七十一話 毒婦メルニーチェ〜運頼りの運がなくなったらどうなる?てか運値(う○ち)て(笑)
短いです。性を匂わす言葉が一つあります。
メルニーチェが馬鹿で頭パッパラパーな上から女で、勇者一団を潰しにかかる。そんな運頼りが運が良くなかったらどうなる?って言うのが分かれば読み飛ばしてくれてOKです!
大丈夫な方だけどうぞ!
その日、獣人の国アクア・アルタの城は興奮に湧いていた。
それはいつもは静かな後宮にいる側妃メルニーチェの耳にまで届いた。
どうやら勇者一団が城に入ったらしい。
そして彼らを守る《偉大なる存在シュフ》は想像していたより何百倍も強いらしく、すでに彼らに模擬戦を挑もうとした獣人の猛者が彼の存在に何百人単位で失禁失神させられているようだ。
勇者一団の責任者であるガルド王国王女アンネリーネが発した忠告により、勇者一団との模擬戦は禁止か決定され、メルニーチェの計画の一つが早々に潰えた。
王太子レドモンドを引き摺り下ろしたいメルニーチェは、諦め悪く宴の席で王レオンにおねだりしてみるつもりである。
たかが、普人の王女とその他が何様のつもりで私の計画の邪魔をしようと言うのかしら。
メルニーチェは子供の頃から望みのままに生きてきた。
大人になってからは王レオンの寵姫として後宮のほぼトップに君臨して好き放題やっている。
今のところ叶えられてないものといえば、正妃の座くらいのもの。
だからこそメルニーチェは正妃の座に固執する。
正妃がこの国の女のトップであると思えばこそ、その願いは強くなった。
ただメルニーチェは正妃の仕事のことなど全く知らない。考えもしないのだ。
メルニーチェに正妃の仕事など絶対に無理だというのに。
彼女に王の執務の手伝いができるか、否。
彼女に他国からの客人の接待ができるか、否。
自分の欲が満たされれば、それでいいメルニーチェに正妃の仕事などできようはずもない。
だからいくら寵愛していても、王レオンはメルニーチェを寵姫にはしても、正妃にすることなど考えもしないのだ。
当たり前である。
勝手気まま、好き放題生きてきたメルニーチェに正妃マルタほどの執務を代行できる教養があるはずもない。
相手を敬う気持ちのないメルニーチェに、貴賓をもてなすという意味が分かるわけがない。
メルニーチェに出来ることと言えば、執務に疲れた王をその美貌と体で癒すことのみ。
そんなことも分からないメルニーチェは自分の優位性を全く疑わず、勇者一団を全くの格下扱いしていた。
しかし、考えればわかるはずなのだ。
寵愛がいくら熱くともメルニーチェは、たかが獣人の王の後宮にいる妃のひとりに過ぎない。
対して、勇者一団は3カ国の救国の英雄であり、その中でも異世界人の3人は大陸会議で《勇者》《大賢者》《聖女》の地位を認められ、貴族だけでなく王族皇族からの要求さえ拒めるときっちり契約書と魔法で保証された、実力、実績ともに規格外の存在である。
しかもその後ろには片手間どころか、面倒だからというだけで適当に近づく脳筋(模擬戦希望)を失禁失神させる某存在までいる。
普通なら敵対=死と考えてもおかしくはない。
しかし、メルニーチェは生まれ持った運のステータス値の高さ故に完全なる負けを知らなかった。
ある意味、正妃になれないことも完全なる負けになるはずなのだが彼女はそれに気づかない。
何故なら彼女は自分に都合のいい世界で生きているからだ。
自分が正妃になれないのも、息子が王太子になれないのも、今だけで直ぐにその座が手に入ると思っている。
だからメルニーチェは夢想するのだ。現実を見ずに。
宴の席で、まずは自分の計画を頓挫させようとした普人の王女に身の程を弁えさせ、王レオンにねだり《勇者》とレドモンドの模擬戦を実現させよう、と。
宴で勇者一団の女に王レオンが興味を持つなら、後で殺せば良い。
模擬戦では《勇者》などと大それた地位を分不相応に持った異世界人を殺し、その罪をレドモンドに被せ王太子の座から引き摺り下ろし、そこに自分の息子グスタフを据える。
そしたらきっと王レオンも自分の間違いに気づき、正妃に最も相応しいメルニーチェにその座をくれるだろう。
そして今まで厚かましくも正妃の座にいたマルタを罵倒し処刑してくれる。それも最も残酷な方法がいい。
今まで思い通りに生きてきたメルニーチェは、美しい顔を欲深かな笑顔で染める。
しかし、すでにメルニーチェは今まで好き放題生きてきた頃とは違ってしまっている。
とある存在が、こいつに高い運持たせてたらロクなことないわ!とこっそり平均より少し下くらいに運の値を下げられていたのだ。
運良く、黒幕だと知られなかったあの事件やこの事件も。
運良く、目をかけられていた寵姫という座も。
運良く、バレていなかったお友達(意訳)との関係も。
運が平均値くらいになった今、果たして今まで通りに行くのだろうか?