表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虫系異族のギラファさん  作者: 神在月
第二章 円卓
46/260

第四十二話 それぞれのひととき

自分よりも他人を優先することは

一周回って自分の為だと言う事だ

(要約:不器用ですね)


   ●



 挿絵(By みてみん)

「……始まりましたね。」


 王城の一室、一際厳重な術式保護が掛けられた室内。窓際に座るフィーネへと、ベッドに腰かけたククルゥが声を掛ける。


 挿絵(By みてみん)

「いいのか、アンタは行かなくて? 心配しなくても逃げたりしねぇよ、ここの飯は美味ぇからな。」


 少女の気遣いに、しかし従者は首を横に振る。


 挿絵(By みてみん)

「いえ、大丈夫ですよ、ククルゥ様。ご心配ありがとう御座います。」


 挿絵(By みてみん)

「だめですね、頭では私が出向かない事が最善と分かってはいるのですが、どうしても、お役に立ちたいという気持ちは抜けきりません。」


 挿絵(By みてみん)

「あー、さっき話してた災厄の残滓が云々って奴か」


 挿絵(By みてみん)

「はい、私の左目に残る残滓は極僅かな物ではありますが、戦闘中に目の痛みで蹲るなど言語道断ですからね。」


 挿絵(By みてみん)

「つっても、浸食防止の封印はしてんだろ? そこまで慎重にならなくてもいいんじゃねえのか?」


 挿絵(By みてみん)

「それはその通りなのですが、やはり、怖いと言う気持ちもあるのです。かつての私は、護るべき人々を自らの手で傷付けてしまった。……私の意思では無かったとしても、それは私の罪であり、二度と繰り返してはいけない物なのです。」


 そうか、と頷いた少女は、ベッドを降りるとフィーネの膝へとまたがる様に向かい合わせで座り込む。


 挿絵(By みてみん)

「あの、ククルゥ様、どうされましたか?」


 困惑するフィーネの頭へと、少女の小さな掌が伸び、優しく髪を梳くように撫で始める。


 挿絵(By みてみん)

「いや、なんだ、アンタは頑張ってるよ。だから、もうちょい自分を許してもいいんじゃねえの?」


 挿絵(By みてみん)

「……ありがとうございます、ククルゥ様。」


 思わず、と言った仕草で抱き締められた少女の顔が朱に染まる。


 挿絵(By みてみん)

「お、おう、まあ、まだ自分じゃ難しいってんなら、蜜希やパーシヴァル達が許してくれんだろ。あの二人のお人好し具合尋常じゃねぇからな。」


 挿絵(By みてみん)

「ふふ、そうですね。ですがそれは、貴女も相当ですよ、ククルゥ様?」


 挿絵(By みてみん)

「勘弁してくれ。――絆されてる自覚はあるんだ、指摘されると顔から火が出るっての。」


 しばしの時間を置いて、フィーネが少女を抱き締めていた腕を解く。


 挿絵(By みてみん)

「ありがとうございました、大分心が楽になりました。」


 挿絵(By みてみん)

「そいつは良かった。んじゃま、術式陣で向こうの様子でも聞きながらお茶でも飲もうぜ、アタシは紅茶がいいな、砂糖とミルクマシマシでさ。」


 挿絵(By みてみん)

「蜜希やギラファじゃなくて悪いが、アタシの役に立ってくれないかい? フィーネさんよ。」


 少女のわざとらしい言い回しに、フィーネは笑みを強くする。


 挿絵(By みてみん)

「勿論ですとも、ククルゥ様。蜜希様達には悪いですが、おいしいケーキもご用意いたしましょう。」


 挿絵(By みてみん)

「いいねぇ、嵐の中で茶会としゃれこもうぜ。」





   ●



 同時刻、王城の中庭に、二人の人影が佇んでいた。


 咲き乱れる花を眺めつつ、泉の脇に座り込む影は、紫のドレスに身を包んだ美しい女性の姿。


 挿絵(By みてみん)

「アーサー王はどうしてるのかしら、マーリン?」


 挿絵(By みてみん)

「発射場で待機するってゴネてたのを、なんとかモードレッドと宥めて来たよ。今は二人ですぐ下の大広間に居て貰ってる。」


 女性を後ろから見守る様に立つのは、桃色の髪を二つに縛った少女の様な姿。


 挿絵(By みてみん)

「そう……そんなところで突っ立てないで、こちらに座ったらどうかしら?」


 挿絵(By みてみん)

「じゃあ、お言葉に甘えて。」


 促しに、マーリンは前に歩を進めて座り込む。


 しばしの沈黙、じっと無言で水面を見つめるモルガンが、ゆっくりと口を開く。


 挿絵(By みてみん)

「ここの花も、随分と綺麗になりましたね。あの子が世話をすると言った時は驚きましたが、家でも庭の花を良く手入れしていましたから、任せて見れば、本当に大したものです。」


 家で見せたのと同じ、昔の口調で話すモルガンに、自然とマーリンの肩からも力が抜ける。


 挿絵(By みてみん)

「そうだね、君の加護で咲く花の特性を、ずっと傍で見て学んでいたんだろう。モードレッドは優しい子だ、本当は円卓の騎士なんて似合わない程に、ね。」


 挿絵(By みてみん)

「あら、あの子に『叛逆の剣』を与えたのは貴方ではないですか、マーリン?」


 挿絵(By みてみん)

「うぇっ!? 僕が円卓の武具の管理者だって知ってたの? 誰にも話したこと無かったのに。」


 挿絵(By みてみん)

「何千年共に居たと思ってるのですか、言われなくても分かりますよ、そのくらい。」


 挿絵(By みてみん)

「そっかー、バレてたかー。でも、モードレッドに与えたってのは、半分不正解。適性があるのは知ってたけど、僕はずっと、あの子に武具が向かわないように抑えてたんだ。」


 マーリンの返答に、モルガンが眉を上げる。


 挿絵(By みてみん)

「何故ですか? モードレッドの襲名者はここ千年は不在だった程の珍しさです。素質があったなら、即座に武具と契約させるべきでしょう。」


 挿絵(By みてみん)

「あー、そうだね、僕の本来の仕事としては、そうだ。――でもさ、僕はあの子に、モードレッドになって欲しくは無かった。ただ、君の子供として、その一生を過ごしてほしかったんだよ、モルガン。」


 挿絵(By みてみん)

「それは――」


 挿絵(By みてみん)

「あの子と居る時の君は、本当に幸せそうだった。あの子がモードレッドになってしまったら、君はあの子を死なせなければならなくなる。だから、僕はあの子に剣を与えるつもりは無かったんだ、あの日まではね。」


 挿絵(By みてみん)

「そう、そういう事だったのですね……。あの日、凍結した計画書と共にあの子が『叛逆の剣』を持ってきた時は、一瞬貴方を恨んだ物でしたが……あれは、貴方なりの気遣いだったのですね。」


 挿絵(By みてみん)

「そんなものじゃないさ。というか、謝らないといけないのは事実なんだ、襲名者の選定の為に、素質のあるモノの事は常に監視していたからね。――あ、プライバシーにかかわる部分はキチンと半自動で遮断してるよ、これでも永いことやってるから。」


 挿絵(By みてみん)

「あの子の裸を見て居たら殺すところでしたよ、マーリン。」


 挿絵(By みてみん)

「親馬鹿過ぎない? あーまって、まっていま真面目タイムだから、うんうんありがとう。――それでさ。あの子が君の計画書を見つけた時に、悟っちゃったんだ。この子は止まらない、君が否定しても意地でもやり遂げようとするって。

 だから、君を説得できるだけの材料として『叛逆の剣』を送った、恨んでいいんだよモルガン、間接的に僕は君を追い込んだんだから。」


 挿絵(By みてみん)

「恨みませんよ、もとはと言えば私が立てた計画です。もっとも、実行したくは、ありませんでしたが。」


 再びの無言、永遠にも思える沈黙を破り、モルガンが立ち上がる。


 挿絵(By みてみん)

「――行きましょう、マーリン。今なら邪魔は入りません、計画を実行するには最善のタイミングでしょう。」


 挿絵(By みてみん)

「はいはい、わかってるよ。まあ間違いなくアグラヴェインは戻って来るだろうけど、彼だけなら何とかなるか。」


 軽く伸びをして、マーリンがモルガンに正面から向き合う。


 挿絵(By みてみん)

「マーリン、全てが終わったら、その時は、この泉と花園を、お願いしますね。」


 挿絵(By みてみん)

「自分でやりなよ、って言いたいところだけど、君は君を許せないもんなぁ……」


 挿絵(By みてみん)

「当然です、我が子を自ら犠牲にした母親など、のうのうと生き延びていいはずがありませんから。」


 挿絵(By みてみん)

「それ地球時代のモルガンを全否定してる気がするけど、真面目な君の場合はそうだよねえ……。」


 向き合い、距離を詰めたマーリンが、下から見上げる様に視線を動かす。


 挿絵(By みてみん)

「ねぇ、最後に少しだけ、君の時間を貰ってもいいかい? モルガン。」


 挿絵(By みてみん)

「? 構いませんが、一体なにを――」


 疑問の声を上げたモルガンの唇が、背伸びをしたマーリンの唇で塞がれる。


 思わず強引に振りほどき、顔を真紅に染めたモルガンが叫ぶ。


 挿絵(By みてみん)

「あ、貴方一体何を――」


 その叫びは、再度重ねられた唇に封じ込められた。


 挿絵(By みてみん)

「ずっとずっと、好きだったよ、モルガン。――――ごめんね、これが最後だから、どうしても、伝えておきたかった。」

 

 挿絵(By みてみん)

「それじゃあ、僕は先に行って準備をしておくよ。 じゃあね!」


 慌てる様にマーリンが魔術で消え去り、一人残されたモルガンは、そっと唇に指先で触れる。


 挿絵(By みてみん)

「――まったく、もっと早くに言いなさいよ、馬鹿。」


 彼を追う様に、水流に包まれたモルガンの姿が消えた。


 後に残るのは、変わらず咲き誇る花の園。


 水流に巻き込まれ散ったアヤメの花弁が水面に浮かび、ゆっくりと、沈んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ