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虫系異族のギラファさん  作者: 神在月
第一章 邂逅
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間話 再会

過ぎた人への気遣いは

時に真逆の結果を残す

されど思いは届かんと

(要約:余計なお世話)




 挿絵(By みてみん)


 流石に驚天動地の連続で疲弊しているのだろう、机に突っ伏した後に寝息を立て始めた蜜希を寝室まで運び、戻ってきたギラファは、アージェと向かい合う様に腰を下ろす。


 挿絵(By みてみん)

「ありがとうギラファちゃん、彼女、よく眠っていた?」


 挿絵(By みてみん)

「ああ、大したモノだ、突然こんな世界に迷い込んだというのに、初日からアレだけ馴染んでいけるとはな。」


 席を離れていた間に用意されていたのだろう、木製のジョッキに入った蜂蜜種を啜り、一息をつく。


 挿絵(By みてみん)

「そうねぇ、文化の関係か、異境の民の中でも日本人の若者は此方の事を受け入れやすい傾向にあるけど、だとしても蜜希ちゃんの適応具合は異常の一言ね。」


 彼女を思い出すわね。と繋げられた言葉に、ジョッキを傾けるギラファの手が止まった。


 挿絵(By みてみん)

「……何故、蜜希にあそこまで自分の情報を明かした?」


 魔力ネットワークの設立者に、次元干渉者であること。どちらも下手に世間に知られればそれこそ戦争が起こりかねない機密事項だ。

 その危険性をしらない当人ではないし、そもそもそうした人同士の戦争を起こさないために方々に裏から手を廻しているのがこのアージェという女なのだ。


 挿絵(By みてみん)

「――蜜希ちゃんはこの世界に残ると決断したわ、私達が帰れないことを告げるよりも先に、自分の意思で。」


 挿絵(By みてみん)

「わかってるでしょうギラファちゃん、私の力なら、強制的に加護を引きはがしてあの子を送り返すことも出来た、実際、帰りたいと答えていたらそうしていたし、私がその事を言わなかったのは、あの子がこの世界に残っていい理由を補強するため。」


 挿絵(By みてみん)

「話をすり替えるな、アージェ。 私が聞いているのは、私を含め数人しか知らないお前の情報を、何故出会ったばかりの蜜希に教えたのか、だ。」


 告げる言葉には、ギラファ自身にも分からない苛立ちの様な物が滲んでいた。だが、それを向けられてなお、アージェは落ち着いた笑みで言葉を返す。


 挿絵(By みてみん)

「それこそ分かり切ってるじゃない、蜜希ちゃんが、彼女に連なる系譜だからよ。」


 ギリィッ、と、ギラファの握るジョッキの取っ手が軋むほどに強く握りしめられる。


挿絵(By みてみん)

「蜜希に、あの人と同じ重荷を背負わせるつもりか? この世界を知りたいと無垢に願う蜜希に!」


 ジョッキをテーブルに叩きつける音が店内に響く。 


 次に訪れるのは、何処か気まずい沈黙の時間。しかし、それを破ったのは、此処に居るどちらでも無かった。


 挿絵(By みてみん)

「おやおや、随分とあの子の事を気に入ってくれたみたいさねえ、ギラファ。」


 不意に後ろから聞こえた声に、反射的に振り向くと同時、立てかけて居た大剣を掴んで声の主へと突きつけ――


 挿絵(By みてみん)

「こら、いきなり女性に刃を突きつけるもんじゃないよ、この阿呆。」


 られない。突きつけようとした右手、その上に軽く当てられただけの煙管によって、大剣を掴んだ姿勢のまま押さえつけられている。


 挿絵(By みてみん)

「なっ!?」


 その事に驚愕しつつ見据えた視線の先、そこにいたのは、日本の和服に身を包み、髪を結いあげた一人の老女だった。


 挿絵(By みてみん)

「ったく、心配してくれんのは有難いけどね、アタシも蜜希も、アンタが思ってるほど柔じゃないさね。」

 

 まるで古い友人の様な物言い、しかし、ギラファの記憶にこの老女の姿は無い。

 だが、何か強烈な既視感と、その口調がとある推測に思い至らせる。


 挿絵(By みてみん)

「君は……いや、まさか……!?」


 挿絵(By みてみん)

「ん? ああ、そういやこの姿を見せるのは初めてさね、前に来た時はアンタ居なかったし。」


 老女が、手にした煙管を放り投げ、指を鳴らす。落ちてきた煙管を受け止めるその手指は、先程までの老人のそれではない、瑞々しさに満ちた若い女性のそれへと変わっていた。


 挿絵(By みてみん)

「ほいっと、さて、まさか共に世界を救った相棒の顔を忘れたなんて言わないだろうさねぇ? ギラファ。」


 そこにいたのは、先程までの老女の面影を残した、若い一人の女性、そして、ギラファはこの女性をとてもよく知っている。


 挿絵(By みてみん)

秋楡(あきにれ)(のぞみ)……いや、希さん!?」


 挿絵(By みてみん)

「ああ、久しぶりさね、ギラファ。大体五百年ぶり位になるんさねぇ? そこのアージェから孫がこっちに来てるって連絡あったもんだから、慌てて世界またいでやって来たって訳さね。」


 呵々、と女性が喉を鳴らす。


 挿絵(By みてみん)

「どうだいギラファ、うちの孫は? アタシと違って可愛らしいだろう?」


 不敵な笑みを浮かべ、女性はギラファとアージェを見据えるように席に着く。



 そう、この世界に住む次元干渉者はアージェ唯一人。だが、地球側に同様の存在が居ないなどとは一言も言っていない。


 挿絵(By みてみん)

「さて、感動の再会に涙を流して咽び泣きたいところだけど、その前に、あの子の話を聞かせて貰えるさね?」


 もう一人の次元干渉者、秋楡・希。

 かつてギラファ、アージェと共に世界を救った、まごうことなき英雄である。



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