三、ひらける
道が。
十時連貞は肩をおろし、事の始終を宗茂に報告した。
「殿、申し訳ありませぬ」
床に頭をこすりつけ詫びる連貞。
「いや、よい」
思案後、ニヤリと笑う宗茂。
「は?」
「連貞」
「は」
「奉行所に出頭せよ」
「は!」
と、間に入った惟信は続けて、
「殿、それはあまりにもご無体な。連貞は懸命にこの暮らしを・・・」
「爺。連貞は無下にされぬであろう」
「は?」
「これにて運が開けたかも知れぬな」
「は?」
惟信と連貞は互いに、意図が理解できず訝し気な顔をする。
「よいか。役人に事の次第を申し開きする、するとどうなる?」
「詮議がなされるでしょうな」と、惟信。
「であろう。身元は立花の臣にて勇壮の士、十時連貞だと。どうじゃ」
「どうじゃ・・・と言われましても」と、連貞。
「自分で言うのも何じゃが、天下の立花の家臣が江戸にいる。そしてワシも江戸にいる。どうなる?」
「はあ」
「上へと判断を仰ぐであろう。それは内府殿にも知れる事となる。我らが存在、是か否が分かるであろう。立花の力が必要ならば動きがある・・・必ずな」
「流石、殿」
合点した連貞は平伏する。
「だろう」
「では、行ってまいります」
連貞は晴れ晴れとした表情で、その場を出ていく。
「おう」
「・・・しかし、そんなに上手くいきますかな」
「爺は心配性だの」
宗茂は涼し気にケラケラと笑った。
ひらけた。