そして異世界へ
3話目です。
悠人視点で始まります
陣の間の悪い突然の呼び掛けは、俺のストレス火山を噴火させた。
「陣!空気をよんで慎ましやかに生きなさいって教わらなかったのか!そんなんだからいつも酷い目に遭ってんだよ!」
「これが俺の運命だ!それに、これでもかなり慎ましく生きているんだ!」
その言葉は、性根と頭と論理感を疑う内容だったが、当の本人は至極真面目な顔と声をしていた。
バ、バカだ!至極本気のバカがいる!
心の中で驚きながらも、俺は落ち着いていた。
何故落ち着いたかは、水と油が簡単に混ざり合うぐらいに理解できないが、のちに仕返しをすることを堅く誓い、再度自分に加護を授けた彼に聞く。
「すみません、うちのバカが…。それで貴方の名は?」
「時間だ」
「はっ?」「ふぇっ?」
聞こうとしたら、彼は下を向きながらそう言った。
そして俺たちも下を向いた時、
急に地面の感覚が無くなり、俺と陣は雲一面の空に放り出された。
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イカロスもこんな気持ちで落ちていたのだろうか。
「アーバババ、ババ、グファ!」
鳥か獣の鳴き声に聞こえるでしょうけど、人間の叫び声です。
こちら現在、高度不明!まだまだ地面との余裕があります!
そんな現実逃避をしながら、状況の把握に努める。
まずは場所。
これは空だ。なんか遠くに鳥以上の大きさを誇っている飛行生物がいるけど今は気にしない。
次に安否確認。
俺は問題なし。
陣は……。さっきから声が聞こえないと思っていると、気絶していた。
最後に手段。
パラシュートも、代わりになるのも何もない。
つまり一巻の終わり!
「おい!起きろ!このままだと2人仲良く地面と同化してしまうぞ!俺は嫌だ、まだまだ生きていたい!起ーきーろー!」
なんとかして陣を起こして対策の案を出してもらおうとするが、地面との距離が縮まり今から動き出したとしても減速が間に合わない。
もうダメだと諦めかけていた時、地面から大量の風が吹き荒れ、クッション代わりとなって俺たちの命が助かった。
そして
我が加護を授けし、人間よ。我が名は賢神ドルバール。その名を刻むがよい。
頬を優しく撫でるかのような僅かな風が吹き抜くと同時に、神託が下る。
この名は、決して忘れない。
そして俺たちはこの異世界であろう土地に迷い込むこととなった。
「やあ、先ずはお礼が欲しいかな?挨拶はその後で」
新たな出会いと共に。