閑話1ー2
今回も陣視点です。
悠人と再開してからは色々と記憶が飛んでいるが、俺は自身の肉体の違和感を感じていた。
最初に気づいたのは、悠人に腹を殴られた時だった。
「…ろ!…決…時間だ!」
「グフッ!うおっ!ん?何処だ此処?というか何やってんだ悠人?」
お腹を殴られた気がするのに、痛みがほとんどない為手加減でもしたのか?と思っていたら悠人は手を痛めていた様子で意味がわからなかった。
な、何?自傷?悠人にそんな趣味があるとは…と戰慄しかけていたが、悠人との長年の付き合いの俺には分かる。
こいつは、おれと喧嘩した時は何故か一発も拳を外したことはない。
だからさっきのお腹を殴られた気がするのがリアルだったのなら、あいつの拳を痛めたのは俺の腹が原因ということになる。
あ、あのガキ…!俺の体を改造したとかのたまいやがっていたな!!
これか!こんなことをしやがって……ありがとうございます。
おかげで悠人との喧嘩に余裕で勝てるわ。
クゥーックックック…!
近々起きるであろう下克上を楽しみにしながらもそのことをバレないように明鏡止水の心意気を行う。
その後も、肉体の変化は悠人との差を明らかにしていた。
ウィリアムの先導の下、森を歩いていたがまったく疲れることはないとは!
後ろからノロノロと歩く悠人に対して優越感を感じる。ヒシヒシと感じるぜ!
視線がこーんなに気持ちいい日が来るなんて。
ヒューウ!ありがとう、神様、女神様!
森を抜けて街に入るまでは結構掛かったが、ずっと話していたおかげでウィリアムとも仲良くなれたと思う、多分、きっと…。
ウィリアムの自宅ではまぁ色々驚かされたが、これからの身の振り方を話している時は恐ろしいぐらいに不安だったな。
途中、悠人なんか
「なんか、高校受験の時の先の見えない不安に近い気分だ…」とか呟いていたしな。
一週間後には決められるか?俺。
不安はあるが、別に一人で決めなきゃ行けないわけでもない。
悠人がいればどこででもうまく行きそうとは思ったが、口にはしない。
だって恥ずいし。
最高の親友だぜ!とか面と向かって言ったら殴られそう。ちなみに俺だって殴る。
そしてウィリアムの言っていた"空からの落下”や”異世界"についての説明は悠人に押し付けることにした。
いや、だって俺一言もそういった単語は言わなかったから俺は関係ない。つまり俺は悪くない。適材適所というやつだよ。OKー?
それぞれが部屋に入ってからも俺はこの異世界に想いを馳せていた。
ただ、壁の向こうからきこえる涙は、俺の心も曇らせる。
異世界に来て俺は家族との今生の別れはすでに心の中で済ませている。
だがそれは俺一人で悠人はちがう。
だからこそ悠人を巻き込んで異世界に来たことは俺の責任だ。
「なんとかしなきゃな…」
まだ夜は長い。