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虫系異族のギラファさん  作者: 神在月
第二章 円卓
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第三十三話 行き倒れの幼女

目の前に倒れた人がいた時に

直ぐに動ける自分でありたい

それはそれとして知識は必要

(要約:まずは意識の確認を)






 挿絵(By みてみん)


 王の凱旋は、万雷の喝采の中で行われた。


 挿絵(By みてみん)

「――――」


 無言で城門からキャメロットへと入る王を、人々の称賛が包み込む。


 挿絵(By みてみん)

「アーサー王ーー!!」


 挿絵(By みてみん)

「王様ー、パーシヴァル卿が失恋したって本当ですかー!?」


 挿絵(By みてみん)

「陛下――! 毎回こうして貰えると俺達楽出来るんで次もお願いしまーーす!!」


 称賛? が包み込む。


 あ、なまけ宣言した騎士にアグラヴェイン卿がすごい顔して走ってった。あとなんかパー子の失恋質問した奴の尻に見覚えのある光槍が刺さってるっすけどこの人混みでどうやって尻に当てたんすかパー子。


 挿絵(By みてみん)

「いやあ、流石と言うかなんというか、すごい活気っすねぇ」


 挿絵(By みてみん)

「アーサー王は民からの信頼も厚いですし、時折こうして王自身の力を示すことは国民の支持を受ける為にも大切なことです。」


 なるほど、


 挿絵(By みてみん)

「つまり、ああしてアーサー王が戦闘に出るのは色々な思惑があるってことっすね?」


 挿絵(By みてみん)

「いや、アイツの場合は純粋にバトルジャンキーなだけだ。」


 うん、まあ予想出来ては居たというか、やっぱそうっすよねー。


 謁見の時の言動や、さっきの戦いぶりを見ていても、アーサー王が大分豪快な性格だと言う事は見て取れる。


 挿絵(By みてみん)

「――――ん?」


 挿絵(By みてみん)

「どうしましたの? 蜜希。」


 挿絵(By みてみん)

「いや、なんか一瞬空気に違和感があったというか……おや?」


 何といえばよいのだろうか、揺らいだというか、何かがズレた様な違和感を感じて辺りを見回す。


 自分達がいる所は城壁のすぐ内側、元々あまり人通りは多くない上に、今は人々の多くが城門の方へと集まっているので、自分達の他に人影は見えない。


 そのはずだった。


 挿絵(By みてみん)

「――――」


 少し離れた所、民家の隙間に挟まる様に倒れこんでいる少女の姿があった。


 挿絵(By みてみん)

「――――!!」


 挿絵(By みてみん)

「まて蜜希!」


 ギラファの制止も聞かずに走り出す。駆け寄り、抱き起そうと手を伸ばし、


 挿絵(By みてみん)

「お待ちください、蜜希様。」


 伸ばした手が、横合いから伸びたフィーネに掴み止められた。


 挿絵(By みてみん)

「なにを――」


 人が倒れているのに、なぜ止めるのか、


 思わず抗議の叫びを上げようとした自分に、ゆっくりとした動きでフィーネが首を振る。


 挿絵(By みてみん)

「人が倒れていたときは、不用意に抱き起してはいけません。首や頭部に異常があった場合、動かしたことで悪化する場合もありますので。」


 挿絵(By みてみん)

「あ……そうっすね、すいません、ちょっとテンパってたっす。」


 挿絵(By みてみん)

「? 別に頭はチリチリしてませんわよ?」


 天パじゃねーっすよバカパー子。


 自分を止めたフィーネが、少女の顔に触れ、何やら術式礼装を広げて翳している。


 挿絵(By みてみん)

「フィーネ、それは?」


 挿絵(By みてみん)

「救急用の検査礼装です。軽く調べてみましたが、脳や首の神経や骨に異常は無いようですね。呼吸も安定していますし、寝ている様な物だと思います。」


 告げられた言葉に安堵の息を吐く。しかし、先程までは此処には誰も居なかったように思うのだが……。何より、水色の長髪にゴスロリ姿のこれだけ目立つ姿に気付かなかったとは思えない。


 挿絵(By みてみん)

「……ん」


 少女の瞼が僅かに動く。口からくぐもった様な声を出しながら、その双眸がゆっくりと開かれた。


 挿絵(By みてみん)

「気が付いたっすか?」


 挿絵(By みてみん)

「…………?」


 挿絵(By みてみん)

 ……わ、綺麗な目っすねぇ


 顔を上げ、こちらを見つめる瞳は、まるでルビーの様な深い真紅の光を宿していた。


 挿絵(By みてみん)

「ここは……?」


 挿絵(By みてみん)

「ここはキャメロット、アーサー王が治める城砦都市です。」

 

 フィーネの言葉に、そう、と答えた少女が安堵の表情を浮かべたのが分かった。


 挿絵(By みてみん)

「……なんとか、なった……か……」


 まるで崩れる様に体から力が抜け、少女がフィーネの腕の中に倒れ込む。


 その口元からは寝息が聞こえてくる、どうやら再び眠りについたようだ。


 挿絵(By みてみん)

「この少女、相当訳ありですね……。パーシヴァル卿、王城の一室に術式的なプロテクトをかけて隔離することは可能ですか?」


 挿絵(By みてみん)

「可能ですけれど、そこまでする必要ありますの? そのような少女に」


 パーシヴァルの意見には自分も同意だ。


 挿絵(By みてみん)

「そうっすよ、そんな小さな子をわざわざ隔離するなんて……」


 続けようとした言葉を、ギラファに軽く肩を掴まれて止められる。


 挿絵(By みてみん)

「待て二人とも、フィーネの話を聞いてから判断しても遅くはあるまい?」


 諭す様な口調で言われてしまっては、こちらとしては言葉に詰まる他ない。すると、ギラファが軽く促す様にフィーネを見た。


 挿絵(By みてみん)

「私の思い過ごしであれば良いのですが、恐らく、この少女は何かから逃げて来たと判断できます。何故ここに突然現れたのかは分かりませんが、念のため外部へ漏れる情報は少ない方がこの子にとっても安全です。勿論、監視と看病を兼ねて私が四六時中付き添いますので。」


 挿絵(By みてみん)

「なるほど、理には適っておりますわね。――ですが、追われているのだとしたら、その様な存在を王城に招き入れるのは円卓の騎士として止めねばなりませんわよ?」


 挿絵(By みてみん)

「パー子……」

 

思わずドスの利いた声を出してしまった自分に対し、口を横に開いたパーシヴァルが答える。


 挿絵(By みてみん)

「そんなに侮蔑を籠めて呟かないでくださいませんこと?」


 挿絵(By みてみん)

「いいですの? 追われているというのはフィーネの憶測ですし、フィーネの部屋を隔離用に使えるように既に手を廻していますわ。――ただ、一応立場的に忠告はしておきませんと、示しがつきませんでしょう?」


 なるほど、確かにそれはそうだろうし、パーシヴァル自身としては異論は無いというところか。


 挿絵(By みてみん)

「面倒っすね、円卓の騎士っていうのも。」


 挿絵(By みてみん)

「上に立つと言う事は、その分果たすべき責任があると言う事ですもの。」


 重い息を吐き出し、パーシヴァルが自分達に告げる。


 挿絵(By みてみん)

「少々予想外の事態となりましたが、いったん引き上げて王城に戻りますわよ、いいですわね?」


 拒否するものなどいるはずがない。フィーネが少女を抱きかかえ、自分たちは王城への道を歩きだすのだった。

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