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二、一揆平定と成政の死

 宗茂夫妻、成政とともに盃を交わす。


 この年の12月、一揆の首謀者・隈部親永が守る稲村城を佐々成政ほか秀吉軍は取り囲んだ。

 肥後における一揆が終結へと向かおうとしていた。


「いや~すまない宗茂」

 佐々成政は陣幕に訪れた立花夫妻に開口一番、頭をかきながら頭を垂れた。

 彼は顎をしゃくり部下に命じ人払いをさせる。

「いえ」

 宗茂は首を振り、誾千代は軽く会釈をして床机に腰かけた。

「まあ、まず飲め。駆けつけ一杯」

 成政から盃いっぱいに注がれた酒を手渡される。

「・・・は」

 宗茂は一気に酒をあおった。

「見事」

 成政はそう言うと、誾千代にも盃を渡そうとする。

 宗茂はそっと右手を広げ制する。

「誾千代は下戸ゆえ、ご勘弁を」

「・・・殿、せっかくの佐々様の御厚意・・・誾千代謹んでお受けいたします」

 誾千代は両手で慇懃に盃を受け取ると、一気に飲み干した。

「流石奥方!」

 成政は膝を叩いて喜んだ。

「誾っ!」

「きゅう~」

 その場で目を回し倒れかかる誾千代を宗茂は受け止めた。

「言わんこっちゃない」

「すまん、すまん、宗茂。つい無理強いをしてしもうた」

「いえ」

 宗茂は頭をさげる。

「ふはははははっ!」

 成政は豪快に笑うと、ふと我に返り呟いた。

「しかし、九州とはげに恐ろしきところよ」

「・・・・・・」

 宗茂は真意を測りかねていた。

「ワシもここまでかの」

 自虐に満ちた笑みを浮かべる。

「・・・そんな」

「これからは、そち達のような若く勇ましい者たちの時代となるであろう」

「・・・成政殿」

「それともサル(秀吉)盤石の世となろうか」

 成政は主たる秀吉を侮蔑し言った。

「・・・・・・」

 宗茂は返す言葉が見当たらない。

「ま、いずれにしても・・・ワシにはもはや関係のないことだ」

「・・・成政殿、そんな事はありません!まだ太平の世は遠く、秀吉様にとってあなた様の力は必要」

 成政の口角が歪む。

「ま、それもそうじゃの」

 ニヤリ不敵な笑みを浮かべ、

「あやつには、もう一泡吹かせばなるまい。サルの前に信長様ありということをその身に知らせ・・・のう、宗茂」

「はっ!」

「この失態の申し開き、万事事なきを得たらともに天下をとろうぞ!」

「・・・それは、また物騒な」

 宗茂は目を丸くし、急に小声となり、

「だが、しかし、それもまた、おもしろい」

 と笑った。

「だろ!」

 成政は盃を差し出す、宗茂はぐいっと飲むと盃を返した。

「ふはははははは」

「ははははははは」

 互いに笑い合う。

 ぎゅう~。

「いった!」

 宗茂は思わず叫ぶ。

 誾千代が思いっきり宗茂の膝をつねったのだった。

「やや、奥方、これは酒の席の冗談ぞ。すまん、すまぬ」

 成政は平謝りをする。

 3人は笑い合い、しばし語り合った。

 

 後日、隈部親永が守る稲村城が陥落した。

 立花軍の活躍や度重なる増援でようやく、一揆の鎮圧が成されたのである。

 

 しかし剛勇の将佐々成政は大坂に出向き秀吉に謝罪を願うも叶わず、切腹を命じられた。




 そして・・・。

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