大坂の陣編 一、大御所拝謁
大御所家康。
宗茂は徳川の臣となって、やがて10年が経とうとしていた。
慶長19年(1614)、ついに徳川天下の総仕上げ、大坂の陣がはじまろうとしていた。
宗茂は駿府の大御所のもとに急ぎ呼ばれた。
平伏し続ける宗茂に家康は声をかける。
「宗茂」
「はっ」
宗茂は面をあげる。
「よく、将軍秀忠を支えてくれておる。お主に二心なきことも分かる・・・分かるが、この度は、豊臣方につかぬと誓約書をしたためてくれまいか」
家康に苦渋の顔が見てとれる。
「・・・大御所様」
「許せ宗茂。笑っても良い。だが、老い先短いこの身、徳川、天下の世を盤石なのものにしたいのだ」
宗茂は大きく頷いた。
「御意・・・畏まりました」
「すまぬの。宗茂」
「とんでもございませぬ」
宗茂は涼しい顔をして、誓約書をしたため花押を入れ家康に渡す。
「ふむ」
頷く家康へ再び深々と平伏する。
「この宗茂、これからも粉骨砕身、徳川天下泰平の世をお手伝いたします」
「よくぞ言った。これで徳川の世は安泰じゃ」
「はっ」
「太平の世をつくる為には、日の本を一つにせねばならない。これが最後の戦じゃぞ」
「しかと承知」
「よしでは、続き秀忠を頼む」
「御意」
宗茂は家康に拝謁し終えると、じっと大御所を見つめ退出した。
拝謁す。