、しとうない」

「左様ですな」

 宗茂は顎を撫で思案する。

「されば、秀忠様は絶対的な安全を確保し柳生殿と精鋭を連れて先へ大御所様の元へ」

「お主はどうするのじゃ」

「私は将軍様の軍勢を率い1日遅れで追いかけましょう」

「出来るのか」

 秀忠は訝し気な顔で百戦錬磨の将を見る。

「武士に二言はござらん」

「ふむ、よくぞ言うた。これよりワシは父上の元へ全力で向かう。宗茂も全力で追いかけてまいれ」

「御意」

 秀忠は柳生宗矩と精鋭たちを従え、家康の元へ馬を走らせる。

 宗茂は平伏して、一行を見送った後、パンパンと柏手を打つ。

「さてと、皆の者。出発じゃあ!遅れをとるなよ」

 戦国の世を駆け抜けた勇将は、その恐るべき兵率力で、将軍秀忠の後をぴたりと追い続ける。

 秀忠は再びの遅参を免れた。


 大坂冬の陣は、激戦が繰り広げられたが、講和に持ち込んだ徳川方の実質的な勝利であった。

 この揺るぎない形勢優位のまま、東軍は戦国最後の戦、夏の陣へと向かう。


 許さん・・・なんちて。

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