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おわりとはじまり編  一、戦また

 再び。


 秀吉は憤怒の表情で石田三成を見る。

「これは、どういうことだぎゃあ」

「・・・は」

「どういうことだぎゃあ!」

 繰り返す言葉の圧。

「唐入りじゃ」

「・・・は」

 聞きたくなかった言葉に三成は聞き直した。

「このうつけ!秀吉が日の本が馬鹿にされたのだぞ。なんじゃ、この講和条件、ワシの要求が全く通ってはおらんだぎゃあ・・・お前たち、かの国となんの折衝をしてきたんじゃ」

「・・・それは」

 三成は滝汗をかき続ける。

「もうよい」

「は」

「やり直しじゃ。今度は完膚なきまで叩きのめしてくれる」

「殿下」

 黒田官兵衛が間に入って、諫めようとする。

「五月蠅いっ!決定事項だぎゃあ!」

 秀吉は吐き捨てて、黄金扇子を投げつけた。


 こうして和平交渉は決裂し、慶長の役とよばれる戦がまたはじまった。



 ここは立花が居城である柳川城。

 宗茂たちは一時帰国し、しばし領国経営に力を入れていた。

 誾千代は顔を真っ赤にし、頬をふくらませ駄駄をこねる

「誾千代もいきまするっ!」

「駄目だ」

 宗茂は毅然と言い放った。

「何故?」

「何故?だと、分かるだろ。お前はまだ傷も癒えとらん」

「分かりません」

 誾千代はプイっと背を向ける。

「・・・・・・」

 宗茂はそっと誾千代の背を抱きしめようとするが、ひゅっと平手が飛んでくる。

 彼は彼女の平手を左手で手首を掴んだ。

「誾・・・力を入れてみよ」

 誾千代は額に皴をよせ、宗茂の腕をほどこうとする。

 しかし、全く力が入らなかった。毒矢を受けた傷が癒えていないのだ。

「それで連れて行けると思うか」

「・・・・・・」

 彼女は唇をかみしめる。

「頼む。ワシ留守の間、亡き父の希望、柳川城を守ってくれ」

「嫌です」

「頼む」

「嫌じゃ」

「この通り」

 宗茂は、正座をすると深々と頭をさげた。

「・・・あなた様」

「この戦、お前も感じたであろう。勝っても負けてもよくない。かの地は治められぬ・・・のう」

「・・・・・・」

「よいな」

 静かにこくりと、誾千代は頷いた。

「よかった」

 宗茂は破顔し、立ちあがる。

「ただし!」

 誾千代は、ひらりと宗茂の背中にのった。

 夫におぶさる妻は、耳元で囁いた。

「必ず帰ってきてくだされ」

「ああ」

 宗茂は後ろに組む腕を力強く、前を見据え頷いた。



 戦がはじまる。

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