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宗茂雌伏の時編 一、将軍会談

 宗茂将軍謁見。


 慶長九年(1604)のある日。

 忠勝はすぐに家康へ宗茂の仕官を願いでた。

 はじめは関ケ原での所業に腹を立てていた家康は頑なに首を縦に降ろうとしなかったが、忠勝の度重なる執拗な懇願に了承した。

「よし、では宗茂を呼べ。その胸の内見てやろう」

「殿、お言葉ですが、立花宗茂は決して二心などある者ではござりません。」

「では、何故、豊臣についた?今更何故、徳川に・・・」

「・・・そ、それは」

 忠勝は言葉に窮した。

「ははは。案ずるな忠勝、ワシも宗茂のことはよう知っとる。ただ、何故、心変わりしたか・・・それを知りたいのよ」

「はあ」

 家康は温厚なふくよかな顔で、薬葉を石製の薬研(やげん)で潰しながら笑みを浮かべている。


 数日後、宗茂は一人、家康の元へ向かった。

「立花宗茂でございます」

「宗茂、久しいな」

「はっ」

「宗茂よ」

「はっ」

「仕官の件、了承した。まずは、御書院番頭に任ずる」

「は」

「ん、不満か?」

「いや、もはや、かようなご厚情をいただけるとは・・・」

 宗茂は恐縮した。

「お主の力では物足りんとは思うがの」

「滅相も無い」

「他の皆の手前もある・・・まずはこれで・・・のう、宗茂」

「はっ」

「お主、何故、徳川に仕えようと思ったのじゃ?」

 家康はギロリと真っすぐな目を向けた。

 宗茂は淀みなく即座に答えた。

「もはや天下の趨勢は徳川のものでございまする・・・訳といえば、ひとつは、ほとほと豊臣に愛想が尽きた事。もうひとつは・・・」

「もうひとつは・・・」

「我が妻の死でござる」

 ピクリと薬をつくる家康の手が止まる。

「そうか」

「我が妻の為にも、なんとしてもお家の再興を果たしたい、そう願うております」

「・・・そうかそうであったか、得心した。鬼姫誾千代が逝ったか・・・ワシも妻を亡くした・・・もっともその時はワシが弱かったので、生き残るためとはいえ、この手で妻と息子を殺さざるを得なかった。ワシはその瞬間、変わった。変わらざるしかなかった。宗茂、お主もその時ぞ!」

「はっ」

「励め、期待しておるぞ」

「はっ」

 宗茂は深々と家康に平伏した。


 ここからふたたび。

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