間話 一方その頃
駄目だと頭でわかっていても
やはり見たいし聞きたい訳で
特に気にせずするさね覗き見
(要約:やりたい放題)
一方その頃、フィーネとククルゥの宿泊部屋。その扉が外側から軽くノックされた。
ククルゥと二人、軽くシャワーを浴びて汗を流していたフィーネは、突然の来訪者に浴衣を羽織ってドアを開ける。
「あら、パーシヴァル卿。どうされましたか?」
視線の先、そこには着替えなおしたのか、先程とは違う柄の浴衣を着たパーシヴァルの姿が。
「ええ、少々目が冴えてしまいまして、ちょっと寝るまでお話しませんこと? ――ああそれから、今は敬語は抜きですわよ?」
「ふふ、わかりましたパーシヴァル、どうぞ中へ。」
パーシヴァルと共に部屋へ入り、備え付けのポットと急須でお茶を入れる。ふと見ればククルゥが髪を乾かさずに浴衣を着なおして居たので、茶葉を蒸らしている間にそちらを手伝う事にした。
「ん―――。」
ドライヤーを使うと少し嫌がる様に首を振るので、タオルと乾燥用の術式陣を用いて丁寧に水気を切る。この後は軽くお茶を飲んで寝るだけなので、邪魔にならないように髪を結うのも忘れない。
「……本当、そうしているとお母さんか何かですわねぇ。」
「んー、一応誉め言葉として受け取って置きましょう。」
諦めの混じった笑みをこぼす自分の前で、やや眠たげにあくびをしつつククルゥが言葉を作る。
「ふあ……ふ。と言うか、あれだけ飲んでパーシヴァルが潰れてないの、何気に初めてじゃねぇか?」
ククルゥの問いかけに、パーシヴァルの視線がこちらへ動いた。
「ええ、実はその件もここに来た理由の一つですわ。――ねぇフィーネ?」
「はい、なんですかパーシヴァル?」
「貴女が頼んだあの白濁り酒ですけど、あれただのお酒じゃありませんわね?」
その言葉に、自分は笑みが口から零れそうになるのを隠して答える。
「おや、何故そう思いました?」
「簡単な話ですわ。私、これでも襲名者で半神ですので、本職には劣りますが色々術式や加護類の判別には秀でてますの。私が頼んだお酒は特に変わり映えのしない普通の酒精でしたが、あれだけは飲んだ時に微かに加護や術式の影響を感じましたもの。――流石に蜜希は分からなかったでしょうけど、教官辺りは感づいてたと思いますわよ。」
なるほど、確かに襲名者ともなれば、予期せぬ呪いや悪性術式への対処として術式探知は必須技能だ。普段の態度から判断してその辺り大分おろそかにしているかと思って居たが、食事などへの注意は最低限払っていると言う事だろう。――飲んだ時に分かったのでは遅いのだが。
「正解です。あのお酒は泥酔防止と言いますか、酒精の分解を早める加護が込められています。」
「何故、アレを飲ませましたの? フィーネ、貴女私たちに飲ませる為にわざと大袈裟に反論しましたわよね?」
パーシヴァルは首を傾げるが、そんな理由など言わなくても分かりそうな物である。
「簡単ですよ、パーシヴァル。――貴女だけこの楽しい思い出を忘れてしまっては、勿体ないでしょう?」
「……ふふ、そうですわね。確かに、楽しかったですの。」
「ああ、確かに全裸でポールダンスして楽しそうだったよなパーシヴァル。」
「そ、そこに関しては忘れ去りたいですわ!! 今までは覚えてませんでしたけど、私毎回あんなことしてましたの!?」
「私の知る限り、毎回定番ネタのごとくやってましたよ?」
「アレなのか? パーシヴァルのPはポールダンスのPなのかよ?」
「あああああ否定したいですけど状況証拠―――――!!」
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一息
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「ふぅ……お茶が美味しいですわね。」
「備え付けの緑茶ですが、ちょっと検索しましたが最高級葉ですねコレ。普通に買うと数万行きますよ?」
「今更だけど城塞都市の時から豪遊生活だよな……地味に舌肥えそうで怖えんだが。」
「大丈夫ですわよ、高級な物には高級な物の、安価な物には安価な物の良さがありますわ。私も屋台での食べ歩きなどよく致しますもの。」
そういうもんか、とククルゥが頷き、皆で示し合わせた様にお茶を飲む。ほっと一息と共に自分はふと頭に浮かんだ言葉を紡ぎ、
「そういえば、蜜希とギラファ様はうまくいったのでしょうかね?」
「そうですわね……蜜希は積極的に見えて変なところで一歩様子見しますから。」
「あれだけあからさまに御膳立てしてやったんだ、幾らオッサンだって腹括るんじゃねぇか?」
「うーん、ああ見えて結構ギラファ様、蜜希様の祖母である希様に気を使ってますからねぇ……」
「あーー……」
そう言って三人同時にため息を付いた瞬間、不意に自分の顔横に術式陣が表示された。
見れば、そこに映るのはたった今話題に上がった希の姿であり、何やら手に大吟醸の一升瓶を持ちながらこちらへ口を開き、
『おいおいおいおいフィーネ! 蜜希とギラファがやったさね!?』
いきなり話しかけてきたと思ったら疑問形とかどうしろと言うのだろうか?
「いやいやいや!? いきなり何ですか希様! というかやったって何をです?」
『ああ? 決まってんじゃないさね、ナニをだよ!』
反射的に術式陣を叩き壊した。
「…………なぁ、フィーネ。」
「はいククルゥ? よい子はもう寝る時間ですからね? 私ももう寝ますから、お布団の方行きましょうねー?」
そう言ってククルゥを立たせて寝室へ歩き出そうとしたところ、再度顔横に術式陣が浮かび、
「おいフィーネ! 何通信きってるんさね! 折角なんだからこれからそっち言って皆で実況しようじゃないさね!?」
「お孫さんのプライバシー守りなさいよこの馬鹿―――!!」
最終的にアージェに連絡して強制的に止めさせる事になったが、あの二人に悟られる事が無かったのだけがせめてもの救いだろうか?




