三、閨(ねや)睦まじく
萌要素もここいらで。
夜は更けていく。寝所へと入った二人。
だが、額がぱっくり割れた宗茂に誾千代は手ぬぐいをあて止血している。
「おー痛い、痛い」
「じっとしてください」
額に汗を滲ませ、誾千代は必死に手当てをしている。
「のう、誾千代」
「はい」
「ワシと共に立花を・・・」
「ふふふ」
「なにが、おかしい?」
「スッキリしました」
「はあ?」
「誾千代は心に留めて置くことが出来ませんでした。家督や城を奪われ挙句、あなた様の嫁になる事を」
「・・・ふむ」
「でも、さっきあなた様に力一杯たてついて、胸のつかえがとれました」
「ふむ」
「父上の申す通り、あなたはやはりお強い」
「ほう・・・ならば」
こくりと誾千代は頷く。
「ともに」
「ああ、ともに生きよう」
「はい」
宗茂はしたりと膝を叩く。
「ならば、そんなことより」
ぐいっと身を乗り出す宗茂に、誾千代は両手で手ぬぐいを押し込む。
「ぐぬっ、痛い」
「馬鹿っ!」
「馬鹿とはなんじゃ、ワシはこの日を一日千秋の思いで待っておったのだぞ」
「まずは治療しないと」
「まずとな・・・」
宗茂は誾千代の手を強く引いた。
「宗茂様っ!」
「まずの後は何をするのじゃ?」
「・・・・・・」
「言うてみい」
「・・・馬鹿」
「また馬鹿と言ったな、誾千代」
宗茂は誾千代を強く抱きしめた。
「痛い・・・です」
「馬鹿というた罰じゃ」
「それはあなた様がお怪我を・・・」
「額の血はすぐに止まる」
宗茂は笑った。
「あなた様の美しいお顔が・・・」
誾千代はそっと宗茂の右頬をなぞった。
「誾千代・・・ワシはおなごを捨てた」
宗茂のその言葉に、彼女はふるふると首を振った。
「いいえ、せめて私の前だけでも千代様であってください」
「なんと」
「私には分かります」
「・・・なにがじゃ」
2人はじっと見つめ合う。
「あなた様はおなごです」
「・・・・・・」
「その美しい顔・・・優しい瞳・・・身体・・・」
宗茂は人差し指で誾千代の唇を塞いだ。
「みなまで言うな・・・よかろう、時としてお主の前では千代の姿見せよう」
「宗茂様・・・千代様」
誾千代の顔が華やいだ。
「・・・たまにじゃぞ!たまに!おなごを見せるのは!」
宗茂はぶっきらぼうに言う。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ふふふ」
「ははは」
2人は顔を見合わせると互いに笑いあった。
ひとしきり笑ったのち、宗茂は真顔となり誾千代を胸の中に引き抱きしめた。
「じゃが、今宵は宗茂、お主と契りを遂げる」
「・・・宗茂様」
宗茂は誾千代の唇にその唇を重ねる。
ほどなくして燭台の灯りが消えた。
閨睦まじく。
こっから先は駄目~。
おほん。
では、また次月でお会いしましょう。