W 第一部 第一話 8
九階、応接室
ここもガラス張りなのはどうかと思うが、
普段、社長がここで面会をするということもあってかなり広い
さっきの事務室の4倍は広いんじゃないかしら
そんな部屋にソファが二つとテーブルが一つのみ
「どうも私が社長秘書の魚和です」
眼鏡、長髪のインテリ風の男ね
海原とは違うタイプね
「こちらはこういうものです」
分かっているんだろうけど、一応手帳を見せる
あいさつは簡単に済ませてお互いソファに座る
「今回は海原さんの件でお話を伺いに来ました」
こういうタイプはすこし堅苦しい感じで聞いた方がいいわね
変にこじれて話が聞きにくくなったらめんどくさいことこの上ない
「はい、何卒社長をよろしくお願いします」
「まかせてください」
「では、まずあなたが最後に社長に会ったのはいつごろでしたか」
「午後1時になるまえぐらいですかね、私が食堂へ昼食を食べに行くまえでした」
「社長さんは食堂に昼食をとらなかったんですか」
「一緒に食べませんかと誘ったのですが、今日は外で食べるということでしたので」
もし、それが本当なら貝殻さんの証言とも合うわね
「ちなみに、社長さんを恨んでいる人は」
「とんでもない、社長は恨みを買うような人では」
「そうですか」
眼鏡の位置を直しながら、ばつがわるそうに言った
「まあ、本人は隠せていると思っているようですが、女性関係については少しだらしなかったです」
やっぱり、そういう感じよね
「そういえば、地下に停めてある社長さんの車の中に着替えのスーツやシャツを大量に載せていましたけど、それも女性関係で」
「とんでもない、それは社長が忙しくて、着替えをとりに帰る暇もないので載せているんですよ」
強く否定する、あまりにも女にだらしない社長と思ってほしくないらしい
さっき自分で、女癖がわるいって言ったくせに
「最後に社長さんを見た時何か変な様子ではありませんでしたか」
「いや、少し急いでいた様子でした」
「何か思い当たる節は」
「あのあと、また人と会う約束をしていたので、余裕をもてるように急いでいたのかも」
だったら食堂で済ませればいいのに
「ちなみに、どなたと会う予定だったのですか」
「それは、相手のいることですので、私の口からは」
「いいですよ、言っても」
「!」
「品川さん!」
いつのまにか、ドアの前に男性が立っていた
黒のスーツに黒の皮手袋、黒髪短髪、眼鏡と完璧なインテリ男子だ
「どうもはじめまして、私はエレクトロツールより参りました品川公といいます」
エレクトロツールといえば、スカイプログラムやグランドネットよりもはるかに大きい
海外の大手IT企業じゃない
もしかして開発しているって噂のコンピューターウィルスと何か関係が
「私はこういうものです」
また手帳をみせる
「どうして品川さんがここに」
びっくりして立ち上がっている魚和を無視して
「海原さんが失踪したのはご存知ですか」
「もちろん、本来ならこの会社とわが社共同での大きなプロジェクトについて話し合いの予定だったのですが、いなくなってしまって」
「そのプロジェクトは」
「それはさすがに」
でしょうね
「ですが今回わが社で正式に例の件が決まりました」
「本当ですか」
「えぇ」
「あ、ありがとうございます」
すると魚和は私たちの方へ向き直り
「すいませんが、この後品川さんとお話しなけばならないといけませんので、すいませんが今回はこれでおひきとりに」
これ以上ここにいても仕方ないか
「わかりました、お時間いただきありがとうございます」
形だけのお礼を言って部屋を後にした
「んー」
「さいさい、どうしたの」
「いやぁなんかあの品川って人あったことがあるような、優はないあったこと」
「ないと思うけど」
「そうねぇ・・・・」
ヴィーン、ヴィーン
春樹たちから着信がきた