レイン学院
今回は陣視点です。
第9話です。
ちなみにもう一作品もありますので、そちらもどうぞ。
レイン学院
それはこのレリントン国を支える優秀な人材を育て、国の発展に貢献している。
国の中心であり、国の歯車を回し続けるために必要な教育機関である。
噂によればレイン学院の学長は国王と同格の発言力を持ち、その人主導で革命を起こしたら確実に成功すると言われるほど先見の目を持つとも言われている。
俺たちはそんなレイン学院の目前に来た。
「「でっけー!」」
目の前の学院は鉄格子で覆われ、その高さは5メートルには届くのではないだろうか。
目の前の門以外に入る入り口は無く、警備の都合上か建物の周りには他の建物がない。
「ここがウィリアムさんの言っていたレイン学院か」
「立派というか何というか。ここまで大きい建物はあっちの世界じゃ…超大型のショッピングモールぐらいしか見た事ねーな」
俺も同感だ。
国の象徴とも言えるレイン学院は俺たちの心を鷲掴みした。
とはいえ当初の目的を忘れるほど俺たちは浮かれていない。
見て回る建物が他にないか確認する。
「陣、そっちはどうだ?こっちは何もない」
「ああ、こっちもだ。柵は越えられなさそうだし、警備の目は厳重だ。抜け穴とかもねぇな」
……訂正。俺は浮かれてない、です。
「ちげーよ。当初の目的は街を見て回ることだろうが」
「いやいや、これも立派な街巡りだぜ、大将」
ふざけ始めたことには目を瞑ってやる。
どうやら言い訳は真面目に行うようなので聞く体勢はとってみる。
「いいか、俺たちは街の裏側まで隅々見て回らなくちゃいけないんだ。いやむしろ嬉々としてやるべきなんだ」
ふんふん、なるほど。それで?
「つまりはたとえ厳重な警備で危険だとしても中に入って確認することも重要な街巡りではないのか?」
…それで?
「…以上だ」
「判決、却下」
「上告の許可を!」
それ後がないし、どっちにしろ裁判官は俺だから諦めろ。
ッ、チッ、流石に騒ぎすぎたか…。
視線が集まっている。
「気づいてるか?視線の中でも一際危ないのがあるぞ」
「もちろん、刺すように見てる奴だろ」
陣に肩を組まれながら小声で話し合う。
ちなみにその視線は警備員っぽい人とは別であろう、柵の先にいる縦巻きロールのお嬢さんからだ。
金髪、縦巻きロール、そしてあの視線。
「傲慢キチな金持ちお嬢様と委員長タイプどっちだと思う?」
「お堅い委員長タイプだったらいいなぁ〜」
うわっ、こっちに向かって何が言おうとしてる。
「ちょっと、貴方達。こんなところに何か用かしら。さっきから学院前でうるさいですよ。もし何か変なことをしたら今すぐ学院内の警備員も呼びますよ?」
「うお!もしかしたらマジで委員長タイプ!?」
「俺は金持ちお嬢様が良かったな」
せっかくの異世界、金持ちお嬢様見てみたいな…
「さっきからなんですか!?人をお堅い委員長とか金持ちお嬢様とか!もういいです!直接黙ってもらいますからね!」
縦巻きロールがこちらにやってく…やって…やって来ない。
もしかして門を越えたらダメとかある?
「ぐぅぅ…、ちょっとこちらに来なさいよ!」
「「嫌です」」
言葉はハモったが、態度は違う。
俺は内心バカを見る目で笑いまくってはいるが顔には出していない。
しかし逆に陣は思いっきり顔に出てる。
うわっ、イラッとくる顔だわ。殴りてえー。
「そこの貴方!その目止めなさい!やめないなら…!」
縦巻きロールの雰囲気が変わる。
なんか嫌な予感…
「陣。嫌な予感がするんだが」
「奇遇だな。俺もだ」
こちらに向ける掌から炎が!
「死になさい!」
これは、魔法ってやつか!