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五、柳川包囲網

 柳川に迫る脅威。


 宗茂率いる立花軍が柳川の地へ帰りつく少し前、柳川の地に東軍の攻撃の手が伸びる。

「奥方様っ、鍋島軍が海上より迫っております」

 物見の報告に、鬼姫は女中に命じ甲冑を着せてもらい、自ら白馬に乗る。

「敵の上陸は沖端の渡船口っ。これより銃撃をお見舞いする。一兵たりとも柳川の地に足を踏ませるな」

「はっ!」

 誾千代が指揮する鉄砲の苛烈な「早込」により射撃は、鍋島軍を寄せつけない。

 にらみ合いを続け、彼女は夫の帰りを待つ。


 そんな中、

「伝令っ!加藤軍が進軍」

「清正殿か・・・時を稼がねば・・・私は柳川城への最短の道のりとなる宮永を守る。みんなは沖端の防備を固め、鍋島の侵入を許すなっ!」

 誾千代はそう下知すると、馬にまたがり、宮永の居館へと駆けた。

 門には煌々と篝火をたき、誾千代自ら薙刀を持ち仁王立ちしていた。


 目前と迫る加藤軍に、鬼姫仁王立ちの報が届く。

「どういたします」

 部下の言葉に、清正は苦笑いを浮かべる。

「どうもこうもないわ。我等は戦をしにきたのではない。宗茂殿・・・いや誾千代殿に翻意を促し、立花を救うために来たのだぞ・・・回り道じゃ。ゆっくりと柳川城を目指す」

「御意」

 加藤軍は粛々と行く先を変えた。


 ついに宗茂は柳川に帰城を果たした。

 しかし、心休まることなく、次の戦が今も続いてる。

「誾千代、留守ご苦労」

「あなた様」

「すまぬ」

 深々と頭をさげる宗茂に、

「それは言わぬ約束でしょう」

「・・・・・」

「さて」

「これからじゃな」

「目下、東軍、黒田様、加藤様、それに鍋島様が柳川に向かっております」

「さもありなん」

 宗茂は頷いた。

「うち、黒田、加藤はこちら側の出方次第・・・つまりあなた様が動かなければ、手出しはしないでしょう。お2人は盟友でもありますから・・・しかし、鍋島様は」

「そうじゃな、勝茂殿は西軍として我らと共に戦った。直茂(父)殿は権謀術数者・・・目の色を変えて、ここぞとばかりに挽回を考えておる」

「はい」

 誾千代はこくりと頷く。

「・・・・・・」

 宗茂は天井を仰いだ。


「西軍に未練は?」

「ない」

 誾千代の問いかけに、宗茂は即答した。

「・・・ならば、この戦、誾千代におまかせあれ」

 彼女は夫へ、にこりと微笑んだ。


 誾千代は燃えている。

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