第八十八話 好みは自由
旅先で見る地雷臭しかしない商品を
分かって居ながら買うのは何故か?
(要約:つまりは刺激!!)
蚕さんに追加で幾つかお酒を頼みつつ、皆で日本酒を注いだ盃を掲げる。因みにククルゥちゃんは乳酸菌飲料だ、一応百歳くらいらしいので年齢的には問題ないが、本人お酒が苦手らしいので。
むしろ気になるのはパーシヴァルだ、確か十八歳の筈だし日本で飲んで大丈夫なのだろうか? と思ったのだが、
「ご心配なく、元服制度とまでは行きませんが、基本的に神州は十八歳で成人です。――そもそも神州に置いてお酒は神聖な物ですので、実は神職関係ですと清酒などは高校生でも飲めたりします。巫女などは必要な時もありますから。」
「ああ、身を清める為に清酒を飲むとか、そういうのあるんすね。」
医学的な体への影響とかは異世界だし何とかなるのだろう、と言う訳で気を取り直して、
「「「「「カンパ―――――イ!!」」」」」
盃がぶつかり、高く小気味いい音が響く。そのまま一息に中身を飲み干し、
「ぷは――! いい酒っすねぇ!」
「はい、お風呂でも頂きましたが、口当たりがすっきりしていて美味しいですね。」
あまり食事の席では酒を飲まないフィーネが気に入っている辺り、やはり物が良いと言う事だろう。見ればパーシヴァルはお酒の品書きを熟読しているし、ギラファも何処か上機嫌だ。
自分はフィーネに頷きを返しつつ、まだ熱を持つ料理の数々に視線を向ける。本来は食べ方の順番とかあるのかもしれないが、先程蚕さんい聞いたら『自由自由』とのことだったので気にしない、まずは酒に合う鉄板の揚げ物から頂こう。
「お、天麩羅の掻き揚げは玉葱と春菊っすか。いいっすねシンプルで。」
薄く衣の付いた掻き揚げを塩で頂く、ご飯に乗せるなら濃いめのツユが良いが、酒の肴には塩が合うと言うのが持論、異論は認める。
「ん―――!」
歯が食い込んだ瞬間、乾いた音を衣が立てた。けれど決して固いと言う事は無く、噛めばほろりと崩れて玉葱の甘みと春菊の風味が表れる。掻き揚げと言うと内側の方で衣がベトッとすることもあるが、流石は一流と言うべきか、薄めに揚げられている事を除いてもくどさや粉っぽさが微塵も無い。それでいてしっかり揚げ物としての油の旨味は感じられ結論としては酒が進むの一言に尽きる。
『追加――』
窓からパタパタと飛んで来た蚕が提げた籠に入っているのは、パーシヴァルや自分が頼んだ追加のお酒達だ。先程品書きを見ながら互いに幾つか目についた物を選んだわけだが……
「なんすかパー子『悪酔い【レモンポタージュ】』とかいう地雷臭しかしないこの缶チューハイ?」
「それを言うなら貴女の『Iカップ小結』もブラ付けた力士のラベルとか中々カッとんでますわよ!?」
いやほら、旅先で変な銘柄見つけるとつい頼んでしまうというか。――おや何やら二人で頼んだ記憶の無い瓶が。
乳白色のガラスの一合瓶に、黒の墨字で書かれた豪快な文字は、
「白濁り酒、『本生絞り【俺】』……」
「アウト――!!」
軽く瓶を傾ければ、中の液体がゆっくりと追随する。成分表示を見る限りはれっきとしたお酒、変な成分は一切入って居ない。
だがこう、ドロッとした感じが生々しいと言うか、いやこれ頼んだの誰っすか?
「あ、それ私ですね。」
まさかの人物であった。思わず自分はパーシヴァルとククルゥと顔を見合わせ、一同に頷きフィーネへ顔を向ける。
「フィーネ、そういう趣味があったんすね……。」
「ああ……だからアタシが触手って分かった時にやけに念入りに軟膏塗って来たわけか……悪ぃが先端から汁は出ねぇぞ?」
「何でしたら、この後一人で外出してきても構いませんのよ? ええ、ククルゥは私が預かりますので。」
ここ数週間はずっと自分達と一緒だったから、さぞかしフラストレーションが溜まっている事だろう。そうした欲求を解消しに行く友人を引き留めるつもりは無い、親しき中にも何とやらと言うか、そっかーフィーネはそっち系かー、薄い本が地味に人気でそうすねー。
「いやいやいやいや!! これ美味しいんですよ、二人も飲んで見てくださいって!」
半ば押し切られる様に注がれた白濁色の液体を含み、一息に喉へ通す。
「あら、甘いんですのね。」
パーシヴァルの言う通り、柔らかな甘みがある、そして飲み込んだ後、鼻に抜ける香りで自分はピンときた。
「これ、アルコール入った甘酒?」
酒粕を使った甘酒では無く、麹から作った甘酒にアルコールが入った様な感覚で、確かに飲みやすい。
「ギラファさんが好きそうな感じっすね、果実感は無いっすけど、甘みと酒精のバランスが丁度いい感じで。」
そう言いながら、横に座る彼に自分の盃を差し出せば、彼は口元を寄せてブラシ状の舌で舐める様に啜り飲む。
「ほう、これは中々……」
あ――最高! 舌の動きがすぐそばで見える事もだが、自分の手から彼がお酒を飲んでいると言う事実がもう感無量だ、いっそ肌にお酒を垂らして舐めとるプレイなんかもありじゃないっすかねぇ。ギラファさんのブラシ状の舌が全身隈なく舐り取るとかあ―――!!
ヤバイ鼻血でそう。
と言うか冷静に考えて無しっすよ!!
酒に酔うと言う感覚は薄いが、多少は気分が高揚する訳で。城塞都市の時と違って大分気を抜ける温泉旅館でお泊りだ、ついついそうした思考が浮かんでしまう。
でもいつかはそういう関係になれればいいなと言うか、ええ、はい、功刀・蜜希、頑張ります!
あ、それはそれとしてギラファさんお代わりどうっすか?




