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街行きの森道

第5話です。

今回は悠人視点です。

 


 何とか説得してウィリアムと名乗る人物の手を借りることに成功したのだが、ここがどこで俺たちがどこに行くのか聞きそびれていたので聞くことにした。


「すみません。ここはどこなんですか?それに今からどこに…」

「ああ、そういえばなにも言っていなかったね。私たちがいるこの場所は、迷界の森と呼ばれている場所とルーキック森のちょうど間なんだよ。奥の森は見たかい?」

「いいえ?よくは見ていないですけど」


 陣にも確認を取ったが見ていないとの返事が来た。


「奥の森は迷界の森と呼ばれていて一度入ったら出られないという噂の森で、実際にあの森の中は魔力がうごめいているから危なくてね」


 そんな恐ろしい森の手前に落ちてきたのは運がいいというのか悪いというのか…。


「それで今から行くのは、此処から一番近いレイン学院を中心として栄えたレリントン国だよ。半日も歩けば門前には着くかな」


 そう言って、歩き始めたウィリアムの後に追従して移動を始める。

 ちなみに陣がさっきから静かなのは不穏だ。

 この世界に飛ばされてから現実味が無いからならまだマシな方だが、一体どうしたものなのか。

 そこで歩きながら陣にどうしたのか聞いてみた。


「どうしたんだよ、さっきから静かで。お前らしくもない。お前のことだから『おいおい!魔法があるとか最高かよ!』とか言ってウィリアムさんに詰め寄るとばかり思っていたのに」

「んー、そうしてもよかったんだけどな。ちょっと考え事をしていて」


 陣が感情に任せて行動しないことは初めてで俺はちょっと驚いた。

 感情に任せた行動がこいつのアイデンティティーと言っても過言ではないのに、そのアイデンティティーを今この時捨て去っているのだ!

 陣から感情に任せた行動をすてたら何が残るというのか。多分運動が出来て人に頼られてモテモテの完璧(パーフェクト)超人(ヒューマン)が出来上がると思う。

 アイデンティティーを捨て去ったら進化するとか何それ。人類の進化とは違う路線たどりそう。

 そんな考えとともに嫉妬の視線を陣に送りながら心配をして再度問いかける。


「なぁ…。本当に大丈夫なのか」

「ん?あ、おい!あれ見てみろって。ウサギが空飛んでるぜ!捕まえてみようぜ!」


 そんなことを言いながら横道に逸れはじめた陣はやっぱり陣なのだと安心した。





 ・・・・---------・・・・





「はあはあ、...なぁまだ着かないのか、ではなく着かないのですか?」


 歩き始めて数時間。そろそろ日が暮れだして辺りが暗くなるというのに森の中をまだ歩いている。

 そのせいで足はパンパン、あまりの疲労に元の世界から持ってきていた荷物を捨てて軽くなろうかなと悩んだことは何回もあった。


「ハハハ、もうすぐだよ。流石に歩き疲れたかな。ジンくんは大丈夫?」

「うっす、平気です。悠人、あんまり遅いと置いてくぞー。流石に暗くなる前には森を抜けたいぜ」


 おかしい。

 歩き始めてから陣とウィリアムが仲良くなっていることはまぁいい。陣は人と仲良くなるのが早いという特技を持っているからそこは納得している。

 おかしいと思ったのは、なんであの二人はこの森で息切れしていないかという点である。

 ウィリアムはまだいい。見た目が少しやせているように見えるから勝手な想像で運動が苦手な人と思っていた。しかし会ったばかりであるため、ウィリアムの能力を把握していないから【とてつもなく運動が出来る人】の可能性が存在している。

 陣も俺もそれなりに体力はあるし、運動神経は陣が一枚上手だったが俺がそこまで劣っているわけでは無かった。

 加えてこの獣道。

 街道のように整備された道でないため、デコボコが多く足への負担がハンパなかった。

 本来なら三人ともへばって俺一人が醜態を晒していることなんてないはずなのに、二人だけが元気で歩いている。

 おのれ、俺よりも元気とは.......。と酷く理不尽な恨みを持ちながらも森を進む。



 そうして、さらに2時間ほど歩き続けてようやく木以外の大きな物体を目にすることが出来た。

 森が少し開け始めて心が高まる。


「見えたね。あれがレリントン国南部の壁門だよ」

「「おおっ!」」


 ようやく、ようやく森からの脱出だ!










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