二、九州征伐
因縁の相手を前にし。
翌年、秀吉が本腰を入れて、九州の征伐に乗り出すと、一気に情勢は変った。
群雄割拠の九州は、日の本どの国よりもまとめるのが難しい、そう言われたのが嘘のように、秀吉軍の快進撃は続いた。
実質、島津攻略戦となった九州征伐は、秀吉軍に圧倒的有利な兵力差があった。
恐れをなす、九州の小さな大名たちは軒並み、秀吉威光の元にひれ伏した。
綺羅星の如くいる秀吉配下の武将の中、その先鋒に立つのが、立花夫妻であった。
立花軍は肥後の竹迫城、宇土城を攻め落とすと、一気に南下し、島津忠辰が守る出水城を攻め落とし、薩摩島津の喉元に迫る。
ついに、実父を死においやった島津忠長の守る宮之城に、宗茂たちは軍を進めた。
軍議にて、先鋒軍の大将小西行長が告げる。
「宗茂殿、島津忠長を討ち取ることはまかりならぬ」
「何故でしょうか」
「関白秀吉様のご命令じゃ」
「しかし、忠長は我が父を死においやっ・・・」
宗茂が食い下がろうとするのを、傍らの誾千代が遮った。
「かしこまりました」
「誾!」
「お前様、この戦、すでに太閤様の勝利で決しております。ならば、せめて立花の力で忠長の軍を完膚なきまでに叩き、父の弔いとする。小西様、引き続き立花軍を先頭に」
誾千代は平伏する。
「よく言うた。奥方殿」
行長は破顔した。
「・・・・・・かしこまりました」
宗茂は唇から血がでるほど、歯噛みしめて平伏した。
立花軍対島津忠長軍、野戦にて両軍が相対し一触即発となっている。
「宗茂様」
誾千代は不安気に宗茂の顔を覗き込む。
「大丈夫だ。わかっておる。太閤様の意向も今更忠長を誅したとて、何も変わらぬことも・・・今はこの戦に勝ち、父の思いを継ぐ」
時間が経ち冷静さを取り戻した宗茂は誾千代の手を握りしめた。
2人して下知する。
「立花軍出陣じゃ!」
一斉に鬨の声があがる。
戦いは数時間で決した。
かたや勢い増す一方、かたやじりじりと真綿で首を締める追い込まれる一方。
兵力、士気の差も歴然としている。
やがて忠長は降伏を告げた。
「ついにやりましたね」
笑顔を見せる誾千代に、
「これが、あの島津か・・・」
宗茂は思わず嘆息し呟いた。
同年5月、島津家当主義久は薩摩川内の太平寺に赴き、秀吉に降伏を伝えた。
これにより、九州は秀吉の手によって平定されたのだった。
宗茂と誾千代の思いは。