閑話 1ー1
今回は陣視点です。
2話に分けて投稿します。
今日は一日中大変な目に遭ったが未だに夢じゃないのかと思う。
しかし、夢なら醒めないで欲しいと願うほど充実した一日でもあった。
ただ
あの涙の声を聞くまでは……
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目が醒めると見知らぬ場所に居た。
誘拐?
残念ながら品性方向、容姿端麗、他人想いな俺が誘拐される理由なんて……パッと考えても8つくらいしか思いつかない。
いやいや、だってあれ俺は悪くないからね?
犯罪していたのはあっち。
俺はそれを引っ掻き回しただけだぜ?
正義は我にありと言うやつだ。
「うぐぐぐ、頭痛ってー。つーか、直前まで何かしてたような…」
痛みがあるのもそうだが誘拐にしては、何かおかしいな。
だって周りは草もなければ人もいない。
足には立っているという感覚は有っても、下のこれが地面だと何故か理解できない。
もし建物の中だとしても地平線さえ見えないといのはいくらなんでも広大過ぎる。
そして、太陽もライトも月だってないのに周りがはっきり見えているのは異常過ぎる。人間の視覚は、物体にあたった光が反射して網膜に映ることで周りを認識している。それなのに光がないのに周りが見える現象はただただ異常で異状だ。
だからこそまずは、何があったのか思い出すことにした。
「あー、たしか…学校に行く途中でえーと」
そうそう思い出してきた。
「登校中にナニかが背中に引っ付いて」
えーと、たしかそれを
「悠人に取ってもらおうとして。…あ、光に巻き込まれたんだった!」
完全に思い出したことで光の正体について考察する。
「んー、光、ひかり、ヒカリ……閃光弾?」
なら、頭の痛みはその直後に殴られた痛み?と考えてみたが、タンコブができていないことや外からの痛みではなく内側からの痛みであるため頭の痛みは別の原因だろうと考えた。
とそこまで考えていた時に
「目、覚めた?」
背後から幼い声が聞こえて振り向く。
いつの間にかそこには小さな少女が立っていた。白い髪に質素な服を着た少女は、にこやかに笑顔を浮かべていた。
「子ども?おい、ここはどこなん」
「子ども扱いしないの。なんか嫌な奴。さっさと終わらせるの」
話し掛け方が悪かったのか、先程までの笑顔が一転して無機質な表情に変わった。
そして俺の話を遮ったその子どもは、俺の腹に手を突っ込んで…
カラダが掻き混ぜられる感覚と、嫌な音が体内から聞こえて来た。
「ッッッッッッ!ゴフッ!」
「うるさいの。すぐに済むからシャラップなの」
「ふ、ふざけんな…!なにを、ぐうっっ」
突然の人体改造が終わったのか、少女の手は俺の腹から引き抜かれその反動で俺は尻餅をつきながら血反吐を吐く。
「はぁはぁ、ぐぅ。ふーう。一体何しやがった!?」
「私の加護を授けると同時にちょっと改造したの」
カイゾウ?カゴ?
意味のわからないことを言う少女は俺の反応に構わず話を続けた。
「貴方達は、運が悪いことに異世界に行くことになったの。災害みたいなものだから諦めてほしいの」
「はぁ!?ふざけん…待て、貴方達?俺だけではなくて?もしかして悠人も一緒に?」
疑問を投げかけると、首を縦に振って肯定した。
「なら、悠人は、悠人はどこだ!」
「うるさいの。今会わせるから静かにするのよ。そうそう、私の名を伝えておくの」
正直言ってこいつの名なんて知りたくも無いが、更に機嫌を損なわれると何が起こるかわかったもんではない。
ここは大人しく聞くのが正解だろう。
「名はシリュシー。天秤の女神シリュシーなの」
まさかの女神様と来たか。
しかし、それなら言わなければいけないことは増えてしまった。
「すまんが、女神を名乗るならもう少しボン、キュ、ボンになってからにしてくれや。今のままだと信じ切れないぞ」
「はぁ、もういいの。まったく…」
疲れたOLみたいな声を出しながらシリュシーと名乗る少女は蜃気楼のように消えていって…
目の前に悠人の姿が見え始めた。
「悠人!今まで何処にいたんだよ!!!」
「うっせぇよ!今大事な場面なんだよっ!」
心配してやっていたのにノータイムで怒られた。
何故に?
次も陣の話です。