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10.都会のセミと早朝の成虫

 いや、期待も何もないだろう……。

 早朝六時前に、スウェットにサンダル姿で、コンビニ袋をぶら下げて、こんなところを歩いているオレに、いったい、どれだけの価値があるのだろうか?

 引きこもり、所謂ニートになって七年、オレは何を積み上げてきたのだろうか?

 気分も重いが、足取も重い。

 小高い丘の中腹を切り開いて造成された住宅地には、坂道と擁壁が多い。

 たった、これだけの坂道で息が切れるなんて、つくづく自分が情けない。

 乳酸が貯まる足を休めるついでに、ふっと擁壁に手をついた。

 すると、項垂れる眼下に、セミの幼虫が、今まさに羽化を始めるところだった。

 小さな背中をパックリと割り、窮屈な殻から手足を伸ばし、透明な羽をみるみると広げてゆく……。

 ああ、美しい! そして、気持ち悪い……。

 そっか、何かに成るってコレなのか。

 オレは、羽化するセミに自分を重ねて「この世界は我々のものである」と、声に出してみた。

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