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初の厄介ごと

第11話です。

悠人視点です。

 



 なぜ学院にいるか疑問に思ったが、ウィリアムの後ろから部屋に入って来た彼女に第一声を奪われた。


「ごめんない。貴方を巻き込んでしまって。そっちの男だけを狙っていたのですが」

「ああ、いいですよ。巻き込まれるのには慣れているので」

「ちょ、待て!おい、俺には謝罪ないのかよ」


 なにを戯言を言っているんだ?

 俺の記憶では先に喧嘩を売ったのは…あれ?どっちだっけ。


(陣、最初どっちが喧嘩売ったっけ?)

(いやいや、悠人、俺たちの取り決め忘れたのかよ。さっきあいつの責任にしようと決めたばかりじゃねえか)


 どうやら、陣にとっては始まりよりも終わりが大事な様だ。

 起承転結、小説では重要な点だ。

 どちらも大事。だが俺としては『転』が大事かなぁ。

 クライマックスに向けての話の急スピードは心躍るものがあってだな…


(悠人、悠人?…ダメだ、意識が脱線してやがる。オイ!起きろ)


 ペチペチ

 今良いシーンを思い出しているんだから邪魔すんなっ…とヤバ、思考が飛んでた。


「起きたか?」

「ああ、目は覚めた。今どの辺りだ?」

「ようやく状況を話し終わったばかりだ」


 えっ、マジで?

 あの陣が人に説明を!?

 どうやら本当のようで、話し合いの手間が省けた。


「それよりもウィリアムさん、なんで学院に?」

「あれ?言ってないかい?僕はここの講師でね。魔術学の担当なんだ」

「「講師!?」」

「貴方達、ウィリアム様と知り合いなんですか?」

「「様!!?」」


 え、つまりどうゆうこと。

 驚きの情報の連発で頭が真っ白になりかける。

 そして、様と呼ばれることにむず痒さを感じているのか、そっぽを向いているウィリアムを無視して彼女は話し始める。


「ええ、ウィリアム様は人柄やその実績の高さから多くの生徒から人気が高いのですよ」

「そこまで凄いことをしてる気はしないのだが」

「僕も自分の実績はまぁまぁぐらいだと思うんだけどね」


 うーん、実績ねぇ…?

 もしかして。


「あの森に来たのも何かの研究とかで?」

「いやいや、あれはただ魔力の渦が見えたからだよ。一瞬だけね。それが気になって」


 なんだ。ただの興味か。

 いや、そんな探究心が実績を作ってきたのか。


「シャルメさん。いくらなんでもいきなり魔法を向けるのはどうかと思うよ。魔法は危険な力だからね。使うべき時を見誤ってはいけないよ」


 どうやら彼女の名はシャルメというらしい。

 縦巻きロールだからロールちゃんではないのか…。


「ですが、あまりにも怪しすぎて!最近学院の周りを彷徨く者がいるという噂もありましたし…」


 いや、あの攻撃には思いっきり私怨があったよね?

 しかし話から察するに、どうやらこれは何かがありそうだ。

 あと恩返しのチャンスもありそうだ。


「その話詳しく教えてくれませんか?何かできることがあるかもしれません」

「え?」

「えっと大丈夫なの?」


 シャルメの心配は兎も角、陣はなんで驚いているのか?


「なんだ陣、そんなに驚くことか。ウィリアムさんに恩を返すチャンスじゃないか」

「いやだって、今まで自分からは厄介ごとに首突っ込まなかっただろう」

「なら、お前は止めとく?俺一人でか〜。大変だなぁ」

「いや、やるけどさ。面白そうだし。お前一人というのも心配だしな」



 決定。

 異世界に来て初の厄介ごとに俺は何故か心躍ってしまった。




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