巻き込まれた!巻き込んだ!
初投稿です。よろしくお願いします
イカロスという人物をご存知か。
太陽に近づきすぎた彼の最後は羽が溶けて落ちてゆくという悲惨なものだ。
ただこの中での教訓とは『人は空を飛べない、最後は落ちるのみ』である。
人類には重力という星の法則に縛られて生きている。
ではこの現状もまた当然の結末に至るのだろうか。
「くそが!なんでこうなった!」
ただいま、雲よりも高い上空から地面に向かって落下している状況の真っ最中。
実はひもなしバンジージャンプをやっているのには、雲よりも高く海よりも深ーい訳がある。
まぁ、今は物理的に雲よりも上にいるけれども。
その理由は、隣でのびている友人が切っ掛けだ。
何故こうなったか何故こんな目に合っているかは本当に数時間前の出来事が原因だった。
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爽やかな朝。
そんな朝の雲一つない青空に心躍らせる男がいた。その名を旋風 悠人。
この春、高校2年になったその男の外見は、特に目立った特徴の無い凡人極まるものだった。
170cmで少しぼさぼさの髪。
顔は平均的なタイプで人から顔を覚えられにくい形をしている。
「くぅー!何もないって良いな!そう考えると、やっぱあいつはおかしいって…」
彼のつぶやきは、口調のようなものだ。
とは言え、この口調は数年前の出会いがきっかけだった。
あの出会いが有ったからこそ退屈と平凡な人生に適度な刺激が生まれている。
しかし適度な刺激は何時だって、予想のつかないタイミングでやってくる。
そう、こんな朝早くであってもだ。
「お、見つけた悠人!すまん、急で悪いがこれ頼むわー!」
「なんのことか知らないが取り敢えず帰れ!近寄るな!厄介ごとを押し付けるな!」
厄介ごと製造器こと宮本 陣がやってきた。
二人は、中学からの腐れ縁というやつである。
やってきた陣は身長は180cmでまあまあのイケメン顔でガタイも良いという恵まれた部類に当たる。
ただし常日頃から厄介ごとに首を出しては悠人を巻き込む性格は恵まれた容姿を紙くず同然の価値に変えるほど残念な男であった。
実際に彼が興味本位で首を突っ込んだ事件には一歩間違えれば命に係わるものばかりであった。
誘拐、強盗、挙句の果てには密売などの様々なことにカンづいては、人助けをしたりひっかきまわしたり…。
そんな彼の暴走に悠人も巻き込まれることは常であるが、ほとんどの事件で人助けを優先していたから陣の行動を怒るに怒れない心境は悠人の最近の悩みの1つである。
そんな陣が朝っぱらからお願いをしてきた。
「これ取ってくれー。頼む!一生のお願いだから。ほら、俺の顔に免じて…ネッ?」
いきなり取ってくれと言われてもどこの何を取ればいいのかわからない悠人はため息とともに悪態をついた。
「ちょっとかっこいいからって、お願い聞くわけないだろうが。まったくよ、一生に一回のお願い、これで何度目だ?」
「一生のお願いだから、1回目だろ?」
「俺の記憶では、高校に上がってからこの1年で8回は聞いたな」
こんな繰り返しは、この2人の間では日常茶飯事だった。
つまり厄介ごとの数も比例して…
「それで?今度はなんだよ…。爆弾か?爆弾なんだな?よし爆弾だよな?警察って112か?」
「110だバカ」
「ほほう…!仁君よ、やっぱ授業に遅れそうだからスマン、自分でなんとかして」
「バカとか言ってサーセンしたッ!あと爆弾ではないからな!?」
爆弾。平穏な朝に似つかわしくない物品だが、陣なら爆弾魔に付けられてもおかしくはない。
となると先ずは何が付いているか確認する事こそが重要と判断した悠人は陣の背中に周りこむ。
しかし、悠人の目にはその背中に貼り付いている物はどう考えても爆弾ではない。
それはまるで雲や羊の毛の塊みたいな物ではあるが、金色に光る雲も毛も聞いたことはなかった。
その光る物体はまるで鼓動するかのように少しずつ少しずつその面積と光を増大していく。
陣の背中に付いている物体はタイムリミットを迎えたかのように眩い光を放つ。
「あっ!」
「眩し!」
光は二人を飲み込み、縮小していき其処から消えて無くなる。
そしてその場には何も残されないまま、2人は消え去った…。
当然2人は高校に遅刻。
そして其の高校に登校することは2度となくなり警察の捜査も力及ばず神隠しとしてニュースにもなったが、誰も彼も次第に2人のことは忘れ去っていった…。